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高速・高精度な電磁ノイズ予測技術と事業化戦略

末永, 寛 スエナガ, ヒロシ 神戸大学

2022.03.25

概要

今後、化石燃料を用いた新車販売の規制が各国で始まり、車の電子化が加速する。これに伴い、車両内の電磁環境は今まで以上に悪化し、車載機器が電磁波ノイズで誤動作を起こさないための、EMC(電磁環境両立性)の設計難易度はますます高まる。本研究では、現状の車載機器のEMC設計において手戻りを発生させている課題を分析し、その課題を解決するため、高速・高精度なシミュレーション技術を開発した。開発した技術をベースに、安全で快適な車社会の実現に貢献を目的とした、EMC設計支援事業の戦略を作成した。以下、各章の要約を記す。

■序章
車の大変革(CASE: Connected、Automated、Shared、Electric)により、車両内にこれまで以上に数多くの車載機器が高密度に実装されるが、これら車載機器が誤動作なく、安全に機能させるためのEMC設計の重要性が増す。一方で、現状の車載機器の開発では、EMC設計における手戻りは多く、開発コストと開発期間を増加させている。この要因を分析したところ、EMC品質を設計段階で十分に作りこむために必要となる、EMCシミュレーション技術を進化させることが必要であること、及び車載機描の開発工程全体に渡って、EMC設計を推進できる人材が不足していることを明らかにし、これら2つの課題を解決するためのプレークスルーを検討した。シミュレーション技術の進化の課題に関しては、半導体マクロモデルを用いた、車載機器のノイズ源である半導体部品のノイズ挙動をまるごと再現する高速・高精度なシミュレーション技術の開発が必婆であることを示した。また、EMC設計を推進するための人材開発の課題に閲しては、車載機器の設計段階から試作後の評価段階まで関与するシミュレーション技術者を、EMC設計推進の人材(EMCコーディネータ)として育成することが有効であることを明らかにし、それらをもとに、EMC設計支援事業のコンセプトを策定した。

■第2章 高速・高精度なノイズ予測技術の開発
序章で述べたシミュレーション技術のプレークスルーに従い、車載機器のEMCシミュレーションに必要な半溝体モデルとして、半導体チップ内部の膨大な数のトランジスタ素子を忠実にモデル化するのではなく、半導体内部の電源変動を領域ごとに電流源モデルを用いて縮退表現した半導体マクロモデルを用いたEMCシミュレーション技術の確立に取り組んだ。取り組みにおいて、車載機器を模擬した評価基板を開発し、2つの半導体を評価基板に実装し、片方の半導体内部のノイズ発生回路を動作させ、もう片方の半導体内部へのノイズ干渉レベルを実測した。半導体マクロモデルを用いたシミュレーションにおいては、実測結果を再現するため、半導体モデル以外の構成要素(評価基板、半導体パッケージ、各種電子部品)のモデル化条件、及びシミュレーションの条件設定をチューニングし、実測を再現するシミュレーション技術(PS-EMCSim技術)を確立した。さらにそのシミュレーションが、2時間程度で実行できることを確認した。このシミュレーション技術を実際の車載機器に適用することで、車載機器のノイズ源である半導体のノイズプロファイルを再現し、試作後の実動作で発生するノイズ現象を、設計段階のシミュレーションで予測することが可能となった。

なお、将来展望としては、車載機器のEMC認証試験環境をシミュレーション空間に構築し、設計段階においてEMC認証試験の良否を予測し、認証試験を合格するための設計条件を設計に織り込むことを可能とする技術開発を目指すが、計算機能力にも依存することから数年先での実現性は低い。このため、ビッグデータをもとにノイズ認証試験結果を予測する機械学習モデルの開発を並列して進めてゆくことが、現実的なアプローチと考えた。そのための第ーステップとして、車載機器表面で取得可能なノイズデータをもとに、EMC認証試験条件でのノイズ特性を予測する、機械学習モデルの構築を開始した。PS-EMCSim技術と、EMC認証試験サイトでのノイズ試験結果を予測する機械学習モデルを連携することで、車載機器丸ごとの高精度ノイズシミュレーション結果からEMC認証試験結果の良否を設計段階で予測することを目指していく。

■第3章 事業戦略
第2章で開発した、高速・高精度なEMCシミュレーション技術、及び開発中のEMC認証試験結果を予測する機械学習モデルをコア技術とした、EMC設計支援事業の戦略をまとめた。

ただし、事業戦略の詳細については今後の事業展開のため、本稿では記載せず、参考論文として提出した、イノベーションストラテジー研究成果報告書(非公開)に記載した。このため、本稿では、事業化検討の士台となる、外部環境の分析を、PEST分析、及び5Force分析の手法を用いて行った結果と考察、及び車載機器のEMC設計支援の市場規模(設計手戻りのロスコストの業界規模)の見稲もりから、本事業体の取り組みの価値までを記載し、事業戦略の具(本論に関わる、技術、知財、財務の詳細検討は記載していない。

PEST分析の結果、政治・規制面では、準拠すべきEMC規制が厳格化・広範囲化し、経済面では、車載業界の市場成長は今後も続き、EMC設計支援のニーズが高まりを見せる。社会面では、EMC品質設計の熟練技術者がリタイアの時期に来ている一方で、現役世代でEMCの全体最適設計ができる人材が枯渇してきている。技術面では、開発効率改善に対して、シミュレーションに代表されるデジタルツールを活用した開発加速が求められていることが分かった。これらを踏まえると、本研究で事業化を目指している、EMC品質設計支援事業は、車載機器メーカー、及びその先の車両メーカーやエンドユーザに対し、大きな価値提供を実現できることが分かった。

5フォース分析では、事業環境の脅威となる要素を3つ特定した。1つ目は、売り手である半尊体メーカーによる半導体マクロモデルの供給について、2つ目は、代替品としてのAI技術の存在、3つ目は、本事業の提供価値のプライシングに対する買い手(車載機器メーカ)の理解が、竹威であることを明らかにし、それらの骨威を小さくするための方針を検討した。

また、車載機器のEMC設計に関するロスコストの市場規模の見積もりでは、国内の主要な車載機器メーカーの設計手戻りによって生じるロスコストの額が1500億円規樅と推定した。このロスコスト市場に対して、本事業がEMC設計支援サービスを提供することで、車載機描メーカー各社の事業収益性を改善するという経済的な価値を実現する。さらにエンドユーザがより安全で、より便利な、そしてより快適なクルマ体験を早く享受するという社会的な価値を提供できる事業であることが分かった。

■第4章 結論
本研究成果を今後の実業務の中で実行し、顧客である車載機器メーカー各社が、EMC品質が担保された安全な商品をより安くより早く提供することを可能とし、本事業が先進的なモビリティーエクスペリエンスの実現に買献する決意を述べ、本研究のまとめとした。

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参考文献

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