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大学・研究所にある論文を検索できる 「リボソームタンパク質RPS19によるがん抑制機構の解明およびGRWD1によるp53転写活性化能の制御機構の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

リボソームタンパク質RPS19によるがん抑制機構の解明およびGRWD1によるp53転写活性化能の制御機構の解明

藤山, 拓己 FUJIYAMA, Hiroki フジヤマ, ヒロキ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

リボソームタンパク質RPS19によるがん抑制機構の解
明およびGRWD1によるp53転写活性化能の制御機構の
解明
藤山, 拓己

https://hdl.handle.net/2324/6787545
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(創薬科学), 課程博士
バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(様式5)




論文題名

:藤山

拓己

:リボソームタンパク質 RPS19 によるがん抑制機構の解明および
GRWD1 による p53 転写活性化能の制御機構の解明





:甲















第 1 章:リボソームタンパク質 RPS19 によるがん抑制機構の解明
リボソームとは、全ての生物に必須なタンパク質合成を担う複合体である。リボソームタンパ
ク質遺伝子の欠失などによるリボソーム生合成の異常はリボソーム病と呼ばれる一連の疾患群を
引き起こす。近年、リボソーム病の一部において高い発がん性を示すものが報告されており、そ
の代表例としてダイアモンドブラックファン貧血(DBA)が挙げられる。DBA は先天性の造血不全
症として知られており、主な症状は骨髄前駆細胞数の減少に伴う大球性貧血であるが、白血病や
大腸がん、骨肉腫など様々ながんを併発するリスクが高い疾患である。DBA 患者において変異や
欠失が認められる DBA 関連遺伝子として 10 以上ものリボソームタンパク質遺伝子が報告されて
おり、その中で最も高頻度に変異が見られる遺伝子が RPS19 遺伝子である。しかしながら、RPS19
の機能と DBA の高い発がん性との機能的関連はこれまで全く不明であり、RPS19 のがん抑制活
性の有無を実験的に示した報告も存在しない。そこで本研究は、RPS19 のがん抑制活性の有無を
明らかにし、その分子メカニズムを解明することを目的とした。
当研究室の先行研究において、16 型 HPV E7 および活性型 KRAS を導入したヒト正常線維芽
細胞である HFF2/T/E7/KRAS 細胞において siRNA を用いて RPS19 を発現抑制し、軟寒天コロ
ニー形成試験を行われた。その結果、RPS19 の発現抑制により大型コロニーの形成が観察された。
すなわち、ヒト正常細胞において RPS19 ががん抑制活性を有することが新たに示唆された。
本研究ではまず、RPS19 のがん抑制活性についてさらなる知見を得るため、shRNA を導入し
て RPS19 を安定的に発現抑制した HFF2/T/E7/KRAS 細胞を樹立し、ヌードマウスにおける造腫
瘍試験を行った。その結果、RPS19 発現抑制細胞で有意な腫瘍サイズの増大が認められた。さら
に、RPS19 を安定過剰発現させた p53 野生型の HCT116 細胞を用いて軟寒天コロニー形成試験
を行った。その結果、RPS19 安定発現細胞はコントロールと比較して大型コロニーの形成が減少
した。一方で、p53 を欠損させた HCT116 細胞ではそのような傾向は見られなかった。以上から、
RPS19 はヒト細胞において p53-status 依存的にがん抑制活性を示す可能性が示唆された。
次に、RPS19 のがん抑制機構の解明に着手した。質量分析法による RPS19 新規結合因子の網
羅的探索を行った結果、p53 の転写活性化能を抑制することが報告されている SET が同定された。
重要なことに、SET が RPS19 と特異的に結合しており、SET との結合を失った RPS19 変異体
を HCT116 細胞において過剰発現しても大型コロニーの形成は抑制されなかった。さらに、ルシ

フェラーゼアッセイによって SET および RPS19 野生型もしくは変異体が p53 の転写活性化能に
及ぼす影響を調査した結果、SET の発現によって p53 の転写活性化能は抑制され、RPS19 は SET
の p53 転写抑制能を阻害した。一方で、SET との結合を失った RPS19 変異体は野生型と比較し
て SET 阻害機能が減弱していた。このことから RPS19 は少なくとも部分的には SET との結合
を介してがん抑制活性を発揮していることが示唆された。
以上から、RPS19 がヒト細胞においてがん抑制活性を示し、SET との相互作用を介して SET
の機能を阻害することによって、p53 の転写活性化能を制御していることが示唆された。
第 2 章:GRWD1 による p53 転写活性化能の制御機構の解明
GRWD1 は DNA 複製前複合体(pre-RC)の形成において重要な Cdt1 の新規結合因子として同定
されたタンパク質である。GRWD1 はヒストンシャペロンとして機能し、複製ヘリカーゼである
MCM のローディングを促進すること、複製開始領域だけでなくゲノムワイドにクロマチン構造
を制御すること、がん細胞で過剰発現しており、細胞のがん化を促進することが報告されていた。
また、GRWD1 が p53 の標的遺伝子のプロモーター上に結合する可能性も示されていた。以上の
知見から、本研究では、GRWD1 が p53 の転写活性化能を抑制することによっても発がんを促進
する可能性を検討することにした。
先行研究において、GRWD1 が p53 による p21 転写反応を抑制すること、および p53 依存的
に p21 遺伝子プロモーターに結合することが示唆されていた。しかしながら、GRWD1 と p53 の
詳細な結合様式や、GRWD1 による p53 の転写抑制機構は明らかではなかった。そこで私は、
GRWD1 と p53 の機能的および物理的な相互作用について詳細な解析を開始した。
まず、ChIP-qPCR 解析によって GRWD1 の MDM2 遺伝子プロモーターへの結合を調査した。
その結果、GRWD1 は p21 遺伝子だけでなく、MDM2 遺伝子のプロモーター領域にも p53 依存
的に結合することが示唆された。また、FAIRE-qPCR 解析によって、GRWD1 発現抑制時の p21
プロモーター領域のクロマチン構造を調査した結果、GRWD1 がストレス時の p21 プロモーター
領域のクロマチンオープネスを抑制することが示唆された。次に、精製タンパク質を用いたプル
ダウンアッセイによって、GRWD1 が p53 と直接結合することが示唆された。さらに、GRWD1
および p53 の部位欠失変異体を用いて結合部位を調査したところ、GRWD1 の N 末端領域と p53
の DNA 結合ドメインがそれらの結合に重要であることを明らかにした。最後に、公共のデータ
ベースを用いてメラノーマ患者におけるデータを解析したところ、p53 野生型の患者群では、
GRWD1 高発現群は低発現群より有意に予後不良であったが、p53 変異型の群では、GRWD1 の
発現量の高低と予後との相関は見られなかった。また、p53 野生型、かつ、GRWD1 高発現の患
者群では、p53 標的遺伝子である GADD45A および NOXA の発現低下が認められ、それらの症
例は有意に予後不良であった。
以上から、GRWD1 が p53 と直接結合することにより p53 の転写活性化能を抑制すること、そ
してその結果がんの進行を促進する可能性が考えられる。

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