がんサバイバーおよび介護者のunmet needsに背景因子が及ぼす影響
概要
背景:
がんサバイバー (がんに罹患した経験のある者)、およびその介護者は、医学的に解決することが困難な、多様な unmet needs を抱えている可能性がある。過去の研究では、がんサバイバー個々人の持つ背景と彼らの unmet needs との間に関連性があることが示唆されている。今回、特定の種類の unmet needs に対して個々人の持つ背景が及ぼす影響を明らかにするために、大規模な解析を実施した。
方法:
我々は混合研究アプローチを用い、2006 年 10 月から 2014 年 5 月まで神奈川県立がんセンター臨床研究所が提供した、がんサバイバーや介護者を中心とした電話相談サービスへの初回相談者の記録を分析した。質的アプローチでは、各相談で言及された unmet needs を抽出し、特定のニーズのテーマに分類する形式で、量的アプローチは各テーマのニーズが発生する頻度と関連する相談者の背景因子との間の多変量解析で構成された。
結果:
調査期間中に合計 13,962 のカウンセリングケースが得られ、これらのうち、 1,938 件が分析の対象となった。Unmet needs は概ね過去の研究と同様に 16 のテーマに分類された。各ケースの有する unmet needs の平均数は 1.58(標準偏差= 0.86)であった。多変量解析では、相談者の性別、相談者の年齢、治療コース、症状の有無などの項目内比較で、各テーマの発生頻度に有意差を認めた。症状のあるサバイバーは、症状のないサバイバーよりも「physical」および「emotions/mental health 」のニーズが目立ち、「education/information 」、「resources」、および「cure」のニーズが少なかった。一方でサバイバーに限った解析では、がんの種類によって unmet needs に有意差はみられなかった。
結論:
この大規模な研究は、個々の持つ背景ががんサバイバーと彼らの介護者の unmet needs に関連していることを示した。将来的には個々の背景因子より、より個別化された患者サポートの提供体制が求められるであろう。