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大学・研究所にある論文を検索できる 「Co-Expression and Localization of Angiotensin-Converting Enzyme-2 (ACE2) and the Transmembrane Serine Protease 2 (TMPRSS2) in Paranasal Ciliated Epithelium of Patients with Chronic Rhinosinusitis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Co-Expression and Localization of Angiotensin-Converting Enzyme-2 (ACE2) and the Transmembrane Serine Protease 2 (TMPRSS2) in Paranasal Ciliated Epithelium of Patients with Chronic Rhinosinusitis

川住 知弘 広島大学

2022.09.20

概要

1. はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスである SARS-CoV-2 はアンギオテンシン変換酵素Ⅱ型(ACE2)とⅡ型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)を侵入経路ととするため、宿主細胞における ACE2 と TMPRSS2 の共発現は感染の必要条件である。ウイルス受容体の発現量は組織ごとに異なり、特に鼻腔上皮で ACE2 と TMPRSS2 共に発現が豊富であるとされる。COVID-19 の重症化因子である慢性閉塞性肺疾患(COPD)では ACE2 と TMPRSS2 の発現が亢進するとされ、Ⅰ型炎症による両分子への影響が示唆される。鼻副鼻腔領域の炎症性疾患として代表的な慢性副鼻腔炎(CRS)はⅡ型炎症を主体とする好酸球性副鼻腔炎(ECRS)とⅠ型炎症を主体とする非好酸球性副鼻腔炎(non-ECRS)に分類され、それぞれの異なる病態生理がウイルス受容体の発現に与える影響は解明されていない。 本研究では、慢性副鼻腔炎患者における ACE2 と TMPRSS2 の遺伝子発現と蛋白質分布を評価した。

2. 対象と方法
本施設で内視鏡下副鼻腔手術を行った慢性副鼻腔炎患者 69 例を対象とし、ECRS 群 38 例、non-ECRS 群 31 例に分類した。また同時期に手術した副鼻腔炎のない 25 例を対照群とし た。ECRS は JESREC スコアを用いて診断し、術前 4 週間よりステロイド使用を中止した。術中採取した副鼻腔粘膜を背景疾患ごとに分類し、ACE2 と TMPRSS2 と炎症性サイトカイン(IFN-γ, TNF-α, IL-1β, IL-13)の mRNA 発現量を RT-PCR 法(TaqMan アッセイ法)を用いて測定するとともに免疫組織化学染色法(酵素抗体法、蛍光抗体法)を用いて、両分子の副鼻腔粘膜上皮における局在を細胞レベルで評価した。また HE 染色を用いて各組織の病理所見と好酸球浸潤の程度を評価した。蛍光抗体法で染色した切片の評価に共焦点顕微鏡を使用した。統計処理に関しては、群間比較に Mann-Whitney の U 検定、Kruskal-Wallis 検定を用い、質的データにはカイ二乗検定を用いた。相関係数には Spearman の相関係数を用いた。

3. 結果
各群間の臨床背景(年齢、性別、BMI、喫煙歴)に有意差はなく、ECRS 群では他群と比較して喘息の罹患率、組織・血中好酸球数、CT スコアが有意に高かった。Non-ECRS 群は ECRS 群と比較して ACE2 と TMPRSS2,TNF-α の mRNA が有意に高発現していた。IL-13 は ECRS 群で有意に発現が亢進し、組織中好酸球数は ECRS 群で有意に多かった。IFN-γ, IL-1β は各群間で有意差を示さなかった。ACE2 と TMPRSS2 の mRNA 発現量は IFN-γ, TNF-α と有意に正の相関を示し、組織好酸球数と負の相関を示した。IL-1β と TMPRSS2 は正の相関を示した。他のサイトカインにはあきらかな相関関係は認めなかった。また ACE2 と TMPRSS2 は有意に正の相関を示した。酵素抗体法では ACE2 と TMPRSS2 が主に線毛上皮細胞に局在しており、両分子共に ECRS群と比較して non-ECRS 群で高発現を認めた。蛍光抗体法では ACE2 と TMPRSS2 が線毛上皮細胞に共局在していることを確認した。

4. 考察
SARS-CoV2 はウイルス表面のスパイク蛋白が ACE2 に接着し、セリンプロテアーゼである TMPRSS2 によって開裂活性化されることで宿主細胞と膜融合し、感染が成立するとされる。つまり両分子の共発現はウイルス感染に必須であり、その発現量はウイルス感受性に影響するとされる。In vivo の研究では、TMPRSS2-KO マウスに SARS-CoV-2 を感染させても重症化しないとされ、疫学的にも、ACE2 と TMPRSS2 の発現が低い小児は成人と比較して、ウイルス感受性が低いとされている。ウイルス侵入因子は患者背景によっても発現変化を来すとされる。基礎疾患を有する COVID- 19 患者は重症化しやすいとされる。重症化因子の一つである COPD は喫煙により惹起され、気道における CD8 陽性 T 細胞の増殖が関連し、Ⅰ型炎症由来のサイトカインが血中や肺胞洗浄液中で高発現する。COPD 患者の肺組織では、ACE2 と TMPRSS2 の発現が亢進するとされ、Ⅰ型炎症が両分子の発現を亢進させることが示唆される。Non-ECRS は同様にⅠ型炎症由来の慢性炎症を来す疾患であり、本研究では ECRS と比較して ACE2 と TMPRSS2、TNF-α が共に高発現していた。同じⅠ型炎症由来のサイトカインである IFN-γ や IL-1β が両群間で有意差を認めなかった理由としては、CRS の病態には異なるエンドタイプが混在して関与しているためと考えられる。実際 in vivo の研究では、鼻粘膜培養細胞を IFN-γ で刺激すると、ACE2 の発現が亢進すると報告されている。本研究でも、 ACE2,TMPRSS2 共に IFN-γ, TNF-α と正の相関をしめしていた。しかし、Ⅱ型炎症により両分子への影響は様々な報告があり、明確な見解はない。本研究では ACE2、TMPRSS2 と IL-13 の間にあきらかな相関関係は認めなかったが、組織中の好酸球数は負の相関を示しており、好酸球性炎症は両分子の発現制御に関与していると考えられる。 SARS-CoV-2 は気道分泌物を介して伝播するとされ、気道上皮がウイルスの侵入経路と考えられている。RNA シークエンスを用いた既知の報告では、気道の中で鼻腔上皮が最も ACE2 と TMPRSS2 の発現が亢進しているとされる。さらに ACE2 と線毛のマーカーである α-tublin の共発現を示した報告があり、本研究では TMPRSS2 が主に線毛上皮細胞に発現していることを示した。ACE2 と TMPRSS2 は線毛上皮に共発現し、気道におけるウイルスの侵入門戸であると考える。また炎症のタイプによって両分子が同様に発現変化を来していることから、同様の発現制御機構の存在を示唆していると考えた。

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