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大学・研究所にある論文を検索できる 「ユマニチュード®ケア技法を用いた看護介入の効果に関する文献レビュー」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ユマニチュード®ケア技法を用いた看護介入の効果に関する文献レビュー

桒子 嘉美 張 平平 伊藤 裕佳 竹内 登美子 富山大学

2022.03

概要

世界的に高齢化が進み,高齢者を対象とする看護ケアのニーズがますます高まっていく中,看護ケアの質向上もよりいっそう求められるようになっている.日本看護協会の認知症ケアガイドブックには,高齢者のケアでは,その人の価値信念を尊重し,健康への機能回復のみならず,現在の生活の充実を図り,その人らしさを支えることが重要であると明記されている1).認知症をもつ高齢者への対応が困難となる原因としてbehavioral and psychological symptoms of dementia(認知症の行動・心理的症状)が挙げられており,BPSDを緩和する目的でイギリス発祥のパーソンセンタードケア(Person Centred Care),フランス発祥のユマニチュードⓇ(Humanitude),スウェーデン発祥のタクティールケア(Taktil Care)が導入されている2).これらの中でも,近年,新しい技法として,フランス発祥のユマニチュードケア技法が注目を集めている.

ユマニチュードケア技法は,フランス人で体育学を専門とするYves Gineste(イヴ・ジネスト)氏とRosette Marescotti(ロゼット・マレスコッティ)氏によって約40年前に創り上げられた,知覚・感情・言語による包括的なコミュニケーションメソッドである3).「人間らしくあること(Humanitude)」という哲学をベースにケア技法が体系づけられており,現在フランス国内では400を超える医療機関・介護施設がこの技法を導入している.また,ベルギー,ルクセンブルク大公国,スイス,ポルトガル,ドイツ,カナダ,イタリア等に国際支部が設けられ,国際的な展開も図られている.

ユマニチュードケア技法が日本に導入されたのは2012年であり,2011年に国立病院機構東京医療センター総合内科の本田美和子医師が,フランスのジネスト・マレスコッティ研究所を訪問したことがきっかけであった.2014年には日本ユマニチュード学会の前身となる「ジネスト・マレスコッティ研究所日本支部」が発足し国内でのユマニチュードケア技法の研修や研究の拠点として活動が始まった.その後,2015年には旭川医科大学でわが国初となる正規の医学教育にユマニチュードケア技法が導入され,その他の医学部においても徐々に導入され始めてきている.さらに,2017年には日本ユマニチュード学会が設立され,2019年に開学した富山県立大学看護学部では全国で初の試みとして,4年間一貫したユマニチュード教育が継続するカリキュラムが策定されている4).ユマニチュードケア技法については多様な実践現場での応用だけではなく,医学系・看護系教育機関での早い時期からの基礎教育への取り組みも開始されている.

ユマニチュードは,「ケアをする者とは何か」という哲学に基づき,具体的な4つの柱と5つのステップから構成される1つのシークエンスを用いて実践する知覚・感情・言語による包括的なケア技法である.ユマニチュードの基本は,「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの柱及び,「出会いの準備」「ケアの準備」「知覚の連結」「感情の固定」「再会の約束」という5つのステップからなっている5).

ユマニチュードケア技法が日本に導入されてから10年になろうとしているが,大坪ら6)は,7年を経た時点で日本におけるユマニチュード実践の現状と課題に関する文献的考察を行っている.医学中央雑誌のWeb検索ソフトを用いて,キーワードを「ユマニチュード」として抽出された2015年から2018年の全25件の文献について検討した結果,ユマニチュード継続のための長期的な関わりを捉えた研究や量的研究が期待されること,ユマニチュードの実践によってどのような効果が認められるのかについてを,明らかにする必要があるとの指摘がされていた.

これらを踏まえて本研究では,ユマニチュードケア技法を実施した際,どのような効果があったのかを明らかにする目的で文献レビューに取り組んだ.

参考文献

1)日本看護協会:認知症ケアガイドブック. pp59-66,照林社,東京,2016.

2)土肥眞奈,叶谷由佳,榎倉朋美ほか:「高齢 者の視点を重視した認知症患者への対応」教育 プログラムを導入した急性期病院看護師のプロ グラム実践状況.日本健康医学会雑誌,29 (4): 462-468,2021.

3)本田美和子,Geneste Y, Marescotti R:ユマ ニチュード入門(第 1 版).pp4,医学書院,東 京,2019.

4)本田美和子:わが国におけるユマニチュード 導入の成果と今後の展望.看護管理,29(2): 100-106,2019.

5)本田美和子:優しさを伝えるケア技術.心身 医学,56(7):692-697,2016.

6)大坪昌喜,角マリ子:我が国におけるユマニ チュード実践の現状と課題に関する文献的考 察.熊本保健学大学研究誌,17:83-94,2020.

7)檀原知里,奈良本敬子,小橋かおるほか:急 性期病棟における認知症患者へのケアのための ユマニチュード技法を用いた看護の効果につい て.長野松代総合病院医報,32:52-53,2020.

8)板垣有香 , 藤川美紅 , 近藤理江ほか:認知症 高齢患者への口腔ケアの関わり ユマニチュー ドを用いることによる受け入れの変化.国立病 院機構四国こどもとおとなの医療センター医学 雑誌,6(1):134-138,2019.

9)青井みどり,中島紀子,河野保子:精神科救 急病院への認知症高齢者の入退院の経過 症状 の改善に向けたケアの現状.健康生活と看護学 研究,2:32-36,2019.

10)井上里恵,上川麻矢,岩井芽久美:認知症高 齢患者を対象としたユマニチュードを取り入れ た看護介入の効果.日本看護学会論文集 : 慢性 期看護,50:178-181,2020.

11)平島洸:Comfort(ケア)の概念モデルに基 づく心不全認知症患者への看護介入 自己学習 に基づいたユマニチュードを用いて.福岡赤十 字看護研究会集録,33:54-57,2019.

12)斉藤亜妃,阿部祐太,加藤友里ほか:BPSD 症状が出現している患者へユマニチュードの手 法の実践を試みて.板橋区医師会医学会誌, 23:180-183,2019.

13)下村由佳,中川彩,福山香苗ほか:認知症患 者にユマニチュードの関わりを実施して.中国四国地区国立病院機構・国立療養所看護研究学 会誌,12:85-88,2017.

14)西尾那菜:せん妄患者に対するユマニチュー ドの効果 制止しない看護を目指して.和 : や わらぎ,1:93-96,2015. 15)伊藤百花:認知症看護におけるコミュニケー ション方法 ユマニチュードを参考に見えた看 護師の行動・意識について.Best Nurse,32(2): 52-58,2021.

16)土肥眞奈,杉浦由美子,杉本健太郎ほか:急 性期病院看護師を対象とした「高齢者の視点を 重視した認知症患者への対応」教育プログラム の効果,日本看護管理学会誌,23(1):11-18, 2019.

17)夏目裕子,倉本裕介,夷藤菜保子ほか:精神 科病棟看護師の認知症患者に対する看護の変容 に関する調査 ユマニチュードを導入して.日 本看護学会論文集 : 精 神 看 護,48:27-30, 2018.

18)小川裕太,又川めぐみ,濱田玲子ほか:急性 期病院の整形外科病棟における認知症高齢者の BPSD への対応 ユマニチュード技法の学習を 行なった看護師の感情・思考の変化.高知赤十 字病院医学雑誌,20(1):67-71,2016.

19)木下香織,古城幸子:認知症グループホーム の臨地実習に導入したユマニチュードの効果  看護学生がとらえた入所者の反応からの評価. インターナショナル Nursing Care Research, 14(2):145-153,2015.

20)荻原典子,水戸優子,金壽子:日本の看護に おける「全人的ケア」の概念分析.日本看護技 術学雑誌,19:83-91,2020.

21)Yusuke Fukuyasu, Hitomi U, Kataoka, Miwako: The ef fect of humanitude care methodology on improving emparthy: a six-year longitudinal study of medical students in Japan, BMC Med Educ 21: 316, 2021.

22)Hidenobu Sumioka, Masahiro Shiomi, Miwako Honda, Atsushi Nakazawa :Technical Challenges for Smooth Interaction With Seniors With Dementia: Lessons From Humanitude™ : 2;8:650906. doi: 10.3389/frobt.2021.650906. eCollection 2021.

23)本田美和子,伊東美緒:ユマニチュードと看 護,pp118,医学書院,東京, 2019.

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