〈資料〉近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相

1)

桜谷保之（1999）近畿大学奈良キャンパ

種がみられたことは、これらの種の多くが

スの生態系の概観. 近畿大学農学部紀

二次林付近で発見されたことから、キャン

要. 32: 69-78.

パス造成以前からの里山環境と関連してい

2)

東條達哉・桜谷保之（2006）近畿大学奈

ることが示唆される。一方で外来種4種が発

良キャンパスにおけるチョウ類の生息

見されたことは, これらの種が乾いた環境

状況. 近畿大学農学部紀要. 39: 9-40.

に生息することから13)、キャンパス造成に

3)

城本啓子・桜谷保之（2004）近畿大学奈

より乾燥した環境が生まれたことと関連し

良キャンパスにおけるヤママユガ科ガ

ている事が示唆される。当キャンパスでの

類の生息状況. 近畿大学農学部紀要．

ハムシ科による調査でも、他の丘陵地で確

37: 9-16.

認されない種として植栽植物を食草とする

4)

6)

城本啓子・福井秀弥・桜谷保之（2007）

移入種が確認されており 、アリ科において

近畿大学奈良キャンパスにおけるガ類

も人工的環境を含むという当キャンパスの

の生息状況（1）スズメガ科, ヤガ科（カ

特色のある環境の影響があることが考えら

トカラ属等）. 近畿大学農学部紀要. 40:

れる。

53-62.

夏原（2000）が示した類型8パターンのう

5)

ちオープンランド地中性の種を除く7類型

良キャンパスにおけるテントウムシ相.

15)

近畿大学農学部紀要. 35: 1-11.

全ての種が見られたことも 、当キャンパ

ス内の多様なハビタットが存在することと

桜谷保之・松本宣仁（2002）近畿大学奈

6)

中谷祐輔・矢野栄二（2013）近畿大学奈

関連していると考えられる。なお、オープン

良キャンパス周辺におけるハムシ類の

ランド地上性の種がやや少ないものの、こ

生息状況．近畿大学農学部紀要 . 46:

の類型には外来種が含まれており、在来種

249-275.

に関してはクロナガアリを除いて全て揃っ

7)

ている。

之（2008）近畿大学奈良キャンパスにお

奈良県全体では、今回の整理で 90 種確認

ける訪花昆虫群集の多様性. 近畿大学

され、近畿地方では滋賀県 54 種、和歌山県

65 種、兵庫県 78 種、京都府 84 種、三重県

横井智之・波部彰布・香取郁夫・桜谷保

農学部紀要. 41: 77-94.

8)

稲本雄太・桜谷保之（2008）近畿大学奈

85 種を上回り、大阪府 91 種には届かなか

良キャンパスにおける水生生物の生息

った 58)。奈良県が本州の内陸部に位置する

状況. 近畿大学農学部紀要. 41: 95-122.

ことから、海岸性の種が少ない可能性はあ

9)

寺山守・緒方一夫・崔炳文（1994）日本

るものの、奈良県南部など、自然環境が残さ

産アリ類都道府県別分布表. 蟻. 18: 5-

れた地域が多く存在する事から、今後、さら

17.

64

近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相

10) 日本産アリ類データベースグループ

（2003）日本産アリ類全種図鑑. 196pp．

学習研究社, 東京．

史．200 pp．南方新社, 鹿児島．

20) Baroni Urbani, C.& De Andrade, M. L.

(2003) The ant genus Proceratium in the

11) 河端由紀（1994）奈良公園と奈良教育大

extant and fossil record (Hymenoptera:

学内のアリ相. 「奈良公園の自然」平成

Formicidae). Museo Regionale di Scienze

4・5 年度特定研究「奈良公園の動植物

Naturali Monografie (Turin), 36: 1-492.

を教材化するための基礎的研究」研究

21) 環境省自然環境局野生生物課（2019）

班編, pp. 134-148. 奈良教育大学, 奈良.

「 環 境 省 レ ッ ド リ ス ト 2019 」

12) 奈良県（2017）奈良県野生生物目録. 422

（ https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/booklist,

pp. 奈良県くらし創造部景観・環境局

景観・自然環境課, 奈良.

13) 寺山守・久保田敏・江口克之（2014）日

本産アリ類図鑑．viii, 278 pp, 図版 48 pp．

朝倉書店, 東京．

2019 年 7 月確認）

22) 増子恵一（1981）林床性アリ類の捕食行

動 その若干の例について．昆虫と自然.

16(3): 19-25.

23) Masuko, K. (1986) Larval hemolymph

14) Lach, L., C. Parr, & K. Abbott (2010) Ant

feedi ng: a nondes tr uct i ve par ental

ecology. 402 pp. Oxford university press,

c a n n i b a l i s m i n t h e p r i mi t i v e a n t

Oxford.

Amblyopone silvestrii Wheeler

15) 夏原由博（2000）都市から近郊森林の環

(Hymenoptera: Formicidae). Behavioral

境変化に沿った生物群集の推移パター

Ecology and Sociobiology, 19(4): 249-255.

ンに関する研究-大阪地方における鳥,

24) 久保田政雄（1980a）アリに関する記録

チョウおよびアリの群集を題材として.

京都大学大学院博士論文．

16) Ives, C. D., Taylor, M. P., Nipperess, D. A.

and Hose, G. C. (2013) Effect of catchment

urbanization on ant diversity in remnant

riparian corridors. Landscape and Urban

Planning, 110: 155-163.

17) 酒井春彦（1992）アリを採集するには．

インセクタリゥム. 29(11): 44-45．

（2）. 蟻. 9: 8.

25) 久保田政雄（1980b）講談社カラー科学

大図鑑 アリ．56 pp. 講談社, 東京.

26) 郡場央基（1963）オオハリアリの新巣建

設．昆虫. 31: 285-289.

27) 酒井春彦（1995）大井町で採集したアリ

類について．神奈川虫報. 112: 1-6.

28) 村田和彦（1994）メクラハリアリの生活

史．蟻. 17: 3.

18) 伊藤文紀（2007）アリの生態研究 : コ

29) 山口勇気ら（2010）トゲズネハリアリ

ロニー採集と飼育方法．

「土壌動物学へ

（Cryptopone sauteri）の飼育法. 新潟大

の招待 採集からデータ解析まで」 (日

学教育学部研究紀要 自然科学編. 3(1):

本土壌動物学会編), pp. 175-179, 東海

41-46.

大学出版会, 秦野．

30) Masuko, K. (2010) Nest Density and

19) 山根正気・原田豊・江口克之（2010）ア

Distribution of Subterranean Ants in an

リの生態と分類 南九州のアリの自然

Evergreen Broadleaf Forest in Japan with

65

池田・葛西・合田・村上・石原・仲村・澤畠

Special Reference to Amblyopone silvestrii.

North Amarican dacetine ants. Annals of

Entomological Science, 13(2): 191-198.

the Entomological Society of America,

31) Masuko, K. (2008) Colony population and

46(4): 479-495.

prey composition of the ant Ponera scabra

38) 増子恵一（1985）ウロコアリのトビムシ

Wheeler (Hymenoptera: Formicidae). Ari,

狩り．インセクタリウム. 22(1): 4-9.

31: 55-62.

39) 久保田政雄（2008）アリの生態 ふしぎ

32) Baroni Urbani, C. & De Andrade, M.L.

(2007) The ant tribe Dacetini: limits and

constituent genera, with descriptions of

new species. Annali del Museo Civico di

Storia Naturale “G. Doria” 99: 1-191.

の見聞録．238 pp. 技術評論社, 東京.

40) 久末遊（2018）松山城城山公園のアリ相．

蟻．39:18-39.

41) 佐藤武雄・三浦新太郎（1977）クロナガ

アリの習性．北上市立博物館研究報告.

33) 増子恵一（1994）イガウロコアリのトビ

ムシ捕食．蟻. 17: 4.

2: 1-8.

42) 安部琢哉（1971）草地に生息する 4 種

34) Masuko, K. (2009a) Studies on the

アリ間の食物分配について I. 食物と

Predatory Biology of Oriental Dacetine

その採集行動．日本生態学会誌. 20:

Ants (Hymenoptera: Formicidae) II. Novel

219-230.

Prey Specialization in Pyramica benten.

43) Harada, Y. (2005) Diel and seasonal

Journal of Natural History, 43(13-14): 825–

patterns of foraging activity in the arboreal

841.

ant Crematogaster matsumurai Forel.

35) Masuko, K. (2009b) Studies on the

Entomological Science, 8(2): 167-172.

Predatory Biology of Oriental Dacetine

44) Okita, I., Murase, K., Sato, T., Kato, K.,

Ants (Hymenoptera: Formicidae). III.

Hosoda, A., Terayama, M. & Masuko, K.

Predation on Gamasid Mites by Pyramica

(2013) The spatial distribution of mtDNA

mazu with a Supplementary Note on P.

and phylogeographic analysis of the ant

hexamerus.

Cardiocondyla kagutsuchi (Hymenoptera:

Journal

of

the

Kansas

Entomological Society, 82(2): 109-113.

Formicidae) in Japan. Sociobiology, 60,

36) Masuko, K. (1984) Studies on the

129–134.

Predatory Biology of Oriental Dacetine

45) Seifert, B., Okita, I., Heinze, J. (2017) A

Ants (Hymenoptera: Formicidae) I. Some

taxonomic revision of the Cardiocondyla

Japanese

nuda group (Hymenoptera: Formicidae).

Species

Pentastruma,

and

of

Strumigenys,

Epitritus,

and

Malaysian Labidogenys, with Special

Reference to Hunting Tactics in ShortMandibulate Forms. Insectes Sociaux,

31(4): 429-451.

37) Wilson, E. O. (1953) The ecology of some

Zootaxa, 4290: 324–356.

46) 増子恵一（1983）日本産アリ類の習性雑

報．蟻. 11: 1-2.

47) Masuko, K. (1994) Specialized predation

on oribatid mites by two species of the ant

g e n u s M y r m e c i n a ( H y me n o p t e r a :

66

近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相

Formicidae). Psyche, 101(3-4): 159-173.

3%AA%E9%A1%9E%E7%94%9F%E6%

48) 増子恵一（1980）富士山におけるクロヤ

pdf?t=1557350254, 2019 年 8 月 22 日確

マアリの餌内容．蟻. 9: 2-4.

49) 山根正気（1997）アリの餌をめぐる最近

の話題. 昆虫と自然. 32(10): 2-6.

50) Ward, P. S., Blaimer, B. B., Fisher, B. L.

(2016)

revised

classification

of

the

phylogenetic

ant

subfamily

Formicinae (Hymenoptera: Formicidae),

with resurrection of the genera Colobopsis

and Dinomyrmex. Zootaxa, 4072(3): 343357.

51) 大門聖（2012a）河内長野市からのアリ

類の記録(1)．南大阪の昆虫. 14(1): 2-4.

52) 大門聖（2012b）河内長野市からのアリ

類の記録(2)．南大阪の昆虫. 14(2): 28-31.

53) 大門聖（2012c）河内長野市からのアリ

類の記録(3)．南大阪の昆虫. 14(3): 41.

54) 大門聖（2012d）河内長野市からのアリ

類の記録(4)．南大阪の昆虫. 14(4): 64-68.

55) 増井啓治（2019）箕面公園のアリ相.

Nature Study, 65(8): 6-7.

56) Touyama, Y., N. Nakagoshi, and T.

Yamamoto

(1997)

lucidophyllous

Myrmecofauna

forests

in

85%8B%E6%83%85%E5%A0%B1+27b.

of

different

developmental stages in south-western

Japan. Ecological Research, 12(2): 131138.

57) 栂井龍一・上田昇平・服部充（2012）乗

鞍岳におけるアリ類の垂直分布．環動

昆. 23(3): 119-125．

58) 寺山守（2019）

「日本産アリ類生態情報

27b 日本産アリ類都道府県別分布表」

（ https://terayama.jimdo.com/app/downlo

ad/13344303490/%E6%97%A5%E6%9C

%AC%E7%94%A3%E3%82%A2%E3%8

認）

67

池田・葛西・合田・村上・石原・仲村・澤畠

図 1. 近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ科の採集地点

A. キャンパス北西部の林、B. 調整池、C. 北駐車場横の林、D. 北駐車場、E. アプローチ

のケヤキ並木、F. 第 2 共同研究棟、G. 校舎渡り廊下、H. 教室棟、I. クラブ棟、J. 研究棟

中庭、K. 新教室棟前中庭、L. グラウンド南の林、M. キャンパス南部の竹林、N. キャン

パス南部の畑、O. キャンパス南部の林、P. キャンパス南東部の道路、Q. 実験圃場、R.

近大坂、S. 黒谷公園

68

近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相

13

図版 1. 近畿大学奈良キャンパス周辺において確認された奈良県初記録種(＊)及び希少種(✫)

1. ノコギリハリアリ Stigmatomma silvestrii

，2. ダルマアリ Discothyrea sauteri *✫，3. ナカ

スジハリアリ Brachyponera nakasujii *，4. セダカウロコアリ Strumigenys hexamera *✫，5. ヤ

マトウロコアリ Strumigenys japonica *，6. トカラウロコアリ Strumigenys membranifera *

69

池田・葛西・合田・村上・石原・仲村・澤畠

10

10

11

12

図版 2. 近畿大学奈良キャンパス周辺において確認された奈良県初記録種(＊)及び希少種(✫)

7. ハヤシナガアリ Stenamma owstoni

*✫

，8. ヤドリウメマツアリ Vollenhovia nipponica *，9.

コツノアリ Carebara yamatonis *✫，10. キイロヒメアリ Monomorium triviale

，11. カドハダ

カアリ Cardiocondyla strigifrons ，12. ヒメムネボソアリ Temnothorax arimensis *✫

70

近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相

13

14

15

16

17

図版 3. 近畿大学奈良キャンパス周辺において確認された奈良県初記録種(＊)及び希少種(✫)

13. カドフシアリ Myrmecina nipponica

，14. クロクサアリ隠蔽種群 Lasius fuji (s.l.) *，15.

フシボソクサアリ Lasius nipponensis *，16. ケブカツヤオオアリ Camponotus nipponensis *，

17. トゲアリ Polyrhachis lamellidens

...