Correlation between patient satisfaction in Knee Society Score to other patients-reported outcome measures
概要
はじめに
近年,人工膝関節全置換術(TKA)の術後評価として,患者満足度が注目されている.TKAは進行した変形性膝関節症に対して下肢機能再獲得には最も有用な治療法であるが,その対象となる高齢者に対するアンケート調査は,その再現性や一貫性が問題視されている1⁾.そこで本研究では,変形性膝関節症に対するTKA高齢者症例で,New Knee Society Score(KSS-2011)の患者満足度と,KSS-2011の他項目および,他の患者立脚型評価と比較し,その一貫性について検討したので報告する.
対象と方法
65歳以上で,内反型変形性膝関節症に対してCR-TKAを施行した83例を対象とした.対象患者は,女性72例,男性11例で,手術時平均年齢は74.5歳,術前平均可動域は伸展-4.0°,屈曲118.6°で,術前HKAは12.4°の内反であった.
すべての患者で,TKA術後1年時に,KSS-2011の患者満足度,症状,機能評価,期待度および,forgotten joint score(FJS), EQ-5D,ロコモ25スコアを評価した.患者満足度と各評価法との相関は単回帰分析を用いて評価した(p<0.05).
さらに,対象群を65歳以上75歳未満の前期高齢者群と,75歳以上の後期高齢者群の2群に分割し,2群におけるFJS,ロコモ25スコアと,患者満足度の相関を比較した.
また,患者満足度,ロコモ25スコア,FJSの天井効果を,各評価法の上位10%のスコアと定義し,該当する患者の割合(%)を検討した2).
結果
術後1年では,KSS-2011の症状,機能評価は患者満足度に中等度の正の相関を示し(以下,r=相関係数, p=有意確率,症状r=0.69, p<0.001,機能評価r=0.69, p<0.001)(図1-a, b),期待度は,患者満足度に強い正の相関を示した(1^0.73,p<0.001)(図Ι-c).これは,術後満足度が高い患者は,今後もさらなる改善を期待していることを意味していた.
また,FJS,EQ-5Dと患者満足度に中等度の正の相関を認めた(FJS1—0.73, p<0.001, EQ-5D r=0.72, p<0.001)(図1-d, e).ロコモ25スコアは,患者満足度に強い負の相関を示した(r=-0.74, p<0.001)(図1-f).
さらに,年齢による2群で,患者満足度と各評価法相関を比較したところ,FJSは2群ともに同等の相関を示した(両群ともr=0.70, p<0.001(図2-a, b)が,ロコモ25スコアは,後期高齢者群で,より強い負の相関を示した(前期高齢者群r=-0.65, p<0.001,後期高齢者群r=-0.75, p<0.001)(図2-c, d).さらに,ロコモ25スコアは,後期高齢患者群においては,FJSと比較して,より強い相関を示していた(図2-b, d).
各患者立脚型評価の天井効果についての検討では,患者満足度では16.9%,ロコモでは15.7%の患者が上位10%のスコアに分布し天井効果を示したのに対し,FJSでは該当患者を認めず天井効果を示さなかった.
考察
高齢者の内反型変形性膝関節症に対するCR-TKAの術後1年の検討では,KSS-2011の患者満足度は,KSS-2011の他項目や,他の患者立脚型評価と中等度から強い相関を示し,ある程度の再現性。一貫性を示したと考えられる.
患者満足度と,症状,機能評価,期待度の相関から,痛みがより改善され機能回復が良好な患者では満足度が高く,そのような満足度の高い患者は,より将来に改善することを期待していることが示唆された.
さらに,患者満足度とFJSの相関からは,手術した関節を意識することなく,より良好なQOLと運動機能を獲得することが患者満足度につながることが示唆された.
興味深いことに,FJSは,患者の年齢に関係なく,患者満足度と一定の相関を示したのに対し,ロコモ25スコアは,後期高齢群で前期高齢群および,同年齢群のFJSと患者満足度との相関より強い相関を示した.これは,後期高齢者では,TKA術後満足度の調査であったとしても,ロコモ25スコアで評価される,膝以外の上肢や腰の疼痛,精神的な不安などの因子に影響されやすいことを示していた.
さらに,天井効果の観点からは,FJSが良好な結果を示しており,術後満足度の高い患者群の解析においては,より分解能が高いFJSを評価に加えることが有効であると考えられた(図3).
結語
1. 術後1年のKSS-2011の患者満足度は,KSS-2011の他の評価項目および,他の患者立脚型評価と中等度から強い相関を示し,一貫性を示した.
2. 痛みがより改善され,機能回復が良好な患者では,満足度が高く,そのような満足度の高い患者は,さらに改善を期待していた.
3. 手術した関節を意識することなく,より良好なQOLと,運動機能を獲得することが,患者満足度につながっていた.
4. 後期高齢者では,TKA術後の満足度が,上肢や,腰の疼痛,精神的な不安など種々の因子に影響されやすいことが示唆された.
5. FJSは天井効果を示さず分解能が高いため,術後満足度の高い対象群においても,有用な方法と考えられた.