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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effects of Senkyunolide I on ischemic cell injury and neurogenesis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effects of Senkyunolide I on ischemic cell injury and neurogenesis

王 敏 東京薬科大学

2021.07.14

概要

脳血管疾患の中でも脳梗塞が引き金となる死亡者および後遺症に苦しむ患者は未だに多く、世界中で解決すべき問題となっている。脳梗塞治療における重要事項は虚血による神経細胞死を抑制し、脳機能不全に陥らないようにすることである。血栓溶解薬による急性期治療は奏功するものの、投与開始時間の制限があるためにこの治療が適用される患者は限られている。そのため、新たな作用機序を有する神経保護薬の開発が急務とされている。一方、成熟脳内で神経幹細胞の存在が明らかにされており、増殖・分化能を有する神経幹細胞の脳梗塞治療への応用が期待されている。すなわち、急性期の神経保護と亜急性期または慢性期の神経新生促進は、脳梗塞後の治療戦略として期待されている。

Ligusticum chuanxiong Hort.(LC)センキュウは、中国において偏頭痛や虚血性脳神経疾患に対する治療薬として長年使用されている。LC 由来の活性化合物であるセンキュノリド I(SEI)は、さまざまな薬理活性を有し、かつ血液脳関門を通過することが報告されている。そのため、SEI が LC の中心的薬理作用を担い、中枢神経系疾患の治療に応用可能であることが示唆されている。しかしながら、虚血性脳血管障害後の神経細胞障害に対する SEI の効果および神経幹・前駆細胞(NS/PCs)に及ぼす影響については未だに明らかにされていない。本研究は、SEI の神経保護効果およびその機序、さらに神経幹細胞の増殖・分化能に及ぼす効果について明らかにしたものである。

第 1 章では、グルタミン酸誘発細胞傷害に対する SEI の効果と、その神経保護のメカニズムを、Neuro2a 細胞を使用して検討した。はじめに SEI 処置は濃度依存的にグルタミン酸誘発細胞毒性を抑制した。次に、アネキシン陽性/ PI 陰性細胞数はグルタミン酸処理によって増加し、SEI はこの増加を抑制した。さらにその機序を解明するために、MAPK 関連タンパク質に対する SEI の効果を検討した結果、SEI はグルタミン酸誘発細胞傷害によるリン酸化 AKT 量の減少やリン酸化 ERK 量の増加には影響し無かった一方で、JNK の活性化を抑制した。アニソマイシンで惹起される JNK の活性化は SEI 処置により抑制されることも確認した。さらに cleaved caspase-3 量の増加を抑制したことから、アネキシン陽性/ PI 陰性細胞数の変化を考え合わせると、SEIは JNK / caspase-3 を介したアポトーシスを抑制する可能性を示した。

第 2 章では NS/PCs の増殖能と分化能に及ぼす SEI の影響を検討した。胎児脳から単離した NS/PCs を SEI で処理するとニューロスフェアの形成を促進した。さらに、SEI 処理はニューロンマーカーであるβ3-チューブリン陽性細胞とアストロサイトマーカーであるビメンチン陽性細胞数を減少させた。分化後の細胞生存率を評価したところ、SEI 処置により細胞生存率は向上した。さらに SEI の増殖能促進メカニズムを明らかにするために関連タンパク質の動態を検討した結果、SEI は AKT/β-カテニン経路を活性化させていることを見出した。これらの結果から、SEI は NS/PCs の分化を促進させるのではなく未分化状態を維持し、AKT/β-カテニン経路を介してその増殖を促進することが明らかとなった。

以上より、本研究はグルタミン酸誘発細胞傷害に対する SEI の神経保護効果とその機序および NS/PCs の増殖促進作用とその機序の一端を明らかにし、SEI が脳梗塞の治療に応用される新たな可能性を提示した。