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大学・研究所にある論文を検索できる 「減失個体記録ならびに食害発生状況の解析に基づくニホンカモシカの保護管理に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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減失個体記録ならびに食害発生状況の解析に基づくニホンカモシカの保護管理に関する研究

生島, 詩織 岐阜大学

2022.03.14

概要

本研究では,カモシカの保護管理の推進に寄与することを目的に,「死亡個体記録(滅失届)を活用した個体群動態モニタリング手法」の検討および「カモシカによる林業被害実態」の解明を行った。各項目の概要は以下のとおりである。

死亡個体記録(滅失届)を活用した個体群動態モニタリング手法
• 滅失届に記された死因を一定のルールに従い分類することで,岐阜県のカモシカ個体群における死因構成を明らかにすることができた。疾病,事故,交通事故がいずれも全体の25〜30%を占めることから,これらが主要な死因であると判断された。また,全体の約30%は交通事故やフェンスへの絡まりなどの人為的要因による死亡であることから,個体群に対する人間活動の影響は大きいと考えられた。
• 滅失届数はオスがメスよりも有意に多かった。その一因として,オスはメスよりも大きななわばりを持ち行動範囲が広いため,人の生活圏への出没や事故への遭遇,死体が発見される機会が多いことが考えられた。パラポックスウイルス感染症の件数は雌雄で有意な差が認められなかったが,これは当該疾病の自然界での罹患率がメスで高く,オスの死体発見率の高さを相殺したためであると推測された。
• 月ごとの滅失届数は,調査期間である2006年から2018年の間増加する傾向にあった。一因として,カモシカの生息環境の変化により人里周辺での生息が増加した結果,死体の発見頻度が高まったことが考えられた。月ごとの滅失届数には,春に多く冬に少ないという季節変動がみられた。この要因として,カモシカは春に移動距離が増大するためこの時期には人の生活圏への出没や事故への遭遇機会が増加すること,冬の人間活動の減少や積雪による死体の被覆により死体発見率が低下することが要因として推察された。また,2014年から2015年の冬には疾病による死亡の一時的な増加が確認されたが,厳冬の影響である可能性が考えられた。
• 岐阜県におけるカモシカのパラポックスウイルス感染症の分布は中西地域および南東地域で高い傾向があり,とくに南東地域に集中していた。南東地域は過去の流行時に有病率が最も高かった地域であり,なわばりの空間的連続性,安定した出生率による新規感受性個体の供給が,当該地域における高い発生率に影響している可能性が考えられた。

カモシカによる林業被害実態
• カモシカによる食害が報告されたヒノキ植林地において,シカの出没が全体の25%を占めたことから,加害種の同定が必ずしも正確に行われていない可能性が示された。調査地では,カモシカは周日行性,シカは夜行性であり,人は日中にのみ活動していたことから,人の活動時間帯との重複率の差が加害種としての認識に影響していると考えられた。また,シカの出没がカモシカと比較し低頻度であることも,シカの存在を認識しにくい要因であると推察された。
• 冬の捕獲により被害地またはその周辺でカモシカを除去した後も,新芽萌出の時期より前には他のカモシカが被害地に出没した。すなわち,捕獲を実施してもカモシカは当年のヒノキ成長期間を通して植栽木を採食できる状況であった。
• 捕獲前後でのなわばり個体構成の変化として2つのパターンが想定された。1つ目はなわばり個体が捕獲されずに被害地において定住し続けるパターン,2つ目は捕獲によりなわばり個体は排除されるものの,他のカモシカが空いたなわばりに移入し定着するパターンである。
• すべての調査地において,食害発生率は秋から冬に上昇する季節性を示した。カモシカやシカの嗜好性が高い植生として落葉広葉樹が挙げられるが,落葉広葉樹が落葉し餌資源としての存在量が減少する秋から冬に,代償的にヒノキへの依存度が高まることが影響していると考えられた。
• 多変量ロジスティック回帰モデルによる分析の結果,カモシカの出没頻度,植栽木の樹高,林縁からの距離などの要因に関係なく,食害発生率は忌避剤散布により散布しない場合と比べ0.28倍となった。秋から冬は食害発生リスクが上昇するため,その直前に忌避剤を散布することが,省力的かつ効果的な防除対策であると考えられた。

 以上の結果により,滅失届に記載された死因の分類方法を確立し,死亡の時空間パターンを明らかにした。また,林業被害地における加害種の推定,カモシカの捕獲による被害防除効果および被害発生に関連する要因を解明した。

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