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大学・研究所にある論文を検索できる 「Study on ponding water management by intermittent irrigation to reduce methane emission from paddy fields」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Study on ponding water management by intermittent irrigation to reduce methane emission from paddy fields

Matsuda, Soken 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23960

2022.03.23

概要

水田は,温室効果ガスであるメタンの放出源の一つとなっており,その放出削減は農業分野における地球温暖化緩和策として重要な位置づけとなっている。水田土壌においてメタンは,一連の微生物活動による土壌有機物の嫌気的分解によって,強い還元状態下で生成するため,土壌の酸化還元電位を水田の水管理を通して制御することが放出削減の有効な手段となりうる。すなわち,間断灌漑を行って,土壌が酸化状態になる期間を積極的に設けることによりメタン放出削減を図ることができる。この間断灌漑手法はAlternate Wetting and Drying(AWD)としてアジア諸国を中心に注目されている。しかしながら,AWDはコメの収量や品質の面で農家の直接的メリットがなく,広域的かつ継続的に実践されている例は少ない。本論文では,AWDの実施を広範囲に展開することを目的として,湛水管理を個々の農家ではなく水管理組織が行うことの有効性を検証するとともに,メタン放出削減に有効な湛水管理のスケジュールを提案した。また,メタン放出に及ぼす土壌水の浸透速度の影響を調べた。本論文は,以下の6章から構成されている。

第1章では,温室効果ガス放出の現況について述べ,水稲稲作におけるメタン放出削減の必要性を論じている。また,水管理による土壌水分制御の有効性と本論文において現地調査を実施したベトナムの状況を紹介している。

第2章では,水田土壌でのメタン生成と大気への放出のメカニズム,メタン放出を削減するために提案されている様々なアプローチ,AWDがメタン放出削減や節水に及ぼす影響などについて先行研究をレビューした。また,日本での土地改良区のような組織による水管理が環境の保全に寄与した例を紹介している。

第3章では,ベトナムの紅河デルタに位置する約44 haの低平地水田地区を対象に,個々の圃場においてAWDを行うことを個々の農家に要請するのではなく,地区を3つのブロックに分けてブロックごとにAWDを考慮した配水を行うシステムの有効性を検証している。ブロックごとの配水を可能にする分水工を用水路系統に2基設置し,この分水工操作管理を取水源の揚水ポンプ操作管理とともに,地区の水管理組織が行うことを試みた。2つの組織的AWD管理ブロックと1つの従来湛水管理ブロックを試験的に設けて,それぞれを比較する現地試験を3年間にわたり実施した。その結果,農地から放出される別の温室効果ガスである一酸化二窒素に比べてメタンの影響が大きく,メタンの管理が水田では重要であること,降雨条件によりメタン放出削減効果は制限されるものの,組織的AWD管理が可能であること,有意に収量を減少させることなく,非湛水期間をより長くすることによってメタン放出量を削減できることを示した。

第4章では,AWDの普及のためには,目安となる湛水管理スケジュールを水管理者や農家に提示することが有効と考え,現地試験から得られた湛水深,土壌の酸化還元電位,メタン放出フラックスの観測データに基づいて,メタン放出を削減するための湛水管理スケジュールを降雨量の少ない冬春作について作成している。ここでは,長期の非湛水状態を避けたい農家の意向を踏まえ,湛水状態になってからメタン放出が開始されるまでの湛水期間と,非湛水状態になってから酸化還元電位が上昇に転じるまでの非湛水期間を抽出した。対象地区では,メタン放出を削減できる湛水期間が 13~21日,非湛水期間が3~8日であることを示し,正常な生育に必要な田植え後と出穂期の湛水期間を考慮した灌漑期の湛水管理スケジュールを提示した。また,この間断的な湛水管理スケジュールでのメタン放出削減効果と節水効果を推定したところ,従来の中干し期を除いて連続的に湛水管理を行う場合と比べて,メタン放出量を27~ 85%削減できること,および非湛水状態から湛水状態への切り替えの頻度によっては用水量が増加する可能性を示した。

第5章では,適切な湛水管理スケジュールの設定に重要な因子となる土壌水の浸透速度がメタン放出に及ぼす影響を把握するため,3段階の浸透速度での AWD と対照として連続的な湛水状態の条件下において,イネのポット栽培試験を行っている。その結果,AWD が浸透速度に関わらず連続的湛水条件に比べて大きくメタン放出削減に寄与する一方,AWD では湛水が消失する直後に一時的なメタン放出があることを示した。また,特に出穂期を含む長期間の湛水状態から非湛水状態に切り替わる際に多くのメタン放出が見られ,浸透速度が大きいほどその放出量が多いことを明らかにした。

第6章では,本研究で得られた成果をまとめ,今後の研究で解明が必要な課題を整理している。メタン放出削減にとって,より適切なスケジュールを構築するためには,非湛水状態に切り替わる際の一時的な放出を考慮に入れること,大きな浸透速度がメタン放出を増加させるメカニズムを明らかにすることの重要性に言及している。

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