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大学・研究所にある論文を検索できる 「農村地域における排水施設の機能評価に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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農村地域における排水施設の機能評価に関する研究

瀧川, 紀子 神戸大学

2021.09.25

概要

本論文では, はじめに, 低平地Q内水氾濫解析において使用されている氾濫解析手法などに関する問題点について検討した.そして,検討対象地域である新潟県の白根郷地区の排水状況を把握するため,同地区に吉川らの内水氾濫解析モデルを適用した.構築した内水氾濫解析モデルと均等メッシュによって平面二次元流れを追跡する氾濫解析モデルの性能を河川水位と湛水区域の再現性の観点から比較検討し,-築した内水氾濫解析モデルの有効性を確認した. その後, このモデルを用いて, 豪雨時の湛水構成成分を時系列で出力させ,場所ごとに湛水発生の原因を分析し,湛水を軽減させるための排水施設の機能評価を行った.得られた結果を以下に示す.

第1章では,内水による浸水被害の社会経済的な影響と低平農地の浸水被害を緩和するための排水シミュレーションおよび湛水発生要因把握の必要性について述べた.

第2章では,研究対象とした新潟県の白根郷地区流域の概要を整理した.当地区の課題である農業用水が排水機場に与える影響について,本論文では新たに水収享概念図の考えを提案し,実績水文データから,降雨,用水取水や排水までの一連の水の流れを追跡した.この概念図により,排水機場は湛水軽減を目的として建設されているが,その排水量の多くを農業用水が占めていることが明確になった.また,非農用地に目を向けると,農地排 水を主として建設されて排水機場であるが,農地のみならず地域の流出水排除に貢献していることが判明した.

第3 章では, 本研究で使用する氾濫解析去デルの概要を述べた. その後, 吉川ら, 宮津らが開発した内水氾濫解析モデルを新潟県の白根郷地区に適用し, 平成23年7月出水および平成28 年9 月出水を対象として氾濫解析を実施した. 地区内河川・排永路水位, 湛水区域とその面積について再現性を確認したところ, いずれも良好であるが, とくに河川・排水路水位についてはかなり良好な再現結果を得た.

第4 章では, 第3 章で構築した内水氾濫解析モデル( セルモデル) と, 5 0 mの均等メッシュによる平面二次元内水氾濫解析モデル(格子モデル)を適用した結果を比較検討した.近年の河川計画においては,浸水被害の推定に際して平面二次元流れを扱う氾濫解析モデルが多用されているが, 25mないし50mの均等なメッシュによる解析がほとんどである.低平農地では畦畔に囲まれた水田が出水時に貯留域となるが,水田畦畔のような微細地形は考慮されないのが普通である.このため,セルモデルと格子モデルの比較を詳細に行い, 再現性の分析を行った点がこれまでになかった新たな検討である.分析の結果,地区内河川・排水路水位と湛水区域の再現性を確認したところ,水位の再現性についてはセルモデルの方が優れており,格子モデルは洪水後半の水位低減が実績よりも早くなっていた.セルモデルでは,オリフィスを通した水田から排水路への排水や末端排水路による排水がモデル化されており,これらの点が低平水田地域における排水路水位の再現に寄与したと考えられる.格子モデルにおいても,末端排水路による排水を再現できるようにすれば排水路水位の再現性を改善できる可能性があることを示した.湛水面積にっいては,セルモデルは過小, 格子モデルは過大に推定しており, 最大湛水深30cm以上の区域の的中率は50 % 前後で, 両モデルとも改善の余地がある結果となった. また, 計算時間刻みとセル・格子数を揃えた場合0概算では, セルモデルの計算時間は, 格子モデルの3分の 1程度であり, 計算コストはセルモデルの方が小さい. 一方, 地形適合セルが導入されたセルモデルの作成に要する概算延べ時間は, 格子モデルの約6倍であり,モデル作成コス卜はセノレモデルの方が明らかに大きいことを示した.

第5 章では, 構築した内水氾濫解析モデルに30 年確率3 日連続降雨を投入し, 湛水構成成分を①自集水域雨水による湛水,②他集水域からの流入による湛水,③河川・排水路からの逆流による湛水, の3っに区分し, 新たに湛水構成要素を見える化する手法を開発した.その結果,流域の上下流や排水整備の有無によって,湛水構成成分が変化することが分かった. 具体的には, 白根郷地区の上流側の湛水区域では, 他集水域からの流入による湛水が比較的大きいこと,河川の粗度を小さくして通水能を向上させた場合は,他集水域からの流入が減り湛水深が小さくなることが示された.一方,同地区の下流側の湛水区域では,他集水域がらの流入による湛本が明らかに卓越していること,河川の通水能を向上させた場合は,下流域の湛水区域において湛水深がかえって大きくなること,その湛水深増加の原因は他集水域からの流入の増加によるととが示された.次いで,湛水構成成分の見える化の結果を排水整備計画に応用することを検討した.内水氾濫解析モデルを利用した湛水構成成分の見える化によれば,豪雨時に湛水深が高くなり作物への被害が想定される箇所を特定するだけでなく,湛水構成成分を示すことで,湛水発生の原因をセルごとに明らかにすることが可能となる.他集水域からの流入による湛水と,河川・排水路からの逆流による湛水のいずれが卓越するかによって,湛水を軽減するための排水対策は異なることから,湛水構成成分の情報に基づいて適切な対策を選ぶことができる.本研究では排水路の整備や排水機場の増強などの排水対策にっいて,湛水軽減への有効性を検討した.その結果,河川・排水路からの逆流による湛水が卓越する地点では,付帯する河川や排水路の水位低下対策が湛水軽減を目指す上で必須の対策となり,他集水_からの流入による湛水が卓越する地域では,流入もとのセルに付声する河川・排水路の水位低下対策や流入防止対策が効果的となる. また, 洪水終期は, 他集水域からの流入による湛水の割合が大きくなり,湛水発生地点の排水路改修などの小規模な整備でも,湛水継続時間は短くなるケースがあった.

以上, 本論文では, 排水施設の機能評価を検討するため, 氾濫解析モデルを構築し, 湛水構成成分を踏まえた治水対策の選定について検討した.

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