リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Molecular ecological studies on the effect of viral infection on abundant marine prokaryotes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Molecular ecological studies on the effect of viral infection on abundant marine prokaryotes

Tominaga, Kento 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23236

2021.03.23

概要

海洋において原核生物感染性ウイルスは、宿主への感染・溶菌を介し物質循環に影響を及ぼす。ウイルス感染は宿主密度に依存するため、原核生物の中でも優占種への影響が大きいと予想される。一方、これらの優占種は系統ごとに異なる増殖戦略を持ち、増減の激しいr型と常在するK型に大別されるが、K型優占種はウイルス感染を回避している可能性も指摘されてきた。しかし、優占種はその多くが未培養であるため、系統や生存戦略の異なる種ごとのウイルス間相互作用への理解は限定的だった。そこで本論文では、まず海洋Bacteroidetes門細菌の未分離優占種とウイルスの相互作用を例として、宿主とウイルスのホモログ遺伝子を指標とした環境メタウイルスゲノムの宿主予測法を構築した。続いて本宿主予測法を用い、大阪湾にて2年間、網羅的に原核生物とウイルスの動態を調査し、系統や生存戦略の異なる原核生物の優占種とウイルスの間の密度依存的な相互作用を明らかにした。

1. 未分離宿主細菌ゲノムを用いた海洋Bacteroidetes門細菌感染ウイルスの探索
 Bacteroidetes門細菌は、海洋原核生物の中で3番目に存在量が多い系統である。しかし、その海洋優占種の分離例は少なく、それらに感染するウイルス分離例も1種に限られる。本論文では、新規の宿主予測法の構築を行い、宿主未知の1,420個の未分離環境ウイルスゲノムから、本門細菌感染ウイルス由来のゲノムを探索した。まず、メタゲノム由来の未分離の本門細菌優占種の518ゲノム(Metagenome assembled genome, MAG)と環境ウイルスゲノムの間の塩基配列相同領域に基づき、新規13ゲノムを含む26ゲノムを本門細菌感染ウイルス由来と予測した。次に、塩基配列よりも相同領域の検出感度が高いアミノ酸配列(ホモログ)を、本門細菌と既報ウイルスまたは環境ウイルスのゲノムの間でそれぞれ検索した。既報の本門細菌感染ウイルス分離株における本門細菌ホモログの保有率は平均35.8%であり、既報の他系統感染性ウイルス分離株における平均保有率1.0%を有意に上回った。そこで他系統感染性ウイルスの上限値8%を閾値と設定したところ、計311個の環境ウイルスゲノムが閾値を上回ることを見出し、上記と合わせ計321個を本門細菌感染ウイルスのゲノムとして同定した。これらには宿主不明水圏優占ウイルスとして報告されていたFar-T4系統や、全球的海洋調査において平均相対存在量1%を上回る8属の海洋優占ウイルス系統が含まれた。

2.大阪湾の優占海洋原核生物へのウイルス感染の影響の解析
 上記で確立した手法を用い、大阪湾において、約2年間にわたり原核生物とウイルスの動態を網羅的に比較し、系統・増殖戦略の異なる原核生物の優占種のウイルス被感染の有無と、それらの優占種ごとのウイルスとの相互作用の様式の差異を検証した。16SrRNA遺伝子(V3-V4領域)のアンプリコンシーケンスにより調査期間の原核生物群集動態を評価し、配列相同性99%に基づき35, 626 Operational taxonomic units(OTUs)を検出した。これらのうち、効率的なウイルス感染が起こる最低細胞密度(約104細胞/mL)を1試料でも上回った74OTUsを原核生物の優占種と定義した。ウイルスメタゲノム解析によりウイルス種に相当する計5,226コンティグを構築し、1.の手法に基づき計2,658コンティグに対して宿主を同定できた。Bray-Curtis群集類似度の変化に基づき群集の経時変化を比較すると、各群集はいずれも季節変化と年周期性を示し、両者の変動に有意な正の相関が認められた。ウイルスの群集組成変化は原核生物よりも急速に起こったが、各月のウイルス群集組成比は原核生物組成比と類似した。以上の結果は原核生物の優占種にウイルス感染が生じていることを示唆した。さらに、共起ネットワーク解析により、優占群集(原核生物の優占種74OTUsから塩基多型に基づき抽出した114個の種内個体群と、宿主が同定できた2,658ウイルスコンティグ)の中から組み合わせを抽出した。全体の88.6%の原核生物個体群に対し1種以上のウイルス(最大で359ウイルス種)との共起性が検出され、計6,423個の組み合わせが抽出された。いずれの組み合わせでも、宿主の優占時にウイルスが増加した。一方、r型優占個体群(例:Flavobacteria)では、特定の複数のウイルスが宿主と共起的に増減したが、K型優占個体群(例:SAR11)では、特定のウイルスが常在せず、相互作用するウイルス種が経時的に変化した。以上から、宿主の系統や生存戦略に関わらず密度依存的にウイルス感染が起こり、その相互作用の様式は系統や増殖戦略ごとに異なることが明らかとなった。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る