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大学・研究所にある論文を検索できる 「Morphological variation and zoogeography in Japanese shrew moles」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Morphological variation and zoogeography in Japanese shrew moles

Okabe, Shinya 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k24126

2022.07.25

概要

日本列島における小型哺乳類の動物地理研究では、海に囲まれた島嶼による分断に着目した議論が展開されてきた。近年の世界的な島嶼生物地理研究の流れとして、山岳島嶼(Mountain Island)と呼ばれる島状の地勢に、標高分布により高標高地域に隔離分布する生物に注目が集まっている。海に囲まれた島嶼および山岳島嶼のどちらも、生物種の固有率が高いことが知られる。実際に、日本列島は起伏の激しい多数の島嶼という地勢の中で、固有率の高い小型哺乳類を育んでいる。しかし、低地と高地のそれぞれを島嶼生物地理の側面から、小型哺乳類の多様性形成メカニズムの解明に取り組んだ研究は存在しない。本研究では、海洋島嶼と山岳島嶼における島嶼生物地理を分布標高の異なる近縁種を対象に解明し、それぞれの地理的な形態進化パターンを比較することで、日本列島における動物多様性形成に地形が寄与していることを実証した。

本研究では、日本に分布する哺乳綱のうち、近縁種が低地と高地に分布することが知られる、ヒミズ類2種のヒミズUrotrichus talpoidesとヒメヒミズDymecodon pilirostris(真無盲腸目、モグラ科)を対象に選定した。

第2章では、ヒミズの成獣1001標本の上下顎歯列を対象に、歯数および歯の形状を調べたところ、17個体に歯の異常を認めた。ヒミズにおける歯の異常の発生頻度はモグラ科他種と比較して低く、さらにその異常が犬歯にて最頻することが特徴的であった。ヒミズの歯列異常傾向について地理的分布、歯の大きさおよび歯式に着目して議論を展開し、ヒミズの現在の採用歯式に問題点があることから別の歯式を採用することを提唱した。

第3章では、本土(本州・四国・九州)と周辺島嶼(隠岐・見島・対馬)にて収集された、ヒミズの成獣297標本の頭蓋骨と下顎骨を対象に、20形質の計量計測をもとに単変量・多変量解析を行った。この結果、ヒミズの頭骨形態変異には頭骨サイズ・歯列長・頭骨形状に地理的な差異が認められ、本土・周辺島嶼の各島嶼の個体群間において頭骨形態が異なることを明らかにした。ヒミズに認められる低地性動物の生物地理は海に囲まれた島ごとに頭骨形態が多様化することを示した。この形態の多様化を引き起こすメカニズムとして、氷期における陸域拡大による生息環境の拡大および、間氷期における強制的な生息地の縮小と島嶼への隔離が関与することを議論した。

第4章では、本州・四国・九州の山地から収集されたヒメヒミズ103標本の頭蓋骨と下顎骨を対象に、25形質の計量計測、単変量・多変量解析を行った。この結果、ヒメヒミズの頭骨形態には頭骨サイズ・頭骨形状に地理的な差異が認められ、山地帯ごとに形態の多様化がみられた。ヒメヒミズを高標高性の動物と判断し、本結果を山岳島嶼の島嶼生物地理と解釈した。本種の形態が山岳島嶼間で多様化する要因として、氷期―間氷期における分布標高の変遷に加え、ヒミズとの種間競合により、分布標高が限定されたことで、形態の多様化がより加速されたと議論した。

日本の島々におけるヒミズ・ヒメヒミズの地理的な多様化パターンには相違がみられ、この違いは分布標高の相違に起因することが示された。また、低標高性のヒミズは海に囲まれた島嶼間、高標高性のヒメヒミズは山岳島嶼間で多様化を生じることから、日本列島の動物多様性は海に囲まれた島嶼と山岳島嶼が異なる機能により形成されたことが示唆された。本論文は、日本産ヒミズ類に着目することで、標高分布がもたらす異なる多様性パターンと山岳島嶼が内包する潜在的な生物多様性形成メカニズムを解明した。

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