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大学・研究所にある論文を検索できる 「作物外観の画像解析に基づく定量化とそのゲノムワイド多型との関連の研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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作物外観の画像解析に基づく定量化とそのゲノムワイド多型との関連の研究

坂本, 莉沙 東京大学 DOI:10.15083/0002006862

2023.03.24

概要





















坂本

莉沙

植物の外観は農作物の収量や品質を左右する重要形質の一つである。特に製
品となる器官の外観は、輸送・加工効率や消費者の嗜好などを通して市場価格
に直接的に影響する。植物外観の遺伝的改良を効率的に行うには、その変異を
定量化し、解析を行う必要がある。しかし、そのためには、高次元特徴である
外観を多次元的・客観的に定量化すること、遺伝解析に適した定量化法や定量
化されたデータの遺伝解析法が確立されていることが重要である。申請者は、
このような視点から、作物の重要形質である外観について、画像解析を用いた
定量化法、および、定量化された外観の遺伝解析を行うための手法の開発・提
案を行った。
第 2 章では、輪郭形状の定量化法の比較が行われた。申請者は、ソルガム種
子の輪郭形状を解析対象として、生物の輪郭形状の記述に用いられる楕円フー
リエ法と準標識点法について、大きさ・向き・計測開始点に対する標準化法の
違いも含めて比較を行った。その結果、形状記述法の違いは定量化結果にほと
んど影響を与えず、むしろ、標準化法の違いが結果に影響をあたえることを示
した。また、定量化された輪郭形状とマーカー遺伝子型の関連を解析し、ゲノ
ムワイドアソシエーション研究の結果やゲノミック予測の精度が標準化法の違
いにより変化することを明らかにした。標準化法の違いは生物学的相同性の定
義と直結しているため、解析しようとする変異に対して適切な方法を選択すべ
きであると結論した。
第 3 章では、画像解析で定量化された多形質を解析するための QTL 解析手法
に関する研究が行われた。申請者は、高次元特徴である外観を網羅的に計測し、
そこから得られる数百次元の特徴を並列して解析する QTL 解析手法、および、
得られた結果の可視化法を提案した。これらの手法を、ソルガムの組換え近交
系の葉形態に適用し、その有用性を明らかにした。まず、主茎上の全ての葉の
画像から画像解析により 490 特徴が定量化された。次に、得られた特徴に対し
て提案手法が適用され、複数特徴に対して効果を表す 16 QTL が検出された。な
お、全特徴を主成分分析で要約した場合には 7 QTL が検出され、提案手法によ
り検出力が向上する可能性が示唆された。さらに、wordcloud とグラフ表現で

QTL の効果を可視化する手法が提案され、同手法により多面発現パターンを視覚
的に表現できることが示された。
第 4 章では、色の変異の定量化とその QTL 解析が行われた。色の定量的評価
には、一般に L*a*b*や RGB の色空間が用いられるが、色の定量化法の違いが QTL
解析に与える影響について詳しく検討された例はなかった。申請者は、ソルガ
ムの組換え近交系の種子色を複数の手法を用いて定量化し、QTL 解析を行った。
定量化された色に基づくクラスタ解析の結果、着色の有無が 3:1 に分離し、2 つ
の独立した主働遺伝子に支配されている可能性が示唆された。一方、着色程度
は淡褐色から濃褐色までの連続的変異を示し、量的形質と考えられた。QTL 解析
の結果、いずれの定量化法でも検出される QTL と、特定の定量化法でしか検出
されない QTL があることが示された。また、QTL 間には質的なエピスタシスが存
在することも示唆された。QTL の効果の可視化法についても検討し、エピスタシ
スが存在する場合は、交互作用を考慮した可視化が必要であることを示した。
第 5 章では、3 次元形状の簡易な定量化法の提案とそれを用いた遺伝解析が行
われた。2 次元形状を定量化する手法を 3 次元形状に適用することは難しく、か
つ、
3 次元曲面の計測コストは 2 次元輪郭の計測に比べて高い。そこで申請者は、
作物器官の 3 次元形状の計測と評価を簡易に行うために、3 方向から得られた 2
次元輪郭をもとに 3 次元形状を定量化する手法を提案した。ダイズ遺伝資源の
種子の 3 次元形状変異が定量化され、定量値と従来の分類の比較、マーカー遺
伝子型との関連の解析が行われた。その結果、同手法により種子の 3 次元形状
変異が定量化でき、定量化された形状特徴の意味を視覚的に表現できることを
示した。また、定量化された形状特徴とカテゴリに分類された種子形状を比較
し、種子形状をカテゴリに分類することは不適当であることを示した。さらに、
マーカー遺伝子型との関連の解析を行い、定量化法の有効性と 3 次元形状のゲ
ノミック選抜の可能性が示された。
第 6 章では、得られた結果の総括と議論が行われた。
本論文で開発・提案された一連の手法は、各々の特徴がもつ特性に応じて開
発・提案されたものであり、形、色、模様など、様々な特徴として観察される
作物の外観の遺伝解析を行うための示唆を与えるものである。これらの研究成
果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審査委員一同は本
論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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