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大学・研究所にある論文を検索できる 「台風シミュレーションに基づく免震層の残留変形評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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台風シミュレーションに基づく免震層の残留変形評価

銭暁鑫 佐藤大樹 Xiaoxin Qian Daiki Sato 東京工業大学

2020.03

概要

近年,人々の建物の安全性・居住性に対する意識が高まるとともに,集合住宅や事務所ビルに免震構造が積極的に採用され、特に高さ60m以上の超高層建物への適用が拡大している。しかし、建物の高層化に伴い、地震力に対して相対的に風外力が大きくなる。その上,地震力と比べて,風外力は長時間繰り返し作用するという特徴があるため,塑性化しやすい免震ダンパーに及ぼす影響を考えなければならない。大きな風外力が長時間作用することを考えると,建物の最大応答値が許容値を超えていないことを確認するだけではなく,免震ダンパーの塑性変形量の累積、すなわち免震層の残留変形に与える影響についての評価も必要である。

現行の耐風設計は建物全体が弾性範囲に留めているので,基本的には10分間の風力に対して最大応答値の評価を行っている2。しかし,上述したように免震建物の高層化により、設計時想定する風速レベルにおいては免震ダンパーの塑性化設計が必要となっている。免震ダンパーの塑性化を許容した場合,免震層の残留変形の評価も必要となってくる。さらに,台風の観測においては、風速・風向が時々刻々と変化するため,これまでの風速・風向が一定の10分間の風力を用いた評価では不十分であることが考えられる。そのため、風速・風向変化を考慮した台風シミュレーションに基づく評価が必要となる。

既往研究では,村上ら3が、強風時の観測記録に基づく超高層免震建物の頂部風速と免震層平均変位の関係から,強風イベント終了時に免震層に残留変形が発生していることを確認した。小川らみが、多質点系モデルによる超高層免震建物の免震層残留変形についての評価を行った。ただし、検討用風力は10分間の風直交方向風力のみとし,風速・風向変化を考慮した免震層残留変形についての検討はまだ行われていない。馬橋らSが,3次元フレーム解析モデルを用いた一方向入力,三方向同時入力ともに,強風イベント終了時には残留変形を確認した。ただし,検討用台風サンプルは1例に過ぎないため,ほかの台風サンプルの場合は異なる残留変形となる可能性もある。そこで,本報では既往研究を踏まえて,様々な台風サンプルを採用し,風速・風向変化が超高層免震建物の最大応答値だけではなく免震層残留変形に与える影響について検討し、設計実務に有益な情報を提供することを目的とする。

本論文の構成を以下に示す。2章では、多質点系モデルおよびその構造諸元について述べる。3章では,時刻歴風応答解析に用いられる風速・風向および作成した風外力の時刻歴について説明する。4章では,風速・風向変化が最大応答値に与える影響についての検討を行う。5章では、残留変形を評価した上で,弾性剛性を用いた残留変形の推定値と比較し、その整合性を示す。6章では,本論文のまとめと今後の課題を提示する。

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参考文献

1) 日本免震構造協会運営委員会:2015年度免震制振建物データ集積結果,MENSHIN, No.85, pp.37-42, 2014.8

2) 日本免震構造協会:免震建築物の耐風設計指針,pp.115-117, 2012.9

3) 村上智一,佐藤大樹,田村哲郎,普後良之,吉江慶祐,签井和彦,佐藤利昭,北村春幸.強風時の観測記録に基づく超高層免震建物の実挙動の分析,第62回構造工学シンポジウム,構造工学論文集,日本建築学会,Vol.62B, pp. 329-337, Mar. 2016

4) 小川諒,吉江慶祐,佐藤大樹,早田友彦,佐藤利昭,北村春幸.多質点采モデルによる超高層免震建物の風応答評価 - 免震層残留変形評価の試案 一,日本建築学会関東支部研究報告集,一般社団法人日本建築学会, Mar. 2014

5) 馬橋聖生,佐藤大樹、3 次元フレーム解析モデルを用いた超高層免震建物の時刻歴風応答解析 一方向入力と三方向連成入力による免震層応答の比較,第65回構造工学シンポジウム,構造工学論文集,日本建築学会,Vol. 65B, pp. 1-8, Mar. 2019

6) 片桐純治,大熊武司,安井八紀,丸川比佐夫,鶴見俊雄,高層免震建築物の風応答解析のための縮約モデルに関する検討,日本建築学会技術報告集,日本建築学会, Vol. 17, No.36, pp. 461-466, Jun. 2011.

7) 佐藤大樹,笠井和彦,田村哲郎:粘弾性ダンパーの振幅依存性が風応答に与える影響,日本建築学会構造系論文集,第635 号, pp.75-82,2009.1

8) 団栗直希,西嶋一欽:確率台風モデルに基づくハザード適合最だ台風の決定方法,平成29年度京都大学防災研究所研究講演発表会,B19,2018.3

9) 建築物荷重指針・同解説 2004,日本建築学会,pp.321-434

10) 丸川比佐夫,大熊武司,北村春幸,吉江慶祐,鶴見俊雄,佐藤大樹:風洞実験に基づく 高層建物の多層層風力によるエネルギー入力性状(その2 短形高層建築物に作用する層風力特性),日本建築学会学術講演梗概#, B-1, pp. 193-194, 2010.7

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