なると期待される。
奈良県における本種の記録は 1992 年吉
1)
滋賀県 (2016) 滋賀県で大切にすべき
野郡十津川村小川(湊 宏採集)、1993 年吉野
野生生物: 滋賀県レッドデータブック
郡川上村入之波(湊 宏採集)の 2 記録のみと
2015 年版.
8)
されており 、本報における記録は県内 3
2)
湊宏 (1989) 日本産ナメクジ科の新属
例目となる。また前 2 例の採集地は県内で
新種, イボイボナメクジの記載. 貝類
も自然度の高い南部の山岳地帯であったが、
学雑誌 48:255–258.
本報における採集地は記録の空白地帯であ
3)
構内の陸産貝類. 南紀生物 42:89–92.
った奈良県北部の都市近郊里山林であった。
本報における本種の記録は奈良県北部初記
湊宏 (2000) 京都大学瀬戸臨海実験所
4)
湊宏 (2015) 陸産貝類研究備忘録(14)
録となったと同時に本種が都市近郊の里山
イボイボナメクジ種群(ホソアシヒダ
林のような環境にも生息していること、奈
ナメクジ科)の分布とその文献抄. 阪
良県全域に生息している可能性を示唆する
神貝類談話会機関誌かいなかま 49:1–
ものとなった。
12.
一方で捕食性である本種は、餌となる他
5)
奈良県 (2017) 大切にしたい奈良県の
の有殻陸産貝類の減少と草本植生のシカ食
野生動植物-奈良県版レッドデータブ
害などが減少要因になり得るとされており
ック 2016 改訂版-.
1)
、他都道府県と同様にシカ食害の深刻化が
6)
湊宏 (2009) 殻表に穿孔痕をもつクニ
問題視されている奈良県では、少なからぬ
ガミゴマガイの謎. ちりぼたん : 日本
個体群が絶滅の危機に瀕している可能性も
貝類学会研究連絡誌 : newsletter of the
考えられる。さらなる調査による適切な保
Malacological Society of Japan 2:96 ~
全状況評価が望まれる。
100.
7)
6.謝
類. 南紀生物 51:24–32
情報の提供をいただいた瀬尾友樹氏と大
湊宏 (2009) 大島(和歌山県)の陸産貝
8)
湊宏, 増田修, 矢野重文 (1996) イボイ
北祥太朗氏にこの場を借りて厚く御礼申し
ボナメクジの新分布記録. ちりぼたん
上げる。
26:100–101
7.要
2019 年 2 月および 7 月に、近畿大学奈良キ
ャンパスの 2 箇所の異なる広葉樹二次林内
で、計 3 個体のイボイボナメクジの生息を
確認した。イボイボナメクジの生息確認は、
...