リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Life-history strategies of the invasive naturalized tall bamboos in Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Life-history strategies of the invasive naturalized tall bamboos in Japan

Kobayashi, Keito 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23255

2021.03.23

概要

タケ類(イネ科タケ亜科に属する植物)には有用植物として世界各地で導入・栽培されてきたものが多くある。しかし、それらの一部は、近年、管理放棄に伴い野生化し、既存の森林を置き換えるように拡大しており、日本でも問題になっている。本研究では、タケの森林への侵入性にタケ独特の生活史戦略が関わっていると考え、大型のタケを対象に生活史戦略を定量的に評価した。

 第1章では、タケの分類や形態・生態学的特徴、世界におけるタケの分布、人間によるタケの利用と野生化に関する知見をまとめた。また、国内の大型のタケ3種(マダケ属のモウソウチク、ハチク、マダケ)の分布拡大について、これまでの既報研究を網羅した。その上で、タケの拡大現象の理解に向け、タケ独特の生活史戦略の理解が十分でないことを指摘し、地上部と地下部のクローン成長、および有性生殖に関する未解明の課題を整理した。

 第2章では、竹稈の空間分布の1回の計測から、タケの拡大速度を定量的に推定する新たな手法を考案し、実証した。大阪・京都府下で野生化した19のモウソウチク拡大地において、タケ純林から拡大先の森林までの竹稈の空間分布を、タケ純林先端からの距離に対する積算竹稈数として近似し、その傾きの逆数を拡大指標と考えた。この拡大指標には、航空写真から読み取れる過去数十年の竹林の拡大速度と正の相関関係があった。一方、タケ純林の稈密度自体は、過去数十年の拡大速度と相関していなかった。

 第3章では、ハチク林におけるラメット個体群(竹稈の集合体)の10年間の動態を解析し、定着後のタケ個体群の維持・成長様式を明らかにした。ラメット個体群の現存量は、10年間を通して徐々に増加していた。この増加は、竹稈密度の増加ではなく、新しく太い竹稈による古く細い竹稈の置き換えによってもたらされていた。その結果、平均竹稈重量は増加し、竹稈密度は逆に低下していた。平均竹稈重量と竹稈密度の関係は、同種同齢の植物個体群の発達過程にみられる自己間引き則(-3/2則)に従った。また、10年間の動態調査により、新しいラメットの生産量には明らかな隔年周期が観察された。この原因は気候条件では説明できず、内的なメカニズムに起因することが考えられた。

 第4章では、モウソウチク林において4年間の調査を通して地下茎の重要性を研究した。地下茎の生産速度は、竹林全体の純一次生産量の10%であった。一方で、地下茎の現存量は、竹林全体の現存量の19%であり、純一次生産量の地下茎への配分率より高かった。この原因は、炭素の回転率(寿命の逆数)が他の器官に比べて地下茎で小さかったことによる。また、既存のデータベースを用いて、同サイズの樹木とモウソウチクの器官の重量分配を比較したところ、モウソウチクの方が地下器官へのバイオマス分配が平均で1.9倍高く、地下茎の存在が地下部バイオマス分配の増大に貢献していると考えられた。一方で、モウソウチクでは、木本植物に比べ、葉へのバイオマス分配が低いこともわかった。

 第5章では、ハチクの有性生殖戦略を研究した。ハチクは約120年周期で開花・枯死すると考えられているが、近年、国内各地で稀な開花イベントが報告されている。一斉開花が見られたハチク林の5調査地において繁殖器官への栄養元素の投資比率を調べたところ、地上部構造に含まれる窒素とリンの約60%が花序に分配されていた。しかし、開花後、種子は結実せず、実生も見られなかった。一方、一斉開花した林分においては、12%のラメット(竹稈)が開花イベントに参加せず、これらの地下茎からは新たに短い稈が発生した。ハチクは厳密には一回繁殖型ではなく、一部は残存し栄養繁殖を続けるため、個体群が長期間維持できると考えられた。

 第6章では、以上の結果を総合的に考察した。タケ個体群の拡大の程度は、森林に侵入したタケと樹木との間の光競争によって決まると指摘した。タケは一旦優占すると、古く細いタケを新しく太い竹稈へ2年周期で置き換えることにより、竹林全体が成長し続けることができ、これが他種の侵入を防いでいることを指摘した。タケの地下茎は長寿命であるため、タケの成長だけでなく、生態系の炭素蓄積の面からも重要であることを指摘した。ハチクは約120年周期で開花し、多量の栄養元素を繁殖器官に分配するが、種子の結実は見られないため、竹林を減らすには、一斉開花時に個体群管理を行うのが効果的であることを指摘した。その一方で、一斉開花後も一部のラメットは繁殖せずに残存し、クローン成長を継続するため、放置すれば、竹林は長期に渡って維持されることを指摘した。これらの知見は、タケの生活史戦略の理解を深化させ、放棄竹林の管理に資するものである。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る