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大学・研究所にある論文を検索できる 「Organic matter and macrobenthos dynamics analyzed with stable isotopes in the anthropogenically transformed mangrove ecosystem of Batan Bay Estuary, Philippines」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Organic matter and macrobenthos dynamics analyzed with stable isotopes in the anthropogenically transformed mangrove ecosystem of Batan Bay Estuary, Philippines

Ogawa, Yuya 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23943

2022.03.23

概要

マングローブ林は豊富な生態系サービスを提供するが、人為的かく乱により急速に減少してきた。特に東南アジアにおいては、養殖池への転換によるマングローブ林消失が進み、生態系サービスの低下が懸念されている。人為的かく乱による生態系への影響を定量的に評価することは、生態系の修復や持続可能な土地利用の実現のための重要な知見となる。本研究は、1988年以降に90%以上のマングローブ林が養殖池へ転換されたフィリピンのバタン湾において、マクロベントス群集とそれが利用する有機物に焦点をあてて、人為的なかく乱の生態系への影響を明らかにすることを目的とした。調査には炭素・窒素安定同位体比分析を用いて、有機物の起源推定やマクロベントス群集の食物起源推定を行なった。

第1章では、過去のマングローブ生態系と安定同位体比分析の研究を総括した上で、人為改変をうけた熱帯沿岸域の生態学的研究の欠如を指摘、特に放棄養殖池やオオバヒルギ植林などの生態系についての知見の必要性を論じた。

第2章では、バタン湾沿岸域における一次生産者の炭素と窒素の安定同位体比 (δ13C、δ15N)を明らかにした。それぞれの一次生産者の安定同位体比は先行研究と同様の値となり、特に底質中有機物の主な起源とされるマングローブ樹種を含む陸生C3植物、底生微細藻類、植物プランクトンは安定同位体により明瞭に識別できた。マングローブ樹種については、種間変動と種内変動の解析を行った結果、明確な種間変動は確認できなかったが、複数の種でδ13Cが河川上流部から湾内にかけて増加していく傾向が見られ、塩分濃度上昇による水ストレスの増加が示された。また、δ15Nは湾域よりも河川域のマングローブ樹種において高いことから、河川域において農業排水・生活排水の影響があることが示唆された。

第3章では、マングローブ林の大部分が消失したバタン湾全体の底質中有機物の炭素窒素安定同位体比を測定し、有機物起源とその空間的な分布を明らかにした。まず、バタン湾において測定した63ヶ所の水質、地形、底質中有機物のδ13C、δ15N、C/N比を変数にクラスター解析を行った。その結果、バタン湾は河川区、奥湾区、湾区に区分ができた。次に、それぞれの区分においてベイズ推定を組み込んだ混合モデル(SIAR)を用いて底質中有機物の起源となる各生産者(マングローブ樹種を含む陸生C3植物、底生微細藻類、植物プランクトン)の寄与率を算出した。その結果、バタン湾全体でマングローブ樹種を含めた陸生C3植物由来の有機物の寄与が高く、これに植物プランクトンと底生微細藻類が補完的に寄与していた。水深が浅く水流が弱い奥湾区では、底生微細藻類の貢献が大きいことが明らかになった。

第4章では、人為改変がマクロベントス群集に与える影響を調査するため、天然マングローブ林、天然干潟、オオバヒルギ植林地、放棄養殖池においてマクロベントス群集構造と安定同位体分析を用いた食物網構造解析を行った。調査の結果、自然的環境下(天然マングローブ林と天然干潟)ではマクロベントス群集の多様性は高く、様々な一次生産者起源の有機物に依存しているのに対し、人為的環境下(植林地と放棄養殖池)ではマクロベントス種の多様性が低く食物網構造も単純化していることが明らかとなった。また、底質表面の標高がマクロベントス群集構造を決定する重要な要因であることが示され、放棄養殖池でマングローブ樹種の侵入や有機物の蓄積によって底質表面に起伏ができることが、マクロベントス群集の多様化に貢献することが示唆された。

第5章では、オオバヒルギ植林地と残存した天然マングローブ林の林分構造、バイオマス生産量などからバタン湾におけるオオバヒルギ植林の生態的な位置づけを評価した。毎木調査とリタートラップ法、イングロースコア法による純一次生産量の推定により、植林地はバイオマスや生産性は高いが、単一種の過密な植栽により台風時の強風に対して脆弱であることが示された。また、過密に植栽された植林地では林床が暗く、底生微細藻類の発達が抑制され、マクロベントス群集の餌資源が単純化して、第4章でみられたようなマクロベントス群集の多様性低下と食物綱構造の単純化につながっていることが示唆された。

第6章では、以上の内容を整理し、熱帯沿岸域におけるマングローブ林の消失とそれに続く植林地や放棄養殖池の増加は、有機物起源の単純化やマクロベントス群集の単純化に結びついており、沿岸生態系の修復においてはこの点に留意する必要があることを指摘した。

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