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大学・研究所にある論文を検索できる 「A comparison of the required bronchial cuff volume obtained by two cuff inflation methods, capnogram waveform-guided versus pressure-guided: A prospective randomized controlled study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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A comparison of the required bronchial cuff volume obtained by two cuff inflation methods, capnogram waveform-guided versus pressure-guided: A prospective randomized controlled study

山田, 裕子 岐阜大学

2020.12.16

概要

【目的・緒言】
 肺切除術では、術側の肺を虚脱させ、ガス交換を非術側の肺に依存した分離肺換気が必要である。分離肺換気の多くは二腔チューブを気管支挿管することで行われる。二腔チューブの気管支カフ容量は過小であれば術側肺の虚脱不良や非術側肺の換気不全を引き起こし、過量であれば気管支粘膜の損傷を引き起こす。そのため、気管支カフ容量は分離肺換気が可能な必要最小量が望ましいとされる。これまでに二腔チューブの気管支カフ容量を決定する方法はいくつか報告されているが、どの方法が必要最小量の気管支カフ容量を決定できるかは明らかでない。また、開胸によって術側肺が大気圧に開放されると気管・気管支の形態が変化し、分離肺換気に必要な気管支カフ容量は変化する可能性があるが、これまで開胸が気管支カフ容量に与える影響は報告されていない。
 今回我々は日常臨床で使用可能な二つの方法(カプノグラムをガイドにカフ容量を決定する方法とカフ圧計を用いてカフ圧を一定とする方法)を用いて、気管支カフの容量を決定・測定し、どちらがより少ないカフ容量で分離肺換気を施行可能か検討した。また、開胸前後で分離肺換気に必要な最小カフ容量を測定し、開胸がカフ容量に与える影響についても検討した。

【対象と方法】
 岐阜大学倫理審査委員会の承認を経て、2016年11月から2017年5月までに肺切除術が予定された患者64名を対象とした。文書による同意を得た後、対象患者を無作為ランダム化し、カプノグラムをガイドにカフ容量を測定する(カプノ群)32例とカフ圧計を用いてカフ圧を一定とし、カフ容量を測定する(カフ圧群)32例に割付した。二腔チューブのサイズは術前の胸部C Tの左主気管支径を基準に決定した。全身麻酔導入後、開胸側の左右に拘らず二腔チューブを用いて左気管支挿管した。開胸前と開胸後に分離肺換気を行い、シリンジ型カフ圧計AG Cuff ill™ (Covidien Japan)を用いて気管支カフの容量と圧を測定した。
 カプノ群では、非換気側肺からサンプルされたカプノグラム波形が呼吸性変動を示さない最小のカフ容量を測定した。カフ圧群では、カフ圧計を用いて気管支カフ圧を20cmH2 0とした際のカフ容量を測定した。
 統計はSPSS® software programを用いて行い、カフ容量と圧はStudentのt検定を用いて検討した。主要評価項目は開胸前と開胸後の気管支カフ容量とし、有意水準は0. 025とした。

【結果】
 64名のうち8名が除外され、カプノ群27名、カフ圧群29名を検討した。開胸前の気管支カフ容量(平均[標準偏差])はカプノ群で1.00 [0.65] mL、カフ圧群で1.44 [0.59] mL、二群の差の平均は-0. 44 mL、97. 5%信頼区間は(-0. 78, -0.11;P=0. 010)であった。開胸後の気管支カフ容量はカプノ群で0. 65 [0. 66]mL、カフ圧群で1.22 [0. 45] mL、二群の差の平均は-0. 58 mL、97. 5%信頼区間は(-0. 88, -0. 27; P<0. 001)であった。両群とも開胸後は開胸前よりカフの必要量は有意に減少した。カプノ群のカフ圧は開胸前12.08[8.32] cmH20、開胸後6. 22 [7.48] cmH20であった。すべての患者において、術側肺の虚脱は手術の中断なく達成された。

【考察】
 カプノグラムを用いて測定した気管支カフ容量は、カフ圧を20 cmH20に固定した時のカフ容量と比較して、開胸前後ともに有意に少なかった。カフ容量が過量であるとカフ圧が気管支粘膜の毛細血管圧を凌駕し、気管支粘膜の虚血や浮腫を引き起こすため、カフ圧は小さい方が良い。分離肺換気が可能な最小のカフ圧は20cmH20とされているが、気管支粘膜の毛細血管圧は低血圧などの臨床状況により変化するため、必要最小量の気管支カフ容量を決定することが重要である。これまで、分離肺換気に必要な気管支カフ容量を決定する方法はいくつか報告されているが、最適な方法は明確でなかった。しかし、本研究ではカプノグラムを用いてカフ容量を滴定することで、必要最小量のカフ容量の決定が可能であった。また、従来言われている20 cmH20より少ないカフ圧で分離肺換気が可能であったことから、カプノグラムを用いたカフ容量の決定は不必要で過剰なカフ注入を避け、気管支粘膜の損傷を予防できる可能性が示唆された。
 開胸後は開胸前に比較して、両群とも必要な気管支カフ容量は減少した。気管・気管支は弾性・可塑性に富み、胸腔が大気圧に開放され、さらに体位により術側の胸腔臓器の自重が非術側の胸腔に加わることで気管・気管支の形状が変化すると報告されている。本研究でも、開胸後の気管・気管支の形態的変化がカフの必要量減少に寄与した可能性がある。過量なカフ容量による気管支粘膜への損傷を防ぐために、開胸後に力フ容量を再調整する必要があることが示唆された。
 カプノグラムを用いた方法は、麻酔中の日常のモニターであるカプノグラフィ以外の特別な装置は不要で、簡便にどの患者に対しても臨床使用が可能である。リアルタイムに分離肺換気に必要な最小量のカフ容量を滴定し、過剰なカフ圧を防ぐことから周術期の患者の安全確保に貢献すると考えられる。

【結論】
 カプノグラムを用いて気管支カフ容量を決定する方法は、カフ圧20 cmH20を指標とした方法よりも少ないカフ容量で分離肺換気が可能であった。気管の粘膜損傷を避けるには、カプノグラムをガイドにカフ容量を決定した方がよいと考えられる。開胸に伴い必要な気管支カフ容量は減少するため、開胸後にカフ容量を再調整する必要がある。

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