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大学・研究所にある論文を検索できる 「実験的歯周炎マウスにおける海馬領域の炎症反応」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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実験的歯周炎マウスにおける海馬領域の炎症反応

古玉 大祐 広島大学

2020.03.23

概要

【目的】
高齢化の進行に伴い、認知症患者数は増加している。2025年には認知症患者数は700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症を発症すると予測されている。認知症の60~70%をアルツハイマー型認知症(AD)が占めると報告されている。
ADは患者本人だけでなく、家族や、社会の大きな問題であり、そのメカニズムの解明、治療法開発は大変期待されている。ADの臨床症状が現れる20~30年前から脳組織中で、アミロイドβの沈着や神経変性などの病理学的変化が生じていると報告がされている。また、全身の慢性炎症が持続すると、血流中の炎症性サイトカインが上昇することで、血液脳関門(BBB)の透過性が亢進し、脳組織内で炎症性変化が生じると報告されている。その結果、脳組織内の炎症が、アミロイドβの産生、神経変性や細胞死を誘導し、AD発症の素因になると考えられている。
歯周炎も慢性炎症で、全身疾患との関連が明らかになっている。歯周組織の炎症がAD発症に関わる可能性がある。歯周治療によってAD発症を遅らせることが出来れば、歯周治療が社会に与える影響は極めて大きい。本研究では歯周炎と脳の炎症の関連について詳細に解明することを目的として動物の歯周炎モデルを用いて以下の研究を行った。

【材料と方法】
1.絹糸結紮歯周炎モデル実験は6-8週齢のc57BL/6の雌マウスを用いた。5-0絹糸を用いて上顎両側第二臼歯に結紮し歯周炎を発症させた群を歯周炎症群とした。絹糸を結紮しない群を歯周健常群とした。
2.歯周炎症群の歯周組織、血清中における炎症性サイトカインの検討歯周炎症群(結紮1,4,8週間)と歯周健常群の歯肉中のIL-1β,TNF-α,IL-6のmRNAの発現量をrealtimePCRで調べた。血清中のIL-1β,TNF-α,IL-6の濃度はELISAを用いて解析した。
3.海馬における炎症性サイトカインの発現
3-1.絹糸結紮1週間後の歯周炎症群の海馬を剖出し、海馬のIL-1β,TNF-α,IL-6のmRNA発現量をrealtimePCRで調べた。
3-2.血中のIL-6が海馬におけるIL-1β発現に与える影響①歯周健常群に、1000ng/miceのrecombinantIL-6または生理食塩水を尾静脈から投与し,海馬のIL-1βのmRNA発現量の変化を調べた。②歯周炎症群に、絹糸結紮当日、3日目にIL-6の中和抗体、または対照としてラットIgGを尾静脈から投与し、海馬のIL-1βのmRNA発現量の変化を調べた。
4.歯周炎症群の海馬におけるBBB構成タンパクの発現
4-1.絹糸結紮1週間後の海馬を剖出し、海馬におけるtightjunction関連遺伝子(TJP1,CLDAN5,OCLN)のmRNA発現量をrealtimePCRで調べた。
4-2.絹糸結紮1週間後の全脳を剖出し、組織切片を作成し、CD31(血管内皮細胞の指標分子)とCLDN5を蛍光色素標識抗体による二重染色を行い、血管内皮細胞のCLDN5発現を蛍光顕微鏡下で観察した。
5.血中IL-6が海馬血管内皮細胞のCLDN5発現に対する影響歯周炎症群マウスに、絹糸結紮当日、3日後にIL-6の中和抗体または対照としてラットIgGを尾静脈から投与し、投与7日後に全脳を剖出し、実験4-2と同様の方法で血管内皮細胞のCLDN5発現を観察した。
6.歯周炎症群のBBBの透過性亢進に対する検討歯周健常群、または絹糸結紮7日目の歯周炎症群マウスにbiotin標識3000Dのdextranを尾静脈から投与し、投与10分後に全脳を剖出した。組織切片を作成し、CD31を蛍光色素標識抗体による染色を行い、dextranが血管内から脳組織内へ漏出している像を観察した。

【結果と考察】
1.歯周炎症群では歯肉中のIL-1β,TNF-α,IL-6のmRNA発現が上昇していることを確認した。歯周炎症群では血清中IL-6濃度も上昇していた。歯周組織の炎症は血清中IL-6レベルに影響を与えることが示唆された。
2.歯周炎症群の海馬中のIL-1βmRNA発現は上昇したが、TNF-α,IL-6のmRNA発現に変化はなかった。このIL-1βmRNA発現の上昇はIL-6中和抗体の投与群で抑制された。一方で、歯周健常群にrecombinantIL-6を投与することによって海馬中のIL-1βmRNA発現上昇が誘導された。歯周組織の炎症によって上昇した血清中IL-6が海馬の炎症を誘導すると考えられる。
3.歯周炎症群の海馬組織中のCLDN5mRNA発現が低下し、海馬の血管内皮細胞におけるCLDN5の発現低下が観察された。このCLDN5発現低下はIL-6の中和抗体投与によって回復した。歯周組織の炎症によって上昇した血清中IL-6が海馬のBBBの機能低下を誘導する可能性が示された。
4.歯周健常群に比べ、歯周炎症群で有意に血管外へbiotin標識3000Dの蛍光を発する面積が広かった。このことから、歯周組織局所の炎症が、BBBの透過性の亢進を誘導したと考えられる。

【結論】
マウスにおいて、絹糸結紮によって惹起した歯周組織の炎症は、全身の炎症レベルの上昇を介して海馬の炎症を誘導し、BBBの機能低下によって、脳の炎症に関与している可能性が示唆された。

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