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大学・研究所にある論文を検索できる 「食道扁平上皮細胞におけるSuprabasinを介した転写因子Sox2による細胞増殖能と血管新生能亢進に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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食道扁平上皮細胞におけるSuprabasinを介した転写因子Sox2による細胞増殖能と血管新生能亢進に関する検討

高橋 貴一 東北大学

2020.03.25

概要

【背景・目的】発癌早期段階である表在型食道癌は、上皮内血管の新生と形態変化に基づく内視鏡 narrow band imaging 観察によって早期発見が可能となり、多くは内視鏡治療が行われている。転写因子 Sox2 は進行食道扁平上皮癌を含む多くの癌で発現増幅が認められ、癌増殖・進展に関与している。Suprabasin は近年同定された重層扁平上皮に特異的に発現している分泌蛋白であるが具体的な生理活性や分子生物学的な発現誘導メカニズムについては不明である。そこで、Sox2 が食道扁平上皮癌の発癌早期の段階において、細胞増殖や血管新生にどのような分子生物学的メカニズムで作用しているか、Suprabasin に着目して明らかにすることを目的とした。

【方法】ヒト表在型食道癌における Sox2 の発現を免疫組織化学で、さらに TissueFAXS®を用いて定量化した。in vitro の検討で、ヒト正常扁平上皮培養細胞株 Het-1A と各ヒト食道癌培養細胞株の Sox2 の発現をウエスタンブロット法と qPCR 法を用いて検討した。Doxycyline 添加により Sox2 を発現誘導する Het-1A細胞 (HetSox2)を樹立し、MTS およびスフェロイドアッセイで細胞増殖能と造腫瘍能を、細胞遊走および発芽アッセイで血管新生能を評価した。さらに Sox2 の発現増幅によって Suprabasin が発現誘導することを qPCR 法、ルシフェラーゼアッセイ、ChIP 法で確認した。また、細胞増殖作用と血管新生作用、さらに AKT およびMAPK 細胞内シグナル系の活性化を検討した。最後にヒト表在型食道癌における Sox2、CD34、 Suprabasin の発現の相関を免疫組織化学的に検討した。

【結果】ヒト表在型食道癌における Sox2 の発現は免疫組織化学的には非癌部と比べて平均 1.37 倍と有意に増強していた。また、各ヒト食道扁平上皮癌細胞株における Sox2 の発現はヒト正常食道扁平上皮細胞株 Het-1A に比べて増強していた。HetSox2 細胞を用い Sox2 を強制発現したところ、MTS アッセイでは 1.26倍、スフェロイドアッセイでは 2.21 倍と、有意な細胞増殖能および造腫瘍能の亢進を認めた。HetSox2 細胞の培養上清を用いると、細胞遊走アッセイでは 2.26 倍と有意な血管内皮細胞 HUVEC の遊走を、発芽アッセイでは 1.78 倍と有意なスプラウトの伸長を認め、Sox2 誘導によって HUVEC の血管新生が誘導されることが示された。Sox2 を誘導した HetSox2 細胞において分泌蛋白 Suprabasin の発現は、2.58 倍と有意に亢進しており、ルシフェラーゼアッセイと ChIP 法を用いた検討で、Sox2 が直接 Suprabasin プロモーター領域-1566 位/-1559 位に結合することが判明した。Suprabasin を添加した Het-1A 細胞では、MTS アッセイで 1.18 倍と有意な細胞増殖能の亢進を認め、HUVEC においては、細胞遊走アッセイで 5.00 倍、発芽アッセイで 2.28 倍と有意な血管新生能の亢進を認めた。また、Suprabasin 添加により AKT シグナルおよび p38 MAPK シグナルの活性化を認めたが、各シグナル阻害剤を用いた細胞遊走アッセイにより血管新生はAKT シグナルの活性化によるものと考えられた。最後に、Sox2 の発現が増強した表在型食道癌ではCD34陽性の毛細血管が有意に増生し、Suprabasin の発現が有意に増強していることが判明した。

【結論】食道扁平上皮細胞においては、Sox2 の発現増強によって、Suprabasin の発現が誘導され、血管新生や細胞増殖を介して発癌を促進することが示唆された。