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大学・研究所にある論文を検索できる 「表面粗さ変化により生じる硬軟感の錯覚に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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表面粗さ変化により生じる硬軟感の錯覚に関する研究

カン セミン 東北大学

2020.09.25

概要

The purpose of this study is to clarify the haptic illusion to the stiffness feeling caused by surface roughness. First, the five silicone samples with different surface roughness were fabricated to investigate the haptic illusion to the stiffness feeling caused by surface roughness of the objects. The sensory evaluation was performed with two kinds of touching motion instruction. During the sensory evaluation, we measure the fingertip trajectory and contact force. Comparing analysis of sensory evaluation results and the touching motion during the sensory evaluation were carried out. Second, the six silicone samples with two kinds of Young’s modulus and three kinds of surface roughness were represented to investigate the haptic illusion to the stiffness feeling in this experiment. After the sensory evaluation, the mechanical properties such as the elastic modulus, the friction coefficient and the friction stiffness of the silicone samples were measured. After that, we compare the sensory evaluation results with the measured mechanical properties of the samples. Third, ten silicone samples with two kinds of Young’s modulus and five kinds of surface roughness were represented in this experiment. We performed two kinds of sensory evaluation of the stiffness feeling and roughness feeling with the feeling the surface roughness motion instruction. After the sensory evaluation, the fingertip properties such as the hardness and friction of the subjects. And then, we compare the sensory evaluation results with the fingertip properties of the subjects. And discuss the relationship between the haptic illusion to the stiffness feeling caused by surface roughness change and fingertip properties.

第1章 序論
触感は,ヒトの体表面と対象物との接触により得られる感覚であり,ヒトは撫でる,押すなどの触動作を通じて様々な触感を得ている.触感は大きく分けて「粗さ感」「硬軟感」「乾湿感」「温冷感」の 4 つの潜在的因子に集約され,ヒトはこれらの因子の情報を複合させて様々な材質を認識しており,日常生活において重要な感覚である.

ヒトとの接触が生じる様々な製品においては、実用的な機能だけでなく,触り心地などの感性的な機能も重要な要素であり,高付加価値な製品を開発するため,触り心地を向上させる技術の開発として,シボ加工やブラスト加工,樹脂印刷などの様々な表面処理技術が期待されている.これらの触り心地を向上させる技術は,精密な表面加工を行うことで心地よい触感を付与する技術だけでなく,表面に微細なパターンを表出することで,本来素材が有していた触感を大きく変化させる技術も開発されている.例えば,ソフトフィールシボは,硬質プラスチックに微小な凹凸パターンを付与することで「やわらかい」「しっとり」などの触り心地が得られることが報告されている.このような材質の物理特性を変えずに,触感を変化させるための重要な現象が錯触である.錯触は触感における錯覚現象であり,上記のソフトフィールシボもその一例である.その他にもベルベット錯触やフィッシュボーン錯触などがある.前者は格子状のワイヤーを両手で挟んで擦ると,ワイヤーの凹凸感ではなく,滑らかで柔らかいベルベットが間にあるように感じる現象であり,後者は魚の骨のような凸パターンの背骨にあたる部分を指でなぞると,平らな凸パターンが凹んでいるように感じる現象である.これらの錯触を利用することで、構造的な機能と感性的な機能を組み合わせた新たな製品設計が可能となる.しかしながら,錯触を利用して触感を設計するためには,触感の知覚メカニズムとともに、錯触現象の機序を解明する必要がある.

これまで,著者らのグループでは,ソフトフィールシボやベルベット錯触のような硬軟感に生じる錯触に着目し,表面の凹凸が硬軟感の錯覚を生じるのかを検証する実験を行い,押し付け動作では硬軟感の錯覚現象は見られないが,表面を撫でる動作では錯覚現象が生じることを確認している.しかしながら,表面粗さと硬軟感の錯触の関係を解析すると,個人差が見られ,錯触の機序を解明するためには、個人差の要因の解明が求められている.

以上に鑑み,本研究では,表面形状の変化による硬軟感の錯覚に着目し,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚現象を解明することを目的とし,表面粗さおよびヤング率の異なる触サンプルに対して硬軟感についての官能評価実験と触サンプルの機械的特性計測,被験者の指先特性計測を行い,これらの結果を比較し,表面粗さの変化により生じる硬軟感の錯覚現象に関わる触サンプルの機械的特性および指先特性を確認する.まず,表面粗さの変化によるヒトの硬軟感の変化がどのような触動作で生じるのかを確認するため,同じ剛性の表面粗さを異なる触サンプル 5 種類を用いて,2 種類の触動作について官能評価実験を行うと同時に,被験者の指先軌跡と接触力の計測も行う.硬軟感評価値および触動作計測の結果を比較し,触動作が表面粗さの変化による硬軟感の錯覚にどのように関与しているかを考察する.次に,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚において触サンプルの機械的特性がどのように関与しているかを確認するため,2 種類の剛性と 3 種類の表面粗さの計 6 種類の触サンプルを用いて,官能評価実験を行う.また,触サンプルの弾性率や摩擦剛性,摩擦係数の計測も行うとともに,触サンプルの機械的特性の計測値と官能評価値を比較し,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚と触サンプルの機械的特性の関係を考察する.さらに,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚と被験者の指先の特性の関係を確かめるため,2 種類の剛性と 5 種類の表面粗さを有する計 10 種類の触サンプルを用いて,官能評価実験を行うとともに,被験者の指の硬さと摩擦係数の計測も行う.指先の特性計測値と官能評価結果値を比較し,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚とヒトの指先特性との関係を考察する.

第2章 触動作条件によるヒトの硬軟感の錯覚
「自由に触る」と「表面粗さを感じながら触る」の 2 種類の触動作条件で官能評価を行い,表面粗さの変化により硬軟感の錯覚現象が生じるかまたその傾向について調査した.さらに,触動作の解析も行った.自由に触る触動作条件では,表面粗さの変化による硬軟感の変化が一定ではなく,表面粗さを感じながら硬軟感の評価をする触動作条件では,図 1(a)~(c)に示すように表面粗さの変化による硬軟感の変化が確認できた.それは,グループ 1 は,表面粗さが粗くなるほど柔らかく感じる被験者,グループ 2 は,表面粗さが粗くなるほど硬く感じる被験者,グループ 3 は,表面粗さが粗くなるほど柔らかく感じるが最も粗いサンプルでは硬軟感が急変し,硬く感じる被験者,3 つのグループに分類されて確認できた.表面粗さを感じながら触る触動作条件では,指先から手前方向に擦る触動作が見られ,この触動作で表面粗さの変化により硬軟感の錯覚が生じることが示された.

第3章 硬軟感の錯覚と対象物の機械特性との関係調査
表面粗さを感じながら触る際に,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚が生じる要因を明らかにするために,Bio-tribometer を用いて触サンプルの弾性率,摩擦係数,および摩擦剛性を計測し,官能評価結果との比較考察を行い,その要因を調査した.触サンプルの測定結果,図 2(a)~(c)に示すように,表面粗さの変化に伴い弾性率,摩擦係数,摩擦剛性の値が若干変化することが確認できた.また,図 3(a)~(d)に示すように,官能評価の結果は第 2 章と類似した結果であった.これらの結果を比較すると,表面粗さの変化による硬軟感の変化の傾向が類似していることから,摩擦が硬軟感の錯覚現象の要因であることが示唆された.

第4章 硬軟感の錯覚と指先特性との関係調査
表面粗さの変化による硬軟感の錯覚が生じる要因を明らかにするために,指先から手前方向に擦る動作で表面粗さの異なる触サンプルに対し官能評価を行い,表面粗さの変化による硬軟感の錯覚の出現の傾向を調査すると同時に触動作の計測解析,さらにヒトの指先の摩擦係数および指腹部の剛性を計測し,官能評価との比較考察を行い,硬軟感の錯覚現象の要因を調査した.官能評価の結果から,図 4(a)~(c)に示すように,表面粗さの変化による硬軟感の錯触が生じる被験者(グループ 1,グループ 2)と錯触が生じない被験者(グループ 3)が確認できた.グループ 1 は,表面粗さが粗くなると硬く感じる被験者,グループ 2 は,柔らかく感じる被験者である.グループごとに指先の摩擦,指腹部の剛性,触る時間を考察すると,硬軟感の錯覚現象の出現には指腹部の剛性や指先と触サンプルとの接触時間が関与し,硬軟感の錯覚現象の傾向には摩擦時の押込み力および接触面積が関与していることが示唆された.

第5章 結論
本論文で得られた結果を総括し,結論を述べた.

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