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大学・研究所にある論文を検索できる 「凍結乾燥スープのコラプス抑制に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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凍結乾燥スープのコラプス抑制に関する研究

曽我部 知史 広島大学

2022.09.20

概要

食品の凍結乾燥では乾燥効率改善を目的とした棚加熱による昇華潜熱供給が行われているが、加熱条件によっては凍結乾燥物にコラプスが起こり、乾燥効率、乾燥物の外観、復水性などが悪化する。コラプスを抑制する手段として、系の凍結濃縮ガラス転移温度(77)や降伏応力を高めるアプローチ が考えられるが、凍結乾燥スープにおいては高分子材料や不溶性繊維の高濃度添加によって嗜好性の悪化が懸念される。

このような背景の下、本研究ではスープに少量(1-3%)のゼラチンを添加し、溶液をゲル化させることによって凍結乾燥時のコラプスを抑制する方法を提案した。スープにゼラチンゲルネットワークが存在することで、それが構造的な支え(支柱)となり、凍結乾燥物のコラプスを抑制すると期待される。また、ゼラチンゲルは融点が低いため、湯戻し時には速やかな溶解が期待される。本研究では、ゼラチンによるスープのゲル化が凍結乾燥スープの加工性および品質に及ぼす影響を明らかにするこ とを目的とした。試料としてスープモデル(NaCl、スクロース、グルタミン酸ナトリウムの混合物)を用いた。また比較のため、水溶性マルトデキストリン、糊化コーンスターチの添加効果についても調べた。

第1章では上記の研究背景と目的を説明した。第2章では凍結乾燥、コラプス、実験で使用した測定装置などについて説明した。また、本論文では、凍結乾燥物における多孔質構造の損失を広義にコラプスと称したが、厳密にはクラック、収縮、発泡、潮解、脆化に分類されることを説明した。

第3章では、各種スープモデル試料のレオロジー特性および凍結状態における熱物性を調べた。コントロール、マルトデキストリン添加試料、糊化コーンスターチ添加試料は溶液であり、流動曲線からニュートン流体(コントロール、マルトデキストリン添加試料)、擬塑性流体(1%コーンスターチ添加試料)、非ビンガム流体(3%コーンスターチ添加試料)と判断された。ゼラチン添加試料はいずれの添加濃度においてもゲル(固体)であることが確認された。示差走査熱量測定の結果、3%ゼラチン添加試料と3%マルトデキストリン添加試料を除く試料においてNaClの共晶融解ピークが確認された。この結果より、3%ゼラチン添加試料と3%マルトデキストリン添加試料を除くスープモデルの凍結濃縮相はNa Cl結晶を主成分とする共晶( 結晶質) 部分、スクロースおよび共晶できなかったイオンとが混在した非晶質部分とから構成されると考えられる。高分子添加試料ではNaClの共晶が抑制され、添加濃度が高いほど共晶融解エンタルピーの値が小さくなった。いずれの試料においても凍結濃縮ガラス転移を確認することはできなかった。

第4 章では、各種スープモデル試料の凍結乾燥特性( コラプス発生の有無、乾燥時間) および乾燥固体の物性( 水分含量、水分活性、破損耐性、溶解率) を、2 つの棚温度条件( 25 °C、50 °〇で調べた。コントロールではコラプス(発泡)が発生し、いずれの棚温度においても多孔質固体を得ることができなかった。一方、高分子添加試料では著しいコラプスは認められなかった。高分子の種類と濃度は、一部を除いて最終水分含量および水分活性に影響しなかった。マルトデキストリンはいずれの濃度においても破損耐性が低かった。糊化コーンスターチは1%添加では破損耐性が低く、3%添加では溶解率が低かった。ゼラチンは、1%添加において高い溶解率と破損耐性とをもたらしたが、3%添加では溶解率が低下した。棚温度の上昇によって乾燥時間が短縮し、一部の試料を除いて乾燥固体の外観、溶解率、破損耐性には影響を及ぼさなかった。以上の結果より、1%ゼラチン添加によってスープをゲル化させ、棚温度50°Cで凍結乾燥することが、乾燥時間の短縮、コラプス抑制、凍結乾燥スープとしての品質において、最適な条件であると結論付けられた。

一般に、少糖や糖アルコールはる’が低く、凍結乾燥できない(著しいコラプスを免れない)ものとして扱われてきたが、ゼラチンによるゲル化によってこの問題を改善できる可能性がある。そこで第 5章では、1%ゼラチンによるゲル化が凍結乾燥糖質固体のコラプス(外観および見かけ体積)に及ぼす影響を調べた。糖質材料としてトレハロース、スクロース、マルチトール、グルコース、還元水あめ、ソルビトールを用いた。ゼラチン無添加の試料において、る’が高いトレハロースはコラプスを回避したが、rg’が低いスクロースおよびマルチトールは発泡を、rg’がさらに低いグルコースおよび還元水あめは潮解を、同じく rg’が十分に低いソルビトールは脆化をそれぞれ示した。一方、1%ゼラチンによって糖溶液をゲル化させることで、いずれにおいても発泡、潮解、脆化は発生しなかったが、る’が低いグルコース、還元水あめ、ソルビトール試料では底部に収縮が見られた。ゼラチンの濃度を増加させることによって改善が見込まれるが、その結果として溶解性の低下というデメリットは受け入れざるを得ない。棚加熱を抑えることでも改善は見込まれるが、乾燥時間は長期化すると考えられる。試料の性質に応じたゼラチン濃度および棚加熱条件の最適化については今後の検討課題である。

今日の凍結乾燥食品市場では、これまでの主力であったスープや味噌汁類に加え、甘味飲料などを含む様々な新製品が投入されており、製品種類が多様化している。ゲル化によるコラプス抑制アプローチは、新規凍結乾燥食品の開発に貢献するものと期待される。

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