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大学・研究所にある論文を検索できる 「Experimental determination of electronic structures of superconductors ZrP2-xSex and Nb3Y (Y = Al, Sn)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Experimental determination of electronic structures of superconductors ZrP2-xSex and Nb3Y (Y = Al, Sn)

石坂 仁志 広島大学

2022.03.23

概要

超伝導は、ある温度以下で電気抵抗が消失する大変魅力的な物性である。その発現機構はBCS理論の提唱により基礎的な部分が解明された。しかしながら、高温超伝導体のようにBCS理論に当てはまらない超伝導体も現れている。超伝導理論の一般化のため、より多くの超伝導体の電子構造の観測が求められている。
 本研究では、超伝導理論の一般化の手掛かりを得るため、新奇超伝導体ZrP2-xSexの角度分解光電子分光実験、A15型超伝導体Nb3SnとNb3Alの光電子分光実験による物質内の電子の直接観測により、それら電子構造の研究を行った。


-ZrP2-xSexの角度分解光電子分光研究一
 新奇超伝導体ZrP2-xSexは、2014年に発見された超伝導体で質量がゼロのディラック電子が観測された線ノード半金属ZrSiSeと同じ結晶構造を有している。結晶構造の中に存在する二次元正方格子を構成しているSiをPに置き換えることで超伝導が発現することから、この両者の電子構造を比較は大変重要である。さらにZrP2_xSexは、超伝導とディラック電子が共存する線ノード超伝導体である可能性が実験的に予想されている。線ノード超伝導体は、殆ど発見されておらずその電子構造は未解明な部分が多い。そこで私は、ZrP2-xSexの電子構造を解明するため、波数空間の情報まで得られる角度分解光電子分光実験を行った。
 波数空間マッピングより、5枚のフェルミ面(α-ε)が観測された。(Xとβは菱形の形状で、その中に二枚の円形のフェルミ面が存在した。ZrSiSeではフェルミ面は菱形一枚であったことから、この違いが超伝導発現に寄与していると考えられる。さらに、ひとβの曲線は平行に存在し、エネルギー方向に徐々に近づいていく変化が観測された。特定の波数でエネルギー方向に分解したところ、この変化がaと)3が作りだすディラック交差によるものだとわかった。ディラック交差は、エネルギーと波数の関係を表したときに直線的に交差するバンド分散である。ZrP2_xSexのディラック電子は大変速く、これまでに発見された線ノード物質の中で最速なことが明らかとなった。このディラック交差は、Pの二次元正方格子とノンシンモルフィック対称性を仮定した強結合近似模型計算で再現することができた。本研究により、Pの正方格子によって不純物の影響を受けにくい高速なディラック粒子が超伝導体に出現することを直接観測により実証し、新たな研究物質群を開拓した。

-A15型超伝導体の超伝導ギャップの直接観測一
 A15型超伝導体は、発見から半世紀以上が経過し、現在ではリニア中央新幹線の車体や、核磁気共鳴画像法などの超伝導電磁コイルとして様々な分野で応用されている。その発現機構は、BCS理論で大方説明できるとされ現在ではあまり精力的な研究がされていない。これまでの多くのマクロ測定による研究は、走査型トンネル分光(STS)によるもので、同じくマク口実験である光電子分光実験ではSTSほどの結果が得られないとされてきた。そこで私は、より高分解能な光電子分光装置や用いる光の種類を変え、これまで光電子分光実験では解明できなかったA15型超伝導体の電子構造の解明を目指した。
 まず取り組んだのが、超伝導転移温度(Tc)に大きく関係のある価電子帯の電子構造である。A15型超伝導体の価電子帯は、これまで計算による検証が多く行われていた。しかしながら、Tcの大きさに直結するフェルミ準位における状態密度の大きさは計算ごとに異なっており、実験的な観測がなされていなかった。そこで私は、高X線光電子分光実験により状態密度のピークがフェルミ準位にあることを明らかにした。
 次に取り組んだのが、フヱルミ準位近傍の超伝導状態における電子状態の観測である。これまでの研究では、超伝導発現機構解明に重要な超伝導ギャップの値が数meVに対して装置の分解能がそれ以上で、正確な測定ができなかった。さらに、その超伝導状態における電子状態を解析する関数も定まってはいなかった。そこで私は、真空紫外レーザーを用いた超高分解能光電子分光実験により、その電子状態に詳細な観測を目指した。レーザー光と高純度な試料を用いたことで分解能は1meVを切る値を記録し、A15型超伝導体における最大3meVの小さなギャップ構造の観測に成功した。さらに、これまで光電子分光では観測することができなかった、超伝導発現機構の手がかりとなるPeak-dip-hump構造を光電子分光実験で観測することに成功した。その構造が、既存の解析関数に手を加えた新たな解析をおこなったことで、A15型超伝導体が比較的強い電子格子相互作用を受けていることが明らかとなった。
以上の結果、A15型超伝導のTcが比較的高い理由が、フェルミ準位における高い状態密度と、比較的強い電子格子相互作用によるものだと明らかにした。

 以上のように、ディラック電子が超伝導体に存在する新たな超伝導体の電子状態の解明、A15型超伝導体を光電子分光実験により研究する方法を確立した研究をおこなった。本研究により、既存の超伝導体の研究手法を確立しただけでなく、新しい研究物質群を開拓したことで、超伝導理論の一般化に貢献したと考える。

参考文献

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