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大学・研究所にある論文を検索できる 「The CD153 vaccine is a senotherapeutic option for preventing the accumulation of senescent T cells in mice」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The CD153 vaccine is a senotherapeutic option for preventing the accumulation of senescent T cells in mice

吉田, 翔太 大阪大学

2020.10.31

概要

〔目的(Purpose)〕
老化細胞は、周囲の老化細胞に害を及ぼす炎症性サイトカインや細胞外マトリックス分解酵素などを産生し、過剰な炎症反応、自己免疫疾患や発癌の増加を引き起こす。老化細胞を標的としたSenotherapy(抗老化療法)は、加齢に伴う機能障害を軽減し、健康的な老化を促進することを目的としており、特に老化細胞を直接的に除去する方法は効果的なアプローチであると考えられている。免疫細胞も加齢に伴って機能異常をきたした細胞が増加し、例えばT細胞系ではCD4(+) CD44(high) CD62L(low) CD153(+) PD-1(+)のT細胞集団がこれに相当することが近年報告されている。また、老化T細胞は若齢のマウスでも高脂肪食(HFD)負荷によって内臓脂肪組織中に蓄積して炎症性サイトカインを産生し、慢性炎症、心血管疾患、耐糖能異常などの代謝障害を引き起こすことが報告されている。しかし、この老化T細胞を選択的に除去することで、加齢に伴う変化を減衰させることができるかどうかはまだ不明である。そこで、本研究では HFD誘発性肥満マウスに対してCD153ワクチンの接種を行うことで、内臓脂肪組織中のCD153陽性老化T細胞が抑制され、内臓脂肪組織における慢性炎症や耐糖能が改善するかを検討した。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
老化T細胞を抑制する手段として、CD153を標的としたワクチンで抗体を誘導して選択的に除去する抗老化療法を考案した。CD153タンパクの中で特に抗原性が高いと予想されるペプチド配列を5か所(#A-#E)選択してワクチンを作成した。ELISA法により最も反応が強く出た配列(#D)を採用し、Western Blotting法でもその反応の強さを確認した。
HFD負荷実験系として、AlumもしくはCpG 0DNをアジュバントとして用いたCD153ペプチドワクチンをC57BL/6Jの雄マウスに2週間ごとに複数回(Alum群:5回、CpG群:3回)皮下注射で投与した。その後、8-10週間のHFD負荷を行い、ブドウ糖経口負荷試験(0GTT)およびインスリン負荷試験(ITT)で耐糖能とインスリン感受性を評価した。CD153-CpGワクチン投与群では、HFD対照群及びKLH-CpGワクチン群(対照ワクチン群)と比べて、0GTTで耐糖能とインスリン感受性の改善が認められた。一方、CD153-Alumワクチン投与群ではHFD対照群及びKLH-Alumワクチン群と比べて0GTT及びITTで耐糖能やインスリン感受性の改善が認められなかった。また、組織中の老化T細胞の割合をフローサイトメトリー法により解析したところ、CD153ワクチン投与群ではHFD対照群及びKLHワクチン群と比べて脾臓組織中の老化T細胞の割合に有意差は認められなかったが、内臓脂肪組織中の老化T細胞の割合ではCD153-CpGワクチン投与群でHFD対照群及びKLHワクチン群と比べて有意に改善が認められた。また、老化T細胞はマクロファージと同じく、内臓脂肪組織内では Crown-like Structures (CLS)と呼ばれる部位に蓄積する。内臓脂肪組織における免疫組織化学染色では、マクロファージ(F4/80染色)及び老化T細胞(CD153染色)いずれもCD153-CpGワクチン群においてHFD対照群及びKLH-CpGワクチン群と比べてCLSへの蓄積に対して改善が認められた。

〔総括(Conclusion)〕
CD153-CpGワクチンは内臓脂肪組織中の老化T細胞を抑制することで耐糖能やインスリン感受性を改善したことから、 新しい治療コンセプトの可能性が提唱された。