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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Strong BrØnsted Base-catalyzed Carbon-Carbon Bond Forming Reactions Using Alkenes」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Strong BrØnsted Base-catalyzed Carbon-Carbon Bond Forming Reactions Using Alkenes

佐藤, 維央 東京大学 DOI:10.15083/0002001904

2021.10.04

概要

有機合成化学において、炭素―炭素結合生成反応は有機分子の基本骨格を構築する重要な反応であり、その中でも触媒的炭素―炭素結合生成反応は、より廃棄物を伴わない効率的な反応手法であるため、これまでに様々な反応が開発されている。しかし、原子効率の低さや用いることのできる原料の制約等の問題から、より効率的な反応手法の開発が望まれている。このような背景のもと、本論文は、反応性の低い炭素―炭素二重結合を含む炭化水素類(アルケン類)を直接原料として用いる触媒的炭素―炭素結合生成の開発について、3章に渡って述べたものである。

序論に続く第1章では、強塩基触媒を用いる低酸性原料の触媒的付加反応の反応進行における重要要素の解明、および強塩基触媒を用いたα,β—不飽和ホスホネートに対する低酸性カルボニル化合物の不斉 1,4-付加反応について述べている。塩基触媒を用いたカルバニオン生成を経る付加型の炭素―炭素結合生成反応は、高い原子効率を実現できる有効な反応であるが、反応点に酸性度の極めて低い水素原子を有する原料(低酸性原料)を反応に直接用いることは従来困難であった。しかし、その反応中間体の構造を制御して高い塩基性を持たせることにより、触媒的反応が実現可能であることがわかっている。一方で、その触媒的反応の進行に必要な要件は明確ではなかった。本論文ではその点について研究し、原料の反応点の水素原子の酸性度と反応中間体の共役酸の酸性度との差が適切な場合に、目的の反応が円滑に進行することを明らかにしている。また、ホスホネート部位を有する有機化合物は天然物や生理活性物質に見られる構造であり、それらの効率的構築法の開発が強く望まれている。その中でも、α,β—不飽和ホスホネートへの 1,4-付加反応はホスホネート部位を炭素骨格に導入する有用な反応であるが、α,β—不飽和ホスホネートの反応性の低さから開発の成功例が非常に少なかった。本論文では、強塩基であるカリウムアミドとキラル大環状クラウンエーテルを触媒として用いることにより、低酸性カルボニル化合物であるプロピオンアミドとの不斉 1,4-付加反応が高い収率にて進行し、高いジアステレオ選択性および良好なエナンチオ選択性が発現することを明らかにしている。

第2章では、反応点に極めて低い酸性度を有する炭化水素であるトルエン等のアルキルアレン類の、スチルベン等の求電子性の低い低反応性アルケンに対する触媒的付加反応について述べている。トルエン等のアルキルアレンは有機化学において溶媒として用いられる程安定な化合物であるが、それらを事前修飾なく直接触媒反応に使用することは困難であった。本論文では、低反応性のアルケンとカルバニオンが反応する際に生成する反応中間体が強塩基性を有することに着目し、強塩基性触媒を用いるアルキルアレンの低反応性アルケンへの触媒的付加反応を開拓した。強塩基であるアルキルカリウムと多座配位子であるトリアミンを触媒量用いることにより、様々なアルキルアレンとアルケンが高効率的に反応することを明らかにしている。アルケンとしては、スチルベン誘導体やスチレン誘導体、アルケニルシラン等を用いることができ、いずれも良好な収率で目的物が得られることを見いだしている。また、本反応の不斉合成反応への適用の可能性についても明らかにしている。

第3章では、アルキルアレンと同様に反応点に極めて低い酸性度を有する炭化水素である単純アルケンを直接原料として用いるイミンへ触媒的アリル化反応について述べている。プロペンやヘキセン等の単純アルケンは、そのアリル位水素の反応性が極めて低いため、イミンのアリル化反応に直接原料として用いることは困難であった。本論文では、イミンの窒素上置換基の最適化を通して反応中間体の塩基性を制御することにより、単純アルケンを原料とするイミンの直接的触媒的アリル化反応を実現している。本反応で得られるホモアリルアミンは生理活性物質の合成中間体として有用である。これらの結果は、安価で入手容易であるが反応性が低いために直接原料としての使用が困難であった炭化水素類を高原子効率的反応に用いた希有な例であり、その学術的意義は極めて高い。さらに、化学プロセスの高効率化につながる基礎技術であることから産業界に与えるインパクトも大きいものと評価される。

参考文献

[a] Yamashita, Y.; Kobayashi, S. Chem. A Eur. J. 2018, 24, 10.

[b] Vanjari, R.; Singh, K. N. Chem. Soc. Rev. 2015, 44, 8062.

[c] Fleming, P.; O’Shea, D. F. J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 1698.

[d] Yus, M.; González-Gómez, J. C.; Foubelo, F. Chem. Rev. 2013, 113, 5595.

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