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大学・研究所にある論文を検索できる 「因子グラフを基礎とした病態生理学的知識の新たな表現手法に関する研究 : 病態に基づく診断を支援するシステムの実現に向けて」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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因子グラフを基礎とした病態生理学的知識の新たな表現手法に関する研究 : 病態に基づく診断を支援するシステムの実現に向けて

岩井, 聡 東京大学 DOI:10.15083/0002005020

2022.06.22

概要

[背景]
診断⽀援システム(Clinical Diagnostic Decision Support System: CDDSS)は、診断精度を改善し、個別医療に役⽴つ可能性があり、古くから多くのシステムが開発されてきた。中でも病態⽣理学的知識を⽤いたCDDSSは、病態⽣理学的因果関係を知識として記述することで、症状同⼠が重なったり相互作⽤をきたしたりする疾患についても対処でき、解釈性に優れるといった利点があった。⼀⽅で既存の病態⽣理学的知識を⽤いたCDDSSには、具体的な異常状態を知識として記述し利⽤していたため、起きうる全ての異常状態を記述することは困難であった。具体的な異常状態を記述するのではなく、患者の内部状態間の関係性を機能としてモデル化することで、患者の病態を異常機能の組み合わせで表現できる可能性がある。

[⽬的]
医師が鑑別として挙げられなかった鑑別の候補を診断⽀援システムが適切に列挙することで、診断の誤りを減らすことが期待される。そこで、本研究の⽬的は体内の⽣理学的機能の異常に起因する疾患群の鑑別のための正常機能と機能間の関連モデル化⼿法の開発とそれを⽤いた鑑別病態列挙アルゴリズムの妥当性評価とする。

[⽅法]
病態⽣理学的知識を表現する新たな⼿法として、因⼦グラフを基礎とするPPQグラフ(Patho Physiological Query Graph)およびこれを⽤いて候補病態を提⽰するPPQアルゴリズム(Patho Physiological Query Algorithm)を開発した。本研究で考案したPPQグラフは、⼤域的な変数間の関係を局所的な変数間の関係の集合で表現する因⼦グラフを基礎として、病態⽣理学的知識を表現するために必要ないくつかの制約条件および有向性を加えたものである。具体的には、変数ノードは3値以内の離散値をとること、因⼦ノードに機能因⼦ノードおよび定義因⼦ノードの2種類を定義したこと、機能因⼦ノードに張られるエッジに有向性をもたせたこと、変数ノードに機能因⼦ノードからの⼊⼒エッジが存在するとき、その⼊⼒エッジはただ⼀つであるとしたことである。

また、PPQアルゴリズムは、PPQグラフを⾛査し、患者に関する部分的な観測情報から、予め記述した制約条件を満たすグラフ状態(以下、解釈グラフ状態とする)を複数列挙し、それぞれの状態に含まれる機能異常の個数の昇順に出⼒するものである。

評価のために、酸塩基平衡に関する病態⽣理学的機能を表現したPPQグラフを作成し、PPQアルゴリズムをコンピュータ上で検証プログラムとして実装した。開発⼿法が病態レベルでの鑑別を提⽰できているかどうかを、3⼈の協⼒医師と共に、公開されている症例報告論⽂4例を⽤いて分析的に評価した。具体的には、協⼒医師らが症例報告を病態レベルで解釈した解釈グラフ状態を正解とし、論⽂中に記載されている検査値等から判断できる変数ノードの値を⼊⼒情報として、本システムが出⼒した解釈グラフ状態の候補中に、正解解釈グラフ状態が含まれているかどうか、およびその出⼒順位を評価した。

[結果]
評価対象時点とPPQグラフとの組み合わせ15個中、3個を除く12個において、解釈グラフ状態の候補に、正解解釈グラフ状態が含まれていた。また、正解解釈グラフ状態の出⼒順位については、変数ノード数が5〜6個程度の⼩規模なPPQグラフでは、⽐較的上位に出⼒されていたが、変数ノード数が10個を超えるPPQグラフでは、出⼒順位が著しく低下した。

[結論]
本研究は、病態⽣理学的知識を表現する新たな⼿法として、因⼦グラフを基礎とするPPQグラフおよびそれを⽤いて候補病態を提⽰するPPQアルゴリズムを開発した。検証⽤プログラムを開発し、3⼈の協⼒医師のもと症例報告を⽤いて開発した⼿法を分析的に評価した結果、PPQアルゴリズムは医師の考える病態を適切に出⼒することができた。このことから、具体的な異常状態ではなく、⼀般的な機能に関する知識を記述した本⼿法による適切な病態の表現が可能であることが⽰唆された。⼀⽅で、本⼿法は変数の正常範囲からの逸脱の程度が病態判定に重要になる病態を適切に表現できず、予め想定されていない異常に起因する病態の出⼒順位が低いという問題があった。本研究で開発したモデルを利⽤することで、複雑な症例において可能性のある病態候補を医療者に提⽰できる可能性がある。

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