パッシブイメージャ画像を用いた不審物検知手法の精度比較に関する研究
概要
1.1. 研究の背景
近年、テロの脅威が増していくにつれ、空港をはじめとする公共交通機関や 2021 年に控えるオリンピックなどの公共交通機関においてセキュリティチェックはますます重要になってきている。しかし、現在のセキュリティチェック方式は時間が著しくかかり、検査渋滞が発生しやすいという問題がある。この問題を解決するためには、自動的に人の流れから数多くの人物を迅速に検査する必要がある。近年、W 帯を使用するレーダにより人物の衣服の上からその人物所持する物体を画像化するセンシング・イメージング技術が確立されつつあり、また、画像認識の分野においてCNN(Convolutional Neural Network)の技術は急速な反転を続けている。
センシング・イメージング技術のうち、微弱な電波を計測覆われている物体の透過率を画像化する技術はパッシブイメージング技術と呼ばれる。また、画像認識分野において画像中のそれぞれの画素が背景および対象物体のどの領域に属するかを判別するタスクをセマンティックセグメンテーションと呼び、セマンティックセグメンテーションで画像を領域分けすることで、対象物体の位置推定も合わせて可能となる。そこで本研究では、W 帯を用いるパッシブイメージング技術により得られるパッシブイメージャ画像に対して CNN を用いたセマンティックセグメンテーションを行うことで画像中の物体を領域分けを行い不審物の位置特定を行うことで、人の流れから自動的に多くの人物を検査するシステムへの足掛かりとする。
1.2. 研究の目的
従来の CNN を用いたセマンティックセグメンテーションでは後述する U-Net や PSPNet を用いられる。そのため、U-Net[1]とその改良モデルおよび PSPNet[2]で実験データを学習させ、その精度を比較することでどのモデルが不審物検知のタスクに向いているかを検証することが、まず本研究の 1 個目の目的である。
また、従来のセマンティックセグメンテーションに用いられるデータセットに比べて、本研究の実験に用いる画像の枚数は全てで 1,008 枚と少なく、実験画像のノイズが大きいという問題がある。そこで実験データの少なさおよび実験画像のノイズの影響を最小化するために、データオーギュメンテーションの工夫および既存のモデルに改良を施すことで精度の向上を目指すのが本研究の 2 個目の目的となる。
1.3. 本論文の構成
本論文は以下の 6 章で構成されている。
第 1 章では、本研究の背景と目的、本論文の構成について記述している。
第 2 章では、セマンティックセグメンテーション、オブジェクト認識およびデータオーギュメンテーションにおける既存研究について記述している。
第 3 章では、既存のセマンティック・セグメンテーショ手法を用いて不審物検知の比較実験を行い、その結果と考察について記述している。
第 4 章では、データオーギュメンテーションとして Mixup を利用して比較実験を行い、その結果と考察について記述している。
第 5 章では、U-Net に Residual Blokc[5]および Dense Block[7]を用いた改良を加えて比較実験を行い、その結果と考察について記述している。
第 6 章では、本研究のまとめおよび今後の課題について記述している。