Axial mechanical loading to ex vivo mouse long bone regulates endochondral ossification and endosteal mineralization through activation of the BMP-Smad pathway during postnatal growth

概要

〔目 的(Purpose)〕
力学的負荷は、骨の成長と代謝や恒常性維持において重要な因子とされ、至適な力学的負荷は内軟骨性骨化および骨内膜石灰化形成において、必須の促進因子と考えられている。成長期の長軸方向の力学的負荷に応答する長管骨の内軟骨性骨化および骨内膜石灰化を明らかにし、それらの調節メカニズムを探るために、力学的負荷によるBMP-Smadシグナル経路の役割について着目し、検討することを目的とした。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
長管骨の石灰化形成において力学的負荷の役割を調べるため、3週齢のマウス中手骨を採取し、器官培養下で同週齢の体重に相応した負荷、体重の1/10負荷、無負荷の3種類の大きさの異なる負荷量を加えた。器官培養に先立ち生体内で骨標識剤を投与し、組織学的変化について形態計測により評価した。また、力学的負荷を加えた際の長管骨組織の遺伝子発現およびSmadシグナル経路のリン酸化活性について検討した。力学的負荷は、BMP-Smadシグナル経路の活性化を通して、内軟骨性骨化および骨内膜石灰化を促進することが考えられたため、力学的負荷を加えないBMP-2単独投与群と力学的負荷群との間の組織学的変化を比較検討した。この際、BMP-Smadシグナル経路に対する阻害剤を投与し、両群に対する阻害剤投与の影響についても検討を行った。さらに力学的負荷下の細胞外液性環境の変化について、pH、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、リン酸濃度(Pi)およびピロリン酸濃度(PPi)を指標として計測を
行った。

関節軟骨は、力学的負荷により有意な変化を示さなかった。成長軟骨では負荷量依存的に石灰化軟骨層が増大する一方、非石灰化軟骨層は減少を示しており、長管骨の縦方向成長速度は有意に増大したことから、力学的負荷により内軟骨性骨化が促進することが明らかになった。骨内膜側では類骨層の厚みに有意な変化は認められなかったが、石灰化骨の厚みが有意に増加しており、力学的負荷により骨内膜の石灰化は著明に促進していた。力学的負荷はBMP-Smad経路を活性化し、内軟骨性骨化および骨形成関連遺伝子の発現を上昇させた。BMP-2単独投与の効果は、成長軟骨と骨内膜において、力学的負荷のそれに類似した効果を示した。また、BMP-Smad経路の阻害は、力学的負荷およびBMP-2単独投与による石灰化促進効果を一部を除き抑制した。さらに力学的負荷は、ALP活性を増加する一方で炭酸脱水酵素の一つであるCar9の発現を著明に抑制することが明らかになった。力学的負荷は、細胞外液性環境において、pH、ALP活性およびPi/PPiを上昇させ、内軟骨性骨化および骨内膜石灰化を促進する可能性が示された。本研究では、三次元力学的負荷培養装置を長管骨の器官培養に応用し、組織構造の変化、遺伝子発現解析、細胞外液性環境の変化を捉えることを可能にした新しい長管骨の生体外器官培養モデルを確立し、論文報告した。

〔総 括(Conclusion)〕
器官培養下での長管骨長軸方向への力学的負荷は、BMP-Smad経路の活性化を通して、内軟骨性骨化および骨内膜石灰化を調節する。