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大学・研究所にある論文を検索できる 「がん患者における続発性リンパ浮腫の重症化予防に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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がん患者における続発性リンパ浮腫の重症化予防に関する研究

井沢, 知子 大阪大学

2021.09.24

概要

【背景】
がん治療後に生じる続発性リンパ浮腫(以下リンパ浮腫)はリンパ節郭清術によるリンパのうっ滞によって生じる浮腫であり、重症化すると長期に渡りがん患者の生活に支障をきたす.リンパ節郭清を行ったがん患者はリンパ浮腫のリスク状態にあるため、未発症の段階から日常生活の中でリンパ浮腫の予防に関するセルフマネジメントスキル(SMスキル)を行い、注意を払いながら生活する必要がある.リンパ浮腫が重症化して非可逆性の段階になると、重だるさや外見の変化をきたし、圧迫や運動、用手的リンパドレナージ、スキンケアを組み合わせた複合的治療(CDT)の実施を余儀なくされる.リンパ浮腫の重症化予防は患者にとって非常に重要であり、本研究では未発症の段階(研究1)から非可逆性の段階(研究2)に至るまでのがん患者におけるリンパ浮腫の重症化予防に資する看護支援について検討した.

【研究1】
目的:我が国ではリンパ浮腫の重症化を予防するためにリンパ節郭清術後の患者教育(予防教育)が行われている が、予防教育は術直後や退院後1か月の時期に実施されているため、その後のSMスキルの実施は患者に委ねられている.下肢は常に過重がかかり、リンパ浮腫を発症すると重症化しやすいため、婦人科がん患者は未発症の段階からSMスキルを継続的に実施することが重要である.リンパ浮腫の発症リスクが高まる術後12-18か月の時期にある婦人科がん患者のSMスキルの実態と関連要因を明らかにすることを目的とした.

方法:予防教育を受けた婦人科がん患者69名を対象に、術後12-18か月の時期に自記式質問紙調査を行った.新井らが開発したリンパ浮腫SMスキル尺度の下位尺度「浮腫みの観察」「体調の維持」「悪化予防」の11項目を用いて調査した.SMスキルの関連要因として、患者背景、がん治療歴、予防教育の理解度や回数を分析した.

結果:予防教育の理解度は87%であったが、SMスキルの実施率は「浮腫みの観察」19%「体調の維持」39%「悪化 予防」29%であった.実施率は最も低かったのは「浮腫みの観察」であり、実際に触れて浮腫の広がりや程度を 確かめるセルフモニタリング技術に関する項目であった.関連要因の分析では、放射線治療歴がある患者は「体調の維持」スコアが有意に低い結果であった(p=0.046).また、抑うつ状態の患者は「悪化予防」スコアが低い傾向にあった(p=0.050).予防教育とSMスキルの間には有意な関連が見られなかった.予防教育を理解していたとしても術後12か月以上経過した患者がSMスキルを実施している割合は低く、予防教育の見直しとSMスキルの実施が困難な患者への継続的な看護支援の必要性が示唆された.

【研究2】
目的:非可逆性のリンパ浮腫に進行した患者は、リンパ浮腫の重症化を予防し生活の質を維持するためにCDTのアドヒアランスを獲得することが必要だが、CDTは複雑で苦痛を伴うため主体的な継続が難しい.CDTのアドヒアランスの獲得を支援するための看護支援の在り方を検討するために、非可逆性リンパ浮腫患者がCDTのアドヒアランスを獲得していくプロセスを明らかにすることを目的とした.

方法:診療記録からCDTに関する行動を日々取り入れ習慣化している患者10名を選定し半構造化面接を実施した.
CDTに取り組み始めてから習慣化に至るまでの経過を聴取し内容分析法を用いて質的帰納的に分析した.

結果:患者がCDTのアドヒアランスを獲得するプロセスは、「知覚」「動機づけ」「実践」「医療者の存在」「障壁」の5つに集約された.CDTのアドヒアランスの獲得が開始される様相において、患肢が楽になるという「知覚」がCDTに取り組もうという患者の「動機づけ」につながり、CDTを「実践」していた.CDTの実施が定着する様相には、実践内容の確認や承認、精神的サポートなどの継続的な支援を行うパートナーとしての「医療者の存在」が影響していた.

【総合考察】
本研究によって、リンパ浮腫の重症化予防のためには、患者が身体の変化を捉えられるような看護援助を行うこと、また患者を継続的に支援する看護体制の必要性が重要であることが示唆された.予防教育においては、知識の提供だけでなく、患者が実際に自分の身体に触れて浮腫の広がりや程度を確かめるセルフモニタリング技術を習得できるような支援を取り入れることが必要であると考える.さらに、身体の変化を察知して体調の維持や悪化の予防が行えるよう、放射線治療歴や抑うつ状態のアセスメントを行い、支援につなげることが望ましい.非可逆性の患者には、CDTの主体的な実施が困難な状況を理解し精神的サポートを行うと共に、実施できていることを承認しながら患者-看護師間のパートナーシップを形成する支援が必要である.リンパ浮腫は長期にわたる経過をたどるため、患者の主体的な取り組みを支援しながら看護師が窓口となって継続的に支援することが重要である.本研究で得られた知見は、臨床応用することにより、リンパ浮腫の重症化予防の看護支援の発展につながると期待された.

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