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大学・研究所にある論文を検索できる 「Physiological and ecological studies on life history evolution of amphidromous goby fishes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Physiological and ecological studies on life history evolution of amphidromous goby fishes

Oto, Yumeki 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23040

2021.03.23

概要

生物の新規環境への進出の中で、海洋生物の淡水域への進出は過去に何度も繰り返され、種や生活史の多様化に貢献してきた。様々な海洋起源の動物の系統では仔魚・幼生期以外を淡水域で過ごす両側回遊種が進化し、多様化している。また、両側回遊種の陸封化は、淡水種への分化やその後の淡水域における多様化の引き金になりうるため、淡水種の多様性の起源を理解する上で重要な現象である。しかし、両側回遊性を介した淡水進出に伴う生活史進化や、これを特徴づける生理的要因の理解は不足している。本研究では、両側回遊性の進化初期において各生活史段階がどのような順序で淡水進出したのか、またそれを可能とした、あるいは制限した生理特性はどのようなものかを明らかにすることを目的とした(第1章)。

ハゼ科ウキゴリ属は8種の海水、汽水種の他に、少なくとも3種の両側回遊種と4種の淡水種を含み、本研究の目的を達成する上で魅力的な系である。第2章では、両側回遊性の進化初期におけるハビタット移行の順序を推定するため、祖先環境である汽水域へ大きく依存する両側回遊種のスミウキゴリにおいて、成魚の生息場所と産卵場所の分布を調査した。本州の2河川のいずれにおいても、成魚の生息は非産卵期に淡水域に偏っていたが、ほとんどの産卵は汽水域で観察された。この結果は、繁殖に関わる生理形質が、成魚の生理機能と比較して進化的に保守的であることを示唆する。

第3章では、スミウキゴリの生活史において淡水域への依存度が最も高い成魚期の生理特性を明らかにするため、本種成魚を様々な塩分条件で室内飼育し、生理コストを比較した。実験魚は淡水域で採集されたが、淡水中での無給餌下の体重減少率は1/3海水や2/3海水よりも有意に大きかった。このように、本種成魚にとっての最適塩分は体液の浸透圧(1/4−1/3海水)より高く、他の典型的な通し回遊魚が示すような効率的な淡水型の浸透圧調節機 構を発達させないまま、淡水域に生息することがわかった。

第4章では、海から淡水域へ遡上中のスミウキゴリ稚魚の塩分選好性を明らかにした。室内で塩分選択実験を行ったところ、本種稚魚は淡水より2/3海水や海水を好む行動を示した。このように、本種は高塩分への選好性に反し、海から淡水域へ遡上することが示唆された。第3、4章の結果を総合すると、両側回遊性の初期進化において、成魚や稚魚は柔軟な生理機構を駆使し、生理的負荷の大きくかかる淡水域に侵入・生息することが示唆された。こうした淡水域での生理コストは、低い捕食圧や豊富な餌資源などで補償されると考えられる。

第5章では、両側回遊性において海洋生活を営む唯一の生活史段階である仔魚の淡水進出を制限する生理的要因を明らかにするため、回遊パターンの異なるウキゴリ属の両側回遊種間で、仔魚の淡水適応を比較した。室内実験により、仔魚の淡水耐性は陸封しないスミウキゴリで最も低く、ついでシマウキゴリ、そして陸封集団を持つウキゴリの順で高かった。次に、各種において淡水と海水に順化させた仔魚の遺伝子発現を網羅的に比較した。この結果、水の排出を担うAquapor in-3や、塩類の取込を担うSLC13の遺伝子の海水に対する淡水中での発現量は、他種よりウキゴリで有意に大きく上昇していた。このように、いくつかの浸透圧調節関連遺伝子の発現量の変異が陸封の鍵を握ることが示唆された。

第6章では、第2−5章で得られたウキゴリ属の生活史と生理特性に関する知見が、海洋生物の淡水進出に伴う生活史進化や、これに関わる生理的要因を理解する上でどのような貢献を果たすかを議論した。

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