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大学・研究所にある論文を検索できる 「ファブリー病患者の生活の質に関する基礎的研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ファブリー病患者の生活の質に関する基礎的研究

古藤, 雄大 大阪大学

2022.03.24

概要

本論文では、希少難病の一つでライソゾーム病の代表疾患であるファブリー病患者を対象に、治療効果判定や患者の負担を評価することを目的とした疾患特異的QOL尺度の開発を念頭として、1)日本のファブリー病を含むライソゾーム病及びペルオキシソーム病患者の現状を把握するための全国調査、2)酵素補充療法を受けているファブリー病を含むライソゾーム病患者と家族の経験に関するシステマティックレビュー、3)日本の成人期ファブリー病患者に対するインタビュー調査の3つの研究から、ファブリー病患者のQOLに影響与える項目を検討した。

第1章では、ファブリー病の疾患概要と現在の治療方法を概観した。その上で、ファブリー病患者のQOLに関する研究の現状を基に、疾患特異的QOL尺度の開発の必要性について論じた。

第2章では、日本全国の病院を対象とした質問紙調査から、収集した患者情報基に報告症例の重複を検討し、ファブリー病を含むライソゾーム病及びペルオキシソーム病患者の推計患者数や有病率を明らかにした。この結果、ファブリー病の推計患者数は1,658人(95%信頼区間:1,139-2,177人)であった。また、患者の生活に関わる診断法や治療法に関する特徴を疾患ごとに検討し、患者に対して最適な医療やケアを提供できる環境づくりが重要であることを示した。

第3章では、これまでに報告されている、酵素補充療法を行っているライソゾーム病患者と家族の経験に関する質的研究を系統的に収集し、質的知見を統合することで、【治療による身体的側面の小さな変化に気づくことを促す】【疾患の受容と心理的課題への対処の支援】【患者や家族の生活への影響を最小限にするために治療計画を調整する】の3つの統合された知見が明らかとなった。患者の支援においては、身体面以外に、精神面や社会面への支援が重要であることを述べた。また、古典型男性のファブリー病患者に関する質的調査が不足していることを明らかにした。

第4章では、日本の成人期ファブリー病患者を対象として、疾患や治療が生活に及ぼす影響についてインタビュー調査を実施した。内容分析法による分析の結果、【疾患症状に関連する問題】、【診断時期に関連する問題】、【治療に関連する問題】、【社会生活に関連する問題】および【家族関係に関連する問題】の知見が得られた。この結果から、ファブリー病患者のQOLを考えるためには、身体的症状に加えて、診断や治療に関する情報や学校及び就労に関連した社会生活、家族関係に関する情報を考慮する重要性を明らかにした。

以上の研究結果から、ファブリー病患者を対象とした疾患特異的QOL尺度の開発意義が明らかとなり、尺度作成に用いる設問項目を収集することができた。第5章では、これらの研究の成果と限界を明らかにし、看護への示唆を検討した。今後、これらの研究結果を基に疾患特異的QOL尺度の開発を行うことで、ファブリー病患者の生活上の課題に対する有効な看護や支援を検討することが期待される。