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大学・研究所にある論文を検索できる 「糖鎖分解の基質特異性解析:グルコシダーゼに対する概念実証」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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糖鎖分解の基質特異性解析:グルコシダーゼに対する概念実証

木室, 佑亮 KIMURO, Yusuke キムロ, ユウスケ 九州大学

2021.03.24

概要

本研究では、グルコースの 2’位にエキソメチレン基を導入したエキソメチレン置換型基質アナログが SMM プローブとして機能するかを検証した。本検証には基質特異性が良く知られている α-グルコシダーゼを用いてまず実証することとした。

以下に各章の要約を示す。

第 2 章では 2 糖型化合物の合成法構築を目指し、修士論文の検討を参考に新たなグリコシルドナーを設計し、検討した。その結果、3 種のアクセプターにおいて副生成物は確認されず、それぞれ α 選択的に目的のグルコシド体を合成することに成功した。得たグルコシド体の保護基を除去することで、所望の 3 種の 2’位エキソメチレン置換型マルトース、およびイソマルトース誘導体の合成を達成した。

第 3 章では合成した 2’-エキソメチレン型 2 糖アナログが、α-グルコシダーゼに対し、1 章で提案した SMM プローブとして機能するかを検証した。

「α-グルコシダーゼの基質となり切断される」か、さらに「α-グルコシダーゼを不可逆に阻害する」か、にフォーカスを絞って検討した。その結果、酵母由来のマルターゼにおいて、基質特異性に応じて基質として認識され不可逆阻害することが分かった。

他の α-グルコシダーゼへの適用範囲拡大を目指し、ポンペ病治療薬である Myozyme®と、ラット小腸抽出物由来の MGAM、SI 混合物に対し、同様に阻害活性を評価した。その結果、2 糖型アナログは Myozyme®及び MGAM のマルターゼ活性と SI のイソマルターゼ活性を阻害せず、これら酵素の基質とならないことが分かった。これは Myozyme®の場合、天然型と比べ明らかに kcat/Km が低下していることから、2 位エキソメチレン基の導入による、反応性低下が原因と考えられた。一方で MGAM と SI 混合物に関しては、マルターゼと同じ挙動を見せたことから、混合物に含まれる何らかの α-グルコシダーゼに対して基質となり、不可逆的に阻害していることが示唆された。

以上のことから、今回合成した 2’-エキソメチレン置換体は、適用範囲が限定的ではあるものの、SMM プローブとしての要件を満たす化合物であることを確認できた。

第 4 章では、酵素と共有結合を形成しているか、確認した。

本検討のため、基質構造をできる限り維持するために 6 位炭素に蛍光タグを導入したプローブを用いて酵母由来のマルターゼに対するラベル化実験を実施した。その結果、マルターゼとプローブは共有結合を形成しており、かつ活性中心と共有結合を形成してい

ることが示唆されたものの精製酵素を用いた夾雑系においては目的タンパクのマルターゼ以外にも非特異的なラベリングが確認され、蛍光タグ自体が阻害活性を示すことから、新たなプローブを設計する必要があることが分かった。

この問題を克服すべく、酵素と共有結合を形成した後に蛍光タグなどレポーターを導入することとし、そのため 6 位にアルキンを導入したアルキンプローブを設計した。以前、当研究室の土井によって単糖型のアルキンプローブは開発されていたが、Huisgen反応の反応効率に問題があった。そこで条件を種々検討することで、反応効率の向上、さらには蛍光タグの酵素への非特異的なラベル化を抑制することに成功した。最後に夾雑系への適応を検討した。その結果、マルターゼのバンドに強い蛍光が確認された。

2’-Exo-Mal を基質としないはずの Myozyme®への若干のラベリングが確認されたものの、マルターゼのとの蛍光強度に有意な差が見られたことから、アルキンプローブはSubstarte-sepcific Metabolism Monitoring に適用可能であることを示唆している。以上のことから、今回はマルターゼおいてのみ想定した通りの機構で共有結合を形成することが確認され、SMM プローブとして利用可能であることが示唆された。

第 5 章では他の糖加水分解酵素への適用を志向し、2’-エキソメチレン型 β-グルコシド体の合成を試みた。6 位にピコロイル基を導入した新たなドナーを設計し、検討した結果、今まで α-選択的だったグリコシル化を 1 級アルコールに対してではあるものの、β-選択的に逆転させることに成功した。最後に保護基を除去することで、所望の 2 種の2’位エキソメチレン置換型 β-グルコシドとその立体異性体の合成を達成した。

エルゴステリルグルコシドアナログが EGCrP2 の mechanism-based inhibitor になっているかを確認するため、インビトロでの阻害活性評価を実施した。しかし、ネガティブコントロールとして用いた α 体、β 体ともに阻害活性が確認された。糖脂質骨格自体の界面活性効果による阻害活性であることが推察されたため DMSO を添加し、界面活性効果の抑制を試みたが、抑制することができなかった。

本研究を通して、加水分解を受ける隣の水酸基をエキソメチレン基に変換するという分子設計概念は α-グルコシダーゼの SMM プローブとして機能する可能性を示唆する結果を得ることができた。この分子設計を他の糖構造へと適用できれば、標的分子がどの糖加水分解酵素に代謝されたか、その酵素活性も同時に検出できることから、さらなる糖加水分解酵素の機能解析、さらには糖鎖の機能解析が期待される。