地盤工学分野における砕石副産物の有効利用に関する検討
概要
コンクリート骨材や路盤材を製造する際,砕石工場からは,副産物として‘砕石粉’や‘砕石脱水ケーキ’が排出される。砕石副産物は,原石の約10%,砕石生産量の約2%,年間約3,000 万t 発生すると報告されている1), 2)。砕石副産物の内訳は,全体の3 分の1 程度が砕石粉であり,残りの大部分は砕石脱水ケーキである。砕石は,コンクリート分野と密接な関係があるため,砕石粉はコンクリート用混和材として JIS A 5041 に規格化されている。一方,砕石脱水ケーキは,セメントやスラグなどを添加し造粒物として再利用する方法 3)や,砕石脱水ケーキをコンクリート用混和材として利用する研究4)が存在する。しかしながら,砕石副産物の有用性や市場性の低さから,大部分が埋め立て廃棄されている状況である。現状のままでは,埋め立て処分場の逼迫や砕石副産物の処理費問題が懸念されるため,砕石副産物の再利用は喫緊の課題である。
このような砕石副産物を取り巻く環境は,これまでコンクリート用材料として再利用を目指した結果であり,特に水分を多く含有する砕石脱水ケーキの再利用は一般化されなかったと推察される。しかしながら,砕石,砕砂は,地盤材料として使用されることも多い。ゆえに,地盤工学分野は砕石副産物発生の一端を担っていると言える。また,砕石副産物は天然の岩石由来であり,安定的かつ一定品質で副産される点は,地盤材料として大きなアドバンテージになることが考えられる。よって,著者らは,砕石副産物の地盤材料への利用可能性を明らかにすることは重要であると考えた。砕石副産物の地盤材料への利用には,地盤工学分野の観点から砕石脱水ケーキの物理,力学特性を明らかにし,従来の地盤材料に対する管理規準や評価方法との関係を明確にしておくことが必要である。
本稿では,砕石副産物の大部分を占める砕石脱水ケーキに着目し,基本的な物理特性や含水比変化に伴う力学特性を明らかにするとともに,土工用粘性土などとの比較結果を報告する。なお,本報文の一部はすでに発表済みである5)。