セルロース微結晶の分散液中における構造
概要
令和 4 年度
京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書
セルロース微結晶の分散液中における構造
Structure of cellulose microcrystals in dispersion
京都大学 農学研究科
小林 加代子
研究成果概要
セルロース微結晶の表面に特定の官能基を導入すると、形状が変化することや、高分子に
対する核剤性能が向上することがわかっている。しかしながら、そのメカニズムについては不
明である。また、一般的に電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などで観察される微結晶は乾燥状
態であり、分散液中でどのような状態にあるかは不明な点が多い。そこで本研究では分子動
力学(MD)計算を用いて、分散液中でセルロース微結晶かどのような状態にあるか、表面構
造によってそれがどのように異なるかを調べることを目的としている。
今年度は、Material Studio 2021 HF1 を用いて、表面に様々な官能基を導入したセルロ
ース微結晶の構造最適化を行い、ポリ-L-乳酸(PLLA)との相互作用エネルギー計算を行なっ
た。はじめに、Amorphous Cell モジュールを用いて作成した PLLA と、セルロース II 型
結晶の表面モデルを構造最適化し、これらを組み合わせて界面モデルを構築した。これ
を用いて、Quench タスクによって MD 計算を実行した。温度およびエネルギーが平衡
に達したことを確認し、ポリマーと表面モデルの全エネルギーから、表面モデルおよび
ポリマーのみの全エネルギーを差し引くことによって、相互作用エネルギーを算出した。
計算の結果、表面官能基にメチル基を導入すると、エネルギー的に不安定な状態になる
場合があることがわかった。現在、計算条件や PLLA の分子量などを変化させ、この結果
の妥当性を含めたさらなる検証を行っている。 ...