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Changes in body condition and behavior of Hokkaido brown bears in relation to seasonal and annual variations in diet [an abstract of entire text]

白根, ゆり 北海道大学

2021.03.25

概要

ヒグマは日和見的な雑食動物であり、食物資源の季節的および年次的な変動や空間的な差異に応じて採餌食物を変化させる。北海道北東部に位置する知床半島では、ヒグマが高脂質食物であるハイマツの実や高タンパク食物であるカラフトマスを利用しているが、それらの採食量が年によって異なるのかは明らかでない。本研究では、ヒグマの食性の季節的および年次的な変動を明らかにすること、またそれらの変動がヒグマの栄養状態や行動様式にどのように影響するのかを明らかにすることを目的とした。

第 1 章では、野生のヒグマの栄養状態を長期的にモニタリングすることを可能にするために、写真を用いて栄養状態を評価する非侵襲的な方法を開発した。本研究では、多くの哺乳類で確立されている Body Condition Index (BCI)を真の栄養状態の基準値として採用した。まず、1998~2017 年に知床半島において有害駆除や狩猟などによって捕殺された個体の実測値を用いて予備的検討を行った。その結果、春には BCI が低く、秋には高くなるという季節変化がみられた。また、胴高-体長比と BCI との間に強い相関がみられたことから、胴高-体長比が栄養状態評価指標として有用であることが示された。次に、半島先端部に位置するルシャ地区において継続して観察可能なメス成獣 1 個体をモデル動物として、写真を用いた計測精度の検証を行った。2017 年 9 月 24~26 日に計 220 枚の横向きの写真を撮影し、ヒグマの姿勢(胴部の真直度や頸部の傾き)によって写真を分類した。4 種類の計測手法を用いて胴高-体長比あるいは胴高-胴長比を算出し、それらの値がヒグマの姿勢によって変化するかを調べた。その結果、最も多様なヒグマの姿勢に適用することができ、かつ計測のばらつきが十分に小さい手法は、胴高-胴長比(TH:HTL)であることが明らかとなった。また同じ 1 個体について、2016~2018 年の 6~10 月に撮影された写真を用いてTH:HTL を算出した結果、TH:HTL が春や夏に比べて秋に有意に高くなり、栄養状態の季節変化を反映することが確認された。最後に、ルシャ地区において生体捕獲された 7 個体の実測値から BCI を算出し同じ 7 個体の写真から算出した TH:HTL との相関を調べた。その結果、両者の間に有意な相関がみられたことから、写真を用いて正確な栄養状態評価が可能であることが示された。

第 2 章では、食性の季節的および年次的な変動や繁殖状況によってメス成獣ヒグマの栄養状態がどのように変化するのかを明らかにするために、2012~2018 年にルシャ地区において長期的な調査を行った。まず、2,079 サンプルのヒグマの糞を分析したところ、ハイマツが 8 月の推定エネルギー摂取量の 39.8%を、サケ科魚類が 9 月の 46.1%を占めていることが明らかとなり、さらにそれらの摂取量が年によって大きく変化することが示された。次に、第 1 章で開発した方法を用いて、12 個体の成獣メスの 1,226 枚の写真から栄養状態を評価した。その結果、栄養状態は 6 月から 8 月下旬まで悪化し続け、サケ科魚類が利用可能となる 9 月に回復し始めた。また、ハイマツとサケ科魚類の採食量がともに多い年には、栄養状態が回復し始める時期が早くなることが明らかとなった。さらに、子連れのメスは単独のメスよりも栄養状態が悪く、特にサケ科魚類の採食量が少ない年には悪化が顕著になることが示された。

第 3 章では、メス成獣が繁殖状況および食物環境によってどのように行動を変化させるのかを明らかにするために、ルシャ地区において 7 個体の成獣メスに GPS 首輪を装着した。本研究では、0 歳子の運動能力の低さによって、子連れのメスでは食物資源の獲得が制限されているのではないかと仮説を立てた。まず、1 時間当たりに移動する速度を算出した結果、子連れのメスは単独のメスよりも移動速度が遅いことが示された。また、植生や傾斜といった環境要因も移動速度に影響しており、傾斜が急な場所や高標高のハイマツ帯では移動速度が遅くなることが明らかとなった。次に、資源選択関数を用いて各季節の生息地選択性を調べた結果、子の有無にかかわらず、晩夏にはハイマツ帯を強く選択していることが明らかとなった。一方で、ハイマツの消費量が少なかった年には、子連れ個体および単独個体ともにハイマツ帯を避ける傾向があった。最後に、1 日を日中・薄明薄暮・夜間の 3 つの時間帯に分類し、それぞれの時間帯においてヒグマがサケ科魚類の遡上河川を訪れる確率を算出した。その結果、河川を訪れる時間帯には繁殖状況による有意な差がなかった。以上の結果から、子連れのメスは移動が制限されているものの、ハイマツやサケ科魚類の利用においては単独のメスと明確な違いはないことが示された。

本研究により、ハイマツとサケ科魚類がヒグマの栄養状態および行動様式を決定する鍵食物であることが明らかとなった。限られた期間に高山帯のハイマツと海岸のサケ科魚類という環境の全く異なる食物資源に依存しているという点は、知床半島におけるヒグマのユニークな生態を表している。また、これらの食物を十分に利用できない年には、栄養状態が悪化し、行動様式も変化させることが明らかとなった。知床半島では、夏の食物不足がヒグマの人里への出没につながっているのではないかと考えられており、本研究で得られた発見が、人とヒグマの軋轢を引き起こすメカニズムの解明につながることが期待される。ヒグマの生態のさらなる理解と効率的な保護管理を実現するためには、性齢クラスなど個体によってどのように食性が異なるのか、また食物資源量の地域差がヒグマの行動様式にどのように影響するのかを解明する、さらなる研究が求められる。

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