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自己認識力を高めて、自己分析に繋げよう
自分って何者?
「自分のことは自分が一番よく知っている」と聞いたことがあると思いますが、本当にそうでしょうか?
以前、自己PRに「真面目」であると書いた学生がいました。しかし、視点を変えて話を聞いていくと、期日を守る・さぼらないのは、「責任感」からくるものだったということが分かりました。このように、行動の根拠が自分自身の認識とは異なることがよくあります。
就活において、「真面目」であることは、融通が利かず、成長が停滞する印象を与えることがあるかもしれません。しかし、「責任感」であればどうでしょう。納期までにやり遂げる方法を模索する頼もしい印象を与えることができるかもしれません。このように、自分自身を正確に認識できていないと、損をしてしまうことがあります。
逆もしかりです。どのようなことが得意でどのようなことが苦手なのか、新しいことを学ぶのが早いのか時間がかかるのかなど、様々な視点から自分を理解し、チーム・個人での社会的存在価値を見出すことで、自分なりの活躍や貢献が可能となり、それがあなたの個性として輝きます。
就職活動の場面では、企業の人事はあらゆる方法で、応募者が自分自身をどれだけ理解しているかを探り、自社との適性やキャリアに対する意欲を確認し、長く活躍できる人材を求めています。面接の際に自身を正しくアピールするためには、できるだけ正確に自分を知っていること、つまり自己認識力が大変重要です。
本記事では、就活だけでなく、長い人生においても役立つ自己認識力の高め方について、解説していきます。
自分の認識の可視化
私たち人間は、脳というわずか1.5Lの中に銀河系ほどのニューロンがネットワークを形成されているといわれます。人の認識は、感覚的なものであれ知的なものであれ、認識の出発点には複雑かつ膨大な過去の知識や経験から選択していることを考慮しておきます。
例えば、目の前に桜が咲いているとしましょう。皆さんは何を思い浮かべますか?桜の花を見て、「入学式」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、アメリカの学生にとっては「日本との友好の印」と思うかもしれませんし、オーストラリアの学生にとっては「9月の花ジャラカンダでは」と桜に似た花を思い浮かべるかもしれません。
また、小さな子が綺麗な手持ち花火を掴もうとする光景を見たことはありませんか?身近な人から「熱い」と教わる、実際に熱を感じるなど、様々な認識を持った後は、「花火を見る」という行為を選択することとなるでしょう。そのような行為は自然な成長であるため客観的に論じる人はいないと思います。認識とはそういうものです。当然だと考えている認識を捉えるにはどうすればよいでしょうか?自分が行動を起こす出発点を可視化してみましょう。
自己認識力とは
自己認識力とは、自分自身を客観的に理解する能力のことです。
先ほど述べた例のように、人は認識する際、過去の経験や自己の価値観と結びつけます。
ここでは、皆さんの思考(脳)の中で、「自己」と「他者」がどのように生まれ、存在しているのかを意識しながら、『社会性』にフォーカスして、自己認識力について考えてみましょう。
『社会性』における自己認識には、普遍的認識と個別的認識があると考えます。
普遍的認識とは、一般的次元での論理的な判断だけで考えるものです。例えば、過去・現在・未来という時間の概念は世界共通の認識です。また、数や空間的な概念も表現は文化によって異なりますが、普遍的な認識といえるでしょう。反対に個別的認識は、個としての自分自身に向かう認識であり、これは自己の経験からなる認識です。就職活動においては、自己PRやガクチカなどで志望する企業にアプローチしていかなければなりません。そのため自己分析を行い、自己認識している部分を可視化・言語化します。個別的認識は、自己成長、人間関係、仕事面などあらゆる場面で役立つと考えられています。
大学に在籍してやっと授業や課外活動に慣れてきたと思った途端、就職活動を開始するのは時間が足りないと思われるでしょう。特に理系学生は、課題や実験などが山積で、自由な時間がとれないことも多いことから、効率的に行わなければなりません。そこで理系の強みを活かして、探求的考察を行ってみましょう。
自己認識力が就活に活かせる理由
自己認識力は、単に自分自身を知るだけでなく、より豊かな就職活動を行うために不可欠な能力です。
理系学生の皆さんは、専門的な知識や実験スキルなどをお持ちです。しかし、企業は単に仕事ができる人材を求めるのではなく、なぜこの企業なのか?どのように活躍できるのか?など、企業の文化にフィットし、長く活躍できる人材を求めています。自己認識力を高めることは、自分にとって最適な働き方を見極め、未来のキャリアを切り開いていくのに役立ちます。
自己認識力が就活に活かせる理由
・自分の強みを活かして、可能性を広げることができる。
・弱みを克服することで、自身の成長に繋げられる。
・自分の内面や機能を理解することで、業界や職種の的確なマッチングに役立てられる。
・他者との関わりを築くための独自の方法を知ることで、協働がしやすくなる。
自己認識力の3つの側面
自己認識力には、様々な側面があります。これらの側面は互いに関連しており、それぞれが影響を与え合います。例えば、内面的自己認識が深まると、困難なことにぶつかっても、乗り越えるために自分の強みを活かすことができます。外向的自己認識が深まると、ストレスを感じた時に、対処するスキルを模索することができます。
◆「内面的自己認識」: 自分自身の性格や思考などのパターンを理解する
◆「外向的自己認識」: 周りの人からどう見られているかを理解する
◆「機能的自己認識」: 上記を踏まえ、自分の役割やスキルを客観的に理解する
自己認識力を高めるプロセス
「自分が何者か」を認識するためには、チーム・個人での自分の社会的存在を捉えていくとよいと考えます。暗黙の認識であったものを明白な認識として捉えてみましょう。コミュニケーションや協働作業など、他者を認知・意識し、作り上げていくプロセスの際に、自分はどのような考えで行動するかを認識していきます。
より可視化しやすくするために、ここではTEM図(複線径路・等至性モデル)(サトウ, 2009)を用いてみましょう。非可逆的時間(計測可能な物理的な時間ではなく、一方向的に持続し、後戻りしない時間の流れ)の中で、各々が多様な径路を辿っていたとしても、等しく到達するポイント(等至点)があるという考え方を基本とし、人生径路の多様性・複線性の時間的変容を捉え、個人が経験した時間の流れを重視する枠組みモデルです。それぞれ具体的な時空における自身を対象にします。多くの場合、「ある」ということにしか気付けないため、「ない」ものを意識するために分岐点を設けています。本来のTEM図は、インタビューから分析するものですが、今回は自己認識できるよう簡略化しています。
※TEMは時間を捨象(概念を抽象するときに抽出されなかった考えを切り捨てること)せず、個人の変容を社会との関係で捉え、記述しようとする文化心理学の方法論です。
参考文献:TEMではじめる質的研究/サトウタツヤ/2009/誠信書房
①大学入学を始点、卒業および修了を等至点(終点ではない)とする
②時間経過に沿って、分岐点を中心に細かくブロック分けをする(例えば、サークル入部やゼミ選びなど)
③大学入学も含め、選ばなかった選択肢も記入
④選んだ理由に、社会的助勢(等至点へと促進する力(周りの影響・自身の考え))を記入
⑤選ばなかった理由に、社会的方向づけ(等至点から遠ざけようとする力(周りの影響・自身の考え))を記入
⑥図の中で、変化や成果を感じた部分を青丸にする
⑦共通項目をピックアップ
⑧複数回ある個人的助勢があれば赤で囲む
⑨始点から等至点まで一貫してある想いを認識する
自己分析に繋げるには
なぜ過去を思いかえしてみることがこれほどむつかしいのか、自分の本質を認識するには、どういう条件を満たせばよいのか。自分の行動を一つ一つ客観視し、認識しながら生きていく人はあまりいないと思います。
しかし、分岐点で行動を起こした自らの過去を振り返り、知覚することは可能なのではないでしょうか。「寒ければ上着を着る」や「人間なら当然」などの節理による感覚的認識を含まない、その人らしい、日常のありふれた経験とそれらの行動を客観的に自己認識していくのです。そうすることによって、自分に合った企業が見つけやすくなります。また、面接においても根拠をもって自分のことを伝えられます。就活時に自己認識を深めておくことができれば、社会人になっても自分らしいキャリアを築くきっかけとなるでしょう。
日常に取り入れる自己認識力
自己を論理的に認知するには、まず環境が変わる際に自己と向き合ってみましょう。その中で行動の選択肢がある場合、自己決定が必要となります。ただ何となく、あるいは必要に迫られて等、一見選択肢がないように感じられると思いますが、「投げ出すこともできるがそうしなかった理由」もしくは「やめた理由」を思い返すことで、行動の原点となる価値観が可視化できるでしょう。自己認識を断層的に捉えていきましょう。就職活動の開始から焦って表層的な自己分析を行うことも、ある意味効率的であると思います。しかし、人生100年の今、今後続く長いキャリアビジョンを立てるためにも、日常的に自分の行動の背景を文字に起こしてみると、自己認識力が深まります。
DAY - 自分の行動パターンを分析し、メモに書き留める
MONTH - 自分の感情や行動を記録し、振り返る
SOMETIMES - 周囲の人からフィードバックをもらい、自分では気づかなかった側面を知る
このように日常の中で意識的に自己認識を深めていくことで、豊かな人生を歩む一助となります。
正しく自己認識力を高めよう(自己認識に関わる注意点)
自己認識力を高めていく際に、下記のことに注意しながら行うと、正しく自分を分析できます。
・失敗や停滞を社会的抑制の理由にしないこと
採用面接において失敗経験を聞かれた際、学部選択や研究内容の変更などに、偏差値や研究機材などを理由としてしまう学生がいます。それも確かな理由だと思いますが、採用担当者が聞きたいのは、なぜ選択したのか、なぜ変更したのか、その人の決定意思の根拠が聞きたいのです。
・一般化と個別化を混同しないこと
個別塾のアルバイトの成果で、「生徒の苦手科目を分析し、成績向上に繋げた」とする学生が多いです。勿論、その行動も成果の一端です。しかし一般的な表層対処ではなく、どう分析したのか・どう苦手克服に繋げたのか(課題or目標、個orチーム、数字or感情、キャラクターor環境)を考え、自分が起こした行動を、もう一歩踏み込んだ視点で振り返ってみましょう。華美なものでなくて構いません、地味でも貴重なのです。
・過少評価しないこと
「学生時代、何もしていません」という学生が、毎年一定数います。本当に何もしていないのでしょうか?「一般的な学生と同じです。課題が忙しく、ただ単位を取得しただけです。」それは、課題の取り組み方も同じなのでしょうか?なぜ遠いのに通学?など、分岐点を中心に確認すると本来「ある」ことしか見ていないことに気付きます。決して自分を過少評価しないでください。
・一つの方法を最善とし、固定観念に囚われないこと
企業が求める人物像は一つではありません。正解も一つではありません。それが最善であると考えたとしても、他の方法を取り入れるゆとりを持ってみましょう。車のハンドルのように遊び(ゆとり)が前に進むには必要なのです。
まとめ
自己認識は一朝一夕にできるものではありませんが、新卒採用は人生に一度のレアな経験です。自分自身と向き合い、より自分に合ったキャリア創造のための大切な期間と考えて取り組んでみてください。
キャリアはよく馬車の轍(わだち)に例えられますが、私はロッククライミングだと考えています。あらかじめ着実に登ることのできる同じ色のロックを辿り登る人もいれば、様々な色のロックを感覚的に登る人もいるでしょう。どういう過程で到達点にロックを繋いだかだけでなく、なぜそのロックを選んだか、なぜ別のロックを選ばなかったのかを考えてみてください。正しい選び方などはありません。仮にAIで自己PRを生成するにも、差別化するためには自身のプロトコルは必要です。今後の転職や転機にも役立つことでしょう。決して他人と比較せず、自己認識力を高め、自身を認めてあげてください。そうすると面接で思いがけない突飛な質問がきても、自ずと自分なりの話ができるはずです。
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