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大学・研究所にある論文を検索できる 「人体帯電圧による着衣の静電気帯電量測定法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

人体帯電圧による着衣の静電気帯電量測定法の開発

木村, 裕和 信州大学

2020.03.12

概要

3版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 15 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 基盤研究(C)(一般)
研究期間: 2015 ∼ 2017
課題番号: 15K00750
研究課題名(和文)人体帯電圧による着衣の静電気帯電量測定法の開発

研究課題名(英文)Development of determination method for clothes using human body voltage

研究代表者
木村 裕和(Kimura, Hirokazu)
信州大学・学術研究院繊維学系・教授

研究者番号:80359372
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,400,000 円

研究成果の概要(和文):作業服を中心に人体帯電圧による着衣の静電気帯電性測定方法を考案した。考案した
試技は2種類である。着衣とインナーウエア間で一定時間摩擦動作を行った後、直ちに脱衣する動作と椅子に着
座した実験者が着衣の背中部と椅子の背もたれ部間で一定時間摩擦動作を行った後に素早く立ち上がる動作であ
る。帯電防止未加工の作業服と帯電防止加工作業服、合計10種類を試料として実験を行った結果,脱衣試技では
帯電防止作業服の人体帯電圧は安全なレベルにあることが確認された。しかし、椅子からの立ち上がり試技にお
いては帯電防止作業服であっても70%以上の試料が3kVを超過し、50%が火花放電が懸念される5kV以上の帯電圧を
記録した。

研究成果の概要(英文): Safety-assessment on the static electrical propensities of work clothes in
Japan is carried out by electric charge level. In practical use, we consider that the hazard
related to static electrical charge is dependent on human body voltage. We thought up two trial
movements for determination of human body voltage: one is taking off movement after performing
frictional action between work clothes and inner wear, the other is standing up from the seat of
popular use chair quickly after performing frictional action between the back part of work clothes
and the back of a chair. Experimental works were performed by using four types of unprotected
commercial work clothes and six types of static protected commercial work clothes. Standing up
movements from the seat of chair were recorded higher human body voltages than taking off movement.
And, it was found that some work clothes including several static protected work clothes exceeded
5kV which occured spark discharge from human body.

研究分野: 繊維工学
キーワード: 静電気的安全性 人体帯電圧 帯電防止作業服

様 式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)
1.研究開始当初の背景
研究対象とする測定法は,主に作業服あ
るいは静電気帯電防止作業服とするが,一
般的な衣料にも適用できるものとする.実
際のヒトの行動や動作によって発生する静
電気帯電現象を正確に把握し,帯電メカニ
ズムを解明した上で,再現性の高い測定・
評価方法を提案する.
現在,JIS に規定されている着衣の静電
気安全性に関する試験方法としては,JIS T
8118 がある.しかし,これは対象物が静電
気帯電防止作業服のみに限定されており,
静電気帯電防止作業服に使用される生地と
静電気帯電防止作業服 1 点を試料として用
い,摩擦帯電電荷量による基準が設定され
ているのみである.基準値は生地の摩擦帯
電電荷量が 7μC/m2 であり,作業服 1 点で
0.6μC/m2 と規定されているが,一般的な着
衣や通常の作業服に関する規定はない.し
かし,現実にはこの JIS に合致した静電気
安全作業服を着て作業をしていたにもかか
わらず,人体からの静電気放電による人身
死亡事故が発生している[平成 18 年 1 月
18 日毎日新聞朝刊社会面記事(2006 年)


本研究では,このような静電気放電による
深刻な災害発生はもちろん,2000 年頃に話
題となったセルフサービス式ガソリンスタ
ンドなどにおける静電気障災害[平成 14
年 7 月 12 日毎日新聞夕刊一面記事(2002
年)

を未然に防ぐという観点からヒトの動
作にともなう静電気帯電現象を究明した上
で,人体帯電測定法による新規試験方法を
開発することを目的としている.
これまでに研究代表者らは,長年にわた
り繊維および繊維製品の静電気帯電現象に
関する研究に取り組んでおり,特に静電気
の人体帯電現象については詳細な研究を進
めてきた.また,現在,実用化されている
導電性繊維の性能についても調査研究を行
っており,静電気障災害などについて記述
した論文,著作もある[木村裕和,総説・
人体の静電気帯電とその対策,皮革科学,
50,2,pp.67-76(2004)


[木村裕和ほか,
帯電の測定方法と静電気障害対策,
pp.214-216,サイエンス&テクノロジー社
(2008)],[木村裕和ほか,
【複合・電子
材料,フィルム,粉体,液体,有機デバイ
ス】正しい電気特性の測定と評価
pp.304-333,技術情報協会(2005)]
.さら
に,人体帯電圧と相関の高い動的荷重試験
機を援用した帯電性試験方法の提案も行っ
ている[木村裕和ほか,動的荷重試験機を

用いたカーペットの帯電性評価,静電気学
会誌,35,1,pp.38-39(2011)].また,歩
行にともなう静電気人体帯電発生を抑止で
きる研究にも取り組み,その研究プロセス
において,静電気帯電防止には導電性繊維
の表面露出状態が問題であることや突出単
繊維がコロナ放電のトリガーとなり,これ
が豊富であるほど高い制電性が発現するこ
とを見出している[木村裕和ほか,導電性不
織布を貼付した履物による歩行人体帯電防
止,静電気学会誌,35,4,pp.183-188,
(2011)].
これらの研究経験から実際に発生する静
電気障災害原因として人体に発生,帯電し
た静電気の瞬間放電による危険性も熟知し
ており,静電気帯電防止に関する知見を有
している.それゆえ,着衣あるいは静電気
帯電防止作業服によって実際のヒトの行動
によって発生する静電気帯電量を正確に把
握することが安全性確保の観点から極めて
重要であることを認識しており,人体帯電
圧測定法による着衣や作業服の試験方法な
らびに基準値が未確立であることに危惧を
覚えている.
以上が研究の背景であり,本研究に取り
組む社会的必要性である.なお,本研究か
ら得られた成果は JIS 化や ISO 国際会議で
の提案などの工業標準化への展開も図って
ゆく.
2.研究の目的
一般的な着衣および各種作業服着用時に
おけるヒトの動作にともなう静電気帯電現
象を明らかにした上で,新規静電気人体帯
電測定法を開発する.現在,着衣関係の静
電気帯電に関する試験方法は,静電気帯電
防止服に限定されており,電気抵抗値また
は摩擦帯電電荷量による基準値が設定され
ているのみである.一般的な着衣や通常の
作業服に関する規定はない.また,現状で
は実際のヒトの行動や動作により人体に生
じる静電気帯電量を知ることはできない.
本研究では,着衣の種類とヒトの諸動作
によって人体に帯電する静電気発生量を正
確に評価できる人体帯電測定法を開発し,
人体からの静電気放電による障災害を抑止
することを目的に JIS 化や ISO への提案も
視野に入れ,実施するものである.
3.研究の方法
一般的な着衣および作業服あるいは静電
気帯電防止作業服着用時におけるヒトの行
動や動作にともなう接触・摩擦帯電現象を

明らかにする.具体的には紳士用スーツ,
作業服を研究対象とする.紳士用スーツに
ついては,一般的なものとそれに制電加工
を施したものを用い,作業服には,一般作
業服と静電気帯電防止作業服を用いる.接
触・摩擦帯電は,繊維素材,組織構造,表
面状態により変化し,再現性に乏しい難解
な物理現象であるが帯電性を主に支配する
要因を追跡,分析し,人体帯電量を正確か
つ定量的に検出できる測定法を開発する.
安全性の評価基準としては,ヒトが静電
気放電ショックを感じる 3,000V および静
電気放電現象が観察される 5,000V を中心
に検討を進める.
平成 27 年度には以下の実験的検討を実
施する.
・紳士用スーツおよび制電加工紳士用スー
ツを用いて人体帯電圧検出方法と測定条件
の探索的調査実験を実施する.
・労働安全,作業安全のリスクを最大限考
慮した条件(例えば,実験温湿度条件や最
も人体帯電圧が高く検出される動作)を確
定する.椅子張り生地と着衣とを約 20°の
角度で一定時間摩擦させた後,動作椅子か
らの立ち上がり動作にともなう人体帯電圧
を予備的に調べるが,その他の動作や行動
についても実験的に検討を進めてゆく.
平成 28 年度以降は以下の実験的検討を
実施する.
・平成 27 年度に考案した新規人体帯電圧測
定法について制電加工事務服,各種作業服
および静電気帯電防止作業服を用いて実験
を行い,考案した試験方法の妥当性と普遍
性に関するエビデンスを収集する.
・人体帯電圧と電気抵抗値などとの関連性
について検討を加え,実際の作業安全を確
保するという観点から最も合理的な試験方
法を構築,提案する.
4.研究成果
人体帯電圧による衣服の静電気帯電性評
価の可能性を探索する目的ならびに市販の
衣服から実際にどの程度の人体帯電圧が生
じるのかを確認する目的から脱衣動作試技
および椅子からの立ち上がり動作試技の 2
通りの試技を考案した.ここでは作業服に
関する研究結果について述べる.
実験には市販の帯電防止未加工作業服 4
点および帯電防止作業服 6 点の合計 10 点を
用い,作業服の下に着用するインナーウエ
アには素材の異なる 5 種類の衣服を選定し
た.
脱衣動作試技は,次の手順で行った.ま

ず,試料作業服上下一対を着用した実験者
が人体帯電圧測定器に接続されているプロ
ーブを作業ズボンのポケットに入れ,恒温
恒湿実験室内の床面に設置した床材上に起
立状態で静止する.その後,試料作業服を
脱ぐ動作を行うが,その際,試料作業服と
インナーウエア間を速さ 90 回/min.で 20 秒
間摩擦運動を行う.所定時間の摩擦運動が
終了後,
直ちに素早く試料作業服を脱衣し,
床面に放置する動作を行った.実験は 1 試
料作業服につき 3 回行い,メモリーハイロ
ガーに記録された人体帯電圧の最大値を測
定データとし,
その平均値を求めた.
なお,
実験終了後,1 回ごとに除電装置を用いて
試料作業服上下一対およびインナーウエア
を入念に除電した.
椅子からの立ち上がり動作試技は,次の
手順で行った.試料作業服の上下一対を着
用した実験者が人体帯電圧測定器に接続さ
れているプローブを握り,静かに市販の事
務椅子に深く座る.その後,椅子の背もた
れ部を試料作業服の背中部で実験者の座骨
結節部を中心に左右約 20°の角度となる
ように速さ 90 回/min.で 60 秒間往復摩擦運
動を行う.所定時間の摩擦運動が終了後,
直ちに素早く椅子から立ち上がる動作を行
った.
実験は 1 試料作業服につき 3 回行い,
立ち上がり直後にメモリーハイロガーに記
録された人体帯電圧の最大値を測定データ
とし,その平均値を求めた.なお,実験終
了後,1 回ごとに試料作業服上下一対およ
び椅子の背もたれ部ならびに座面を入念に
除電した.
また,
実験に用いた 10 種類の試料作業服
および 5 種類のインナーウエアの表面電気
抵抗率を高抵抗計を用いて測定した.
実験は,温度 20±2℃,湿度(20±2)%R.H. ...

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