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大学・研究所にある論文を検索できる 「Richard Thompson's groups from the viewpoint of geometric group theory」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Richard Thompson's groups from the viewpoint of geometric group theory

加藤, 本子 東京大学 DOI:10.15083/0002003714

2022.04.20

概要

この論文では、幾何学的群論の観点により、Richard Thompson群とその一般化である有限生成無限単純群について調べる。Richard Thompson群(以下Thompson群)は1960年代にRichard Thompsonによって発見された群であり、F・T・Vの3種類がある。F(T、V)は単位区間[0,1](S1、Cantor空間)の自己同相群の無限部分群として定義される。TとVは有限表示を持つ無限単純群の初めての例である。Fもまた有限表示を持ち、その交換子部分群は単純であるが、F自身は単純群でない。F、T、Vには多くの一般化が知られている。

Thompson群とその一般化について、この論文では二つの問題を考える(第一部・第二部)。第一部では、これらの群の非正曲率距離空間への作用の固定点性質について調べる。このような固定点性質のうち最も古典的なものの一つは、Serreの性質FA(以下性質FA)である。群Gの木への任意の等長作用が大域的固定点を持つとき、Gは性質FAを持つと言う。有限生成群Gが性質FAを持つことと、Gが融合積の構造を持たず、Zへの全射を持たないことは同値である([11])。

性質FAの一つの一般化として、有限次元CAT(0)方体複体への群作用の固定点性質がある。ここで、距離空間XがCAT(0)空間であるとは、Xが測地的であって任意の測地三角形がユークリッド空間内の比較三角形よりも太っていないことを言う。Hilbert空間やHadamard多様体はCAT(0)空間である。またCAT(0)方体複体は、木の高次元版とみなせる(木は1次元CAT(0)方体複体)。群GのCAT(0)方体複体への任意の等長作用が大域的固定点を持つとき、Gは性質FWを持つと言う。また、群Gのk次元CAT(0)方体複体への任意の等長作用が大域的固定点を持つとき、Gは性質FWkを持つと言う(kは自然数)。性質FW及びFWkは、性質FAと「Kazhdanの性質(T)」の中間の性質である((T)⇒FW⇒FWk⇒FA)。性質FWkは、主に群の表現との関連性から、SLn(Z[1/p])([6])・曲面の写像類群Mod(Sg)([3])・自由群の自己同型群Aut(Fn)([12])などの群について調べられている。

Thompson群については、TとVが性質FAを持つことが知られている([8])。ただしThompson群Fは、Zへの全射を持ち、従って性質FAを持たない。一方でF・T・Vはいずれも性質FWを持たないことが知られている([7])。これらの結果を踏まえると、TやVが各自然数kについて性質FWkを持つかどうかは、自然な問いと言える。

この研究では距離空間に対する条件をより弱め、回帰的Busemann空間へのsemi-simpleな群作用の固定点性質を考える。Busemann空間は距離関数が凸性を持つ距離空間として定義され、CAT(0)空間の一般化となっている。回帰的Busemann空間の例としては、完備CAT(0)空間の他、ノルムが狭義凸の有限次元Banach空間などがある。ある群は、k次元の回帰的Busemann空間への任意のsemi-simpleな群作用が大域的固定点を持つとき、性質FBs.s.kを持つと定義する。各自然数kについて、群Gが性質FBs.s.kを持てば、Gは性質FWkを持つ。

第一章の主定理として、群とその元の組(G,g)に対し、Gがk次元の回帰的Busemann空間にsemi-simpleに作用するときgが固定点を持つための十分条件を与える。この十分条件は組(G,g)に関するものであり、作用する距離空間の情報を用いずに検証することができる。主定理の応用として、Thompson群Tが任意の自然数kに対して性質FBs.s.kを持つことを示す。さらに、Tの一般化としてKim、KoberdaとLodhaによって導入された「リング群」(S1の自己同相群の有限生成部分群)が性質FBs.s.kを持つことを示す。Higman-Thompson群Tn(nは自然数)はリング群の例である。また、リング群は群同型の意味で非可算無限種類の群を含むことが知られている。Thompson群Fとその一般化については、「相対的な」性質FBs.s.kを持つことが示される。ここで相対的な性質FBs.s.kとは、k次元の回帰的Busemann空間への任意のsemi-simpleな群作用に対して、群のある部分群(Fの場合、交換子部分群の任意の有限生成部分群)が共通の固定点を持つことを言う。Thompson群Vとその一般化(Higman-Thompson群Vn・高次元Thompson群・Nekrashevych-R¨over群)についても、Bruhat-Titsの固定点定理の拡張を用いることで、群作用のsemi-simplicityの仮定を除いた、より一般的な固定点性質(性質FBkと表す)を示す。

第二章では、Thompson群の一般化の部分群構造、特に直角Artin群の埋め込み可能性について調べる。任意の自然数nに対し、Thompson群FはZnと同型な部分群を持つ。一方、Fは階数2の自由群F2と同型な部分群を持たないことが知られている。Tは任意の自然数nに対し、Zn及びFnと同型な部分群を持つが、それ以外の直角Artin群はTに埋め込まれない。これらの事実より、この研究では、Thompson群Vとその一般化について直角Artin群の埋め込み可能性を調べる。

Thompson群VはZn、Fnとそれらの直積のように、多くの直角Artin群を部分群として持つ。しかし、Vに埋め込めない直角Artin群の存在も知られている。例えば、融合積Z∗Z2はVへの埋め込みを持たない([2])。さらに、この群Z∗Z2は直角Artin群のVへの埋め込みに関する唯一の障害であることが知られている([5])。

この論文では、Vの一般化である高次元Thompson群(Brin-Thompson群)について、直角Artin群の埋め込み可能性について述べる。各自然数nについて、n次元Thompson群nVは、カントール空間のn個直積の自己同相群の部分群として定義され、1VはVと一致する。すべてのnVは有限表示を持つ無限単純群である([4])。nVはより次元の大きいmVへ自然な埋め込みを持つため、nVは次元nが大きくなるほど、より多くの群を部分群として含む。任意の直角Artin群は、nを十分大きく取ればnVに埋め込みを持つことが知られている([1])。このことから、任意の直角Coxeter群もまた、nを十分大きく取ればnVに埋め込みを持つことが従う。第二章の主定理として、任意の直角Artin群(直角Coxeter群)からあるnVへの埋め込みの構成法を新たに与える。この構成法より、ある直角Artin群(直角Coxeter群)を含むnVの最小の次元nについてのより良い評価が得られる。また主定理の系として、任意の自然数nについてZ∗ZnがnVに埋め込まれることが従う。

参考文献

[1] J. Belk, C. Bleak and F. Matucci, Embedding right-angled Artin groups into Brin-Thompson groups, preprint, arXiv:math/1602.08635.

[2] C. Bleak and O. Salazar-D´ıaz, Free products in R. Thompson’s group V , Trans. Amer. Math. Soc. 365.11, 5967–5997, 2013.

[3] M. R. Bridson, Semisimple actions of mapping class groups on CAT(0) spaces, preprint, arXiv:math/0908.0685.

[4] M. G. Brin, Higher dimensional Thompson groups, Geom. Dedicata, 108, 163–192, 2004.

[5] N. Corwin, K. Haymaker, The graph structure of graph groups that are subgroups of Thompson’s group V, preprint, arXiv:math/1603.08433.

[6] B. Farb, Group actions and Helly’s theorem, Advances in Mathematics 222 (2009) 1574–1588.

[7] D. S. Farley, Actions of picture groups on CAT(0) cubical complexes, Geom. Dedicata 110, 221–242, 2005.

[8] D. S. Farley, A proof that Thompson’s groups have infnitely many relative ends, J. Group Theory 14, 649–656, 2011.

[9] A. Genevois, Hyperbolic and cubical rigidities of Thompson’s group V , preprint, arXiv:math/1804.01791.

[10] S. Kim, T. Koberda and Y. Lodha, Chain groups of homeomorphisms of the interval and the circle, arXiv:math/1610.04099v2.

[11] J. P. Serre, Arbres, amalgames, SL2, Soc. Mat. France, Ast´erisque 46, 1977.

[12] O. Varghese, Fixed points for actions of Aut(Fn) on CAT(0) spaces, M¨unster J. of Math. 7, 439–462, 2014.

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