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大学・研究所にある論文を検索できる 「Analyses of interactions between mosses and rocks using micro-spectroscopic methods」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Analyses of interactions between mosses and rocks using micro-spectroscopic methods

山北, 絵理 大阪大学

2021.03.24

概要

コケ植物は、新たに形成された溶岩の上などに最初に生育し、岩石を風化して土壌を形成する第一歩となる。しかし、コケが岩石から受ける作用や、岩石の風化にどのように作用しているかは未解明である。そこで本研究では、微小部分光分析手法を用いて、岩石に直接生育しているコケについて元素分布や化学形態を分析し、コケが岩石から取り込む元素とそれらの役割、さらにコケと岩石の境界部に注目して、相互作用の解析を行った。

まず、コケ中に含まれる元素量と岩石中の元素量の相関を評価した。石灰岩上と花崗岩上に密着して生えているコケの葉と基質岩石の元素分布と量をエネルギー分散型蛍光X線分光分析装置付き走査型電子顕微鏡 (SEM-EDS)を用いて、低真空・非蒸着で分析した。これらの分析結果と先行研究のデータから、岩石に直接生えるコケと岩石中のSi, Al, K, Ca, Mg Fe含量の相関を評価した。Siでは逆相関の傾向がみられたが、造岩鉱物からのSiの溶脱速度がSi含量の高い鉱物ほど遅いためと考えられる。Alでは、岩石からの溶脱はAl含量の多い岩石ほど大きいが、コケ中では逆の相関がみられた。高濃度のAlは、植物の成長を阻害することが知られており、コケはAlを避けるなんらかの機構を持っている可能性がある。コケと岩石中のK, Ca, Mg, Fe含量では正相関の傾向がみられた。これらの元素は植物にとっての必須栄養元素であり、コケの水分保持や光合成に利用されると考えられる。

次に、コケと岩石が土壌を介さずに直接接している部分を調べるために、ヤマトキヌタゴケ(Homomalliumjaponica-adnatum)というコケと石灰岩の境界部分を分析した。分析には、顕微可視、赤外、ラマン分光器、低真空・非蒸着SEM-EDS、低真空・非蒸着電界放射型 (FE-SEM-EDS)、X線光電子分光(XPS)を用いた。コケの仮根などが岩石に侵入している様子は見られず、このコケによる石灰岩の物理風化作用は小さいと考えられた。また、コケの有無による細菌叢も分析したが、細菌種の違いは見いだせなかった。一方で、コケと石灰岩の境界部分に、硫黄を多く含む多糖類が存在する場合があることを見出した。このような多糖類は、コケの岩石上への固着に寄与し、植物にとって必須である窒素などの保持の役割を果たすと考えられる。

さらに、岩石から吸収されたカルシウムが水分保持へ寄与する効果を、植物細胞壁中に存在するペクチンという多糖類のフィルムを用いて評価した。相対湿度制御セル中にペクチンフィルムを設置し、相対湿度を変えることで吸着した水の重量と水の結合部位を、水晶振動子微小天秤(QCM)と顕微赤外分光器を組み合わせて解析した。測定には、カルシウムを加えていないペクチンフィルム(カルシウムなし)と、カルシウムを加えて架橋させたペクチンフィルム(カルシウムあり)を用いた。QCMの測定結果から、カルシウムありでは、カルシウムなしに比べ2倍以上の水が吸着することがわかった。各湿度での赤外スペクトルから低湿度でのものを引いた差スペクトルにおけるOH伸縮振動吸収帯を調べると、カルシウムなしのペクチンには水素結合間距離の異なる3種の水が吸着したことがわかった。一方でカルシウム架橋していないペクチンには、液体の水に近い水が多く吸着したことがわかった。また、赤外スペクトルのピークシフトから、ペクチン骨格のカルボキシル基のC=Oやピラノース環のOHに水が吸着したことが示された。カルシウムなしのペクチンでは、水はペクチン骨格の親水基に吸着しているが、カルシウム架橋したペクチンでは、それらの水に加え、液体水に近い水がペクチンの網目構造内に取り込まれるため、吸着水量が増加したと考えられる。

以上の結果から、次のようなコケ-岩石相互作用の作業仮説を提案した。(1) Ca, Mg, Feといった植物にとっての栄養元素をコケは岩石からも取り込み利用している。一方で生育を阻害するAlのような元素は除外される。(2) コケは体を岩石上に定着させるために多糖類を用いており、このような多糖類はコケが固定した窒素などの栄養分を保持する働きをする。(3) 岩石から吸収された元素はコケの生理活性に寄与する。例えば細胞壁中のペクチンに結合したカルシウムはコケの水分保持量を増加させる。本研究で用いた、微小部を非破壊的に測定できる分光分析手法は、コケ・岩石境界のような微小で前処理が難しく、かつ有機無機複合物質でできている複雑な試料の分析に有効であり、今後さらに多様な種類のコケと岩石の境界部分の解析を行うことで、コケ・岩石の直接的な相互作用の解明につながると期待される。

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