The survey of oral health conditions for school children and the practice of oral health education programs for schoolteachers in a Cambodian primary school

概要

1 背景
カンボジア王国（以下カンボジア）では，過去の内戦の影響から現在でも歯科医療サービスは供給足である。歯科保健教育がほとんど実施されておらず，人々の口腔衛生に対する意識も低いことから，特に小児において高い齲蝕罹患率を示している。本研究は，カンボジアのある公立小学校においての教員への歯科保健教育プログラムの実践と，児童の経年的な口腔内状況の調査・分析を目的とした。

2 方法
カンボジアのシェムリアップ市中心部に位置する公立小学校を対象校とし，2011 年～2015 年に訪問した。うち，2011 年～2014 年に小学校教員への歯科保健教育に関する研修会を実施し，2013年時には参加した教員に対し質問紙調査を実施した。2011 年～2015 年に児童のべ 2,637 の口腔内診査を実施した。齲蝕の状態として齲蝕有病者率・DFT・DF 歯率について，口腔衛生状態として歯垢の付着状態・歯肉の状態・歯石沈着の有無について集計・分析した。

3 結果
3.1 教員研修会
2011 年～2013 年は全教員約 90 が，2014 年は低学年担当の教員約 45 名が参加した。2013年時の研修内容の理解度調査では平均点が 4 点満点中 2.26 から 3.42 に上し，研修後の意識調査では児童への歯科保健教育の実践について 95.5％の教員から前向きな回答が得られた。

3.2 口腔内診査
口腔内診査では，齲蝕有病者率は各調査年とも 90％を超え，非常に高い割合を示した。DFT・ DF 歯率は 2011 年から 2015 年にかけて，有意に低い値を示した。口腔衛生状態に関しては，歯垢の付着状態・歯肉の状態・歯石沈着の有無ともに，2013 年から 2015 年にかけて有意に低い値を示した。

4 考察
カンボジアのある公立小学校において，小学校教員への歯科保健教育に関する研修会を 4 年間実施し，児童の口腔内診査を 5 年間実施した。我々の働きかけによりカンボジア児童の口腔内は改善傾向を認めたが，歯科保健教育との疫学的な因果関係は見出せていない。今後も教員や児童への介入やその結果についての分析を継続し，国民全体のオーラルヘルスプロモーションの推進を目している。