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大学・研究所にある論文を検索できる 「酵母RNAヘリカーゼDed1およびDbp1によるTORC1活性制御機構の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

酵母RNAヘリカーゼDed1およびDbp1によるTORC1活性制御機構の解析

亀井(豊水), 理恵 東京大学 DOI:10.15083/0002006385

2023.03.24

概要



査 の 結 果 の 要 旨





亀井(豊水)理恵

細胞は、栄養状態やストレスなどの細胞内外のシグナルを統合し、自身の成長と代謝を制
御している。この制御を担うのがシグナル伝達複合体 TORC1(target of rapamycin complex 1)
である。TORC1 経路の制御因子と制御機構は真核生物で広く保存されており、哺乳類にお
いては多くの疾患で TORC1 制御に異常が生じていることが知られるが、制御機構の詳細は
明らかになっていない。本研究は、酵母 TORC1 経路の新規制御因子を探索するべくスクリ
ーニングを行い、新規制御因子候補として見出した ATP 依存性 RNA ヘリカーゼ Ded1 とそ
のパラログの Dbp1 による TORC1 活性制御機構の解析を行ったものである。本論文は、序
論と材料・方法、結果ならびに考察より構成されている。
序章では、酵母および哺乳類 TORC1 経路とその制御機構、ならびに Ded1 と Dbp1 の機
能と制御について述べた後、TORC1 と Ded1 の関係についてこれまでの知見がまとめられ
ている。
結果では、はじめに温度感受性変異株 lst4-ts 株および lst7-ts 株の取得と multicopy
suppressor の探索を行なっている。TORC1 を活性化に導く Lst4 および Lst7 の二量体に変異
を誘起し、lst4-ts 株および lst7-ts 株を取得した。これらの株に、酵母遺伝子ライブラリーを
multicopy plasmid を用いて導入し、制限温度で生育を回復させるような遺伝子として DED1
と DBP1 を見出している。
次に、Ded1 および Dbp1 による制限温度下の生育回復が TORC1 経路に関与したものか否
かを検討している。既知の 2 つの独立した TORC1 上流経路である Pib2 経路と Gtr 経路のそ
れぞれの主要因子が欠損した株で Ded1 と Dbp1 を高発現し、TORC1 の阻害剤ラパマイシン
への感受性を検討した。その結果、Dbp1 高発現によるラパマイシン耐性の亢進は Gtr 経路
依存的であることが示された。Gtr 経路からのシグナルは、Gtr 二量体の活性化状態に応じ
て TORC1 へ伝達される。そこで、この効果が Dbp1 高発現が Gtr 二量体のグアニンヌクレ
オチド結合状態を変化させた結果か否かを検討し、そうではないという示唆を得ている。
さらに、既知の TORC1 上流経路を介さない制御機構として、TORC1 と Gtr 二量体の局在
について検討している。TORC1 はその局在によって活性が制御されていることが知られて
いる。一方、Ded1 は過剰発現などによってストレス顆粒を形成し mRNA の局在を制御する
ことから、TORC1 の局在をも制御する可能性が検討された。しかし、Ded1 および Dbp1 の
高発現によって TORC1 がストレス顆粒に共局在する様子は観察されず、Gtr 二量体の局在
にも変化はなかった。したがって、Ded1 および Dbp1 は TORC1 および Gtr 二量体の局在制
御により生育を回復させているわけではないことが示されている。

また、Ded1 と Dbp1 には、mRNA に翻訳開始前複合体の結合を促し、翻訳を促進させる
役割があると報告されている。このことを踏まえ、Ded1 および Dbp1 の高発現によって、
翻訳活性の回復を介した TORC1 活性の亢進が起こっている可能性について検討している。
ポリソーム解析の結果、Ded1 および Dbp1 の高発現によって、制限温度下の翻訳が亢進し
た一方で、Ded1 の C 末端領域を欠失した Ded1-CT 高発現では、翻訳活性と生育は回復し
なかった。これに対して、Ded1-CT 高発現は制限温度下で lst7-ts 株の TORC1 活性を亢進
させたことから、TORC1 活性の亢進は翻訳活性の回復によるものではないことが示されて
いる。この時、Ded1 および Dbp1 高発現による TORC1 活性低下の抑制は明確には確認でき
なかったため、low copy plasmid を用いて Ded1 を高発現し、制限温度下の lst7-ts 株におけ
る TORC1 活性を検討している。その結果、全長の Ded1 でも TORC1 活性低下を抑制する
ことが分かった。このことから、Ded1 自身に TORC1 活性化能があることが明らかになっ
た。
考察では、これらの結果から推察される Ded1 および Dbp1 による TORC1 活性制御モデ
ルが検討されている。さらに、翻訳制御因子である Ded1 および Dbp1 が TORC1 活性を制
御する生理的意義についても論じている。
以上、本論文は RNA ヘリカーゼである Ded1 および Dbp1 による TORC1 活性制御機構の
解析を通して、翻訳制御系と代謝調節の間のこれまでに考えられてきた以上に密接な機能
的連関を明らかにしたもので、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審査員
一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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