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大学・研究所にある論文を検索できる 「マウス胚性腫瘍細胞P19の神経細胞分化過程におけるPrdm遺伝子の機能に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マウス胚性腫瘍細胞P19の神経細胞分化過程におけるPrdm遺伝子の機能に関する研究

馬場, 映 BABA, Akira ババ, アキラ 九州大学

2022.03.23

概要

個体発生における細胞分化過程では、遺伝子の発現制御が重要な役割を果たしている。特に細胞 分化の方向を決める過程では、遺伝子の発現を制御する仕組みの 1 つとしてエピジェネティック制 御が機能している。エピジェネティック制御の分子機構として、DNA のメチル化やヒストンの化 学修飾、例えば、リン酸化やアセチル化、メチル化、ユビキチン化、SUMO 化および ADP リボシ ル化などが知られている。本論文で注目した Prdm 遺伝子はタンパク質へのメチル基転移活性を持 つPR ドメインとDNA やタンパク質に特異的な結合活性を持つZinc Finger ドメインを有しており、エピジェネティック制御に関与する因子であると推定されている。Prdm 遺伝子はヒトで 16 種、マ ウスやアフリカツメガエルで 15 種が同定されているが、それらの機能は未解明のものが多い。本 論文では、細胞分化過程における Prdm 遺伝子の機能解明を目的とした。特に神経細胞分化過程に おける機能を解析するために、マウス胚性腫瘍細胞 P19(P19 細胞)を用いた。P19 細胞は神経細胞 や筋細胞への分化能をもつ幹細胞で、レチノイン酸処理によって神経細胞分化が誘導され、神経細 胞分化過程の研究に用いられている。

まず、P19 細胞の神経細胞分化過程を詳細に解析するため、網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、レチノイン酸によって神経細胞分化が誘導された細胞では、興奮性および抑制性ニューロンなど様々なニューロン特異的な遺伝子が発現誘導されること、また、アストロサイトやオリゴデンドロサイトなどのグリア細胞特異的な遺伝子も発現すること、さらに、これらの細胞分化において機能することが示されている転写制御因子も発現することが明らかとなった。ニューロンとグリア細胞は共に神経幹細胞から分化する細胞であり、P19 細胞は多様な神経細胞の幹細胞として機能し、レチノイン酸による分化誘導系は神経細胞分化過程のモデル系になりうることが判明した。また、Prdm 遺伝子群の発現を解析した結果、Prdm6、Prdm8、Prdm12、および Prdm13 が P19細胞の神経細胞分化過程で発現していることが明らかとなり、これらの Prdm 遺伝子が神経細胞分化過程で機能していることが示唆された。

次に、神経細胞分化過程における Prdm12 遺伝子の機能解明のため、Prdm12 を欠損させた細胞 (Prdm12-KO 細胞)を作製し、解析を行った。Prdm12-KO 細胞では、定量的な遺伝子発現解析からニューロン特異的な遺伝子 Tubb3 の発現の減少、また、チューブリンに対する抗体染色では神経突起の異常が認められたことから、Prdm12 がニューロンの分化過程に機能することが示唆された。また、網羅的な遺伝子発現解析から Prdm12-KO 細胞において抑制性ニューロン特異的な遺伝子の発現の減少が確認され、Prdm12 が抑制性ニューロンの分化を制御することが示唆された。抑制性ニューロン分化過程で機能することが報告されている転写因子 Dbx1 や Nkx6-1 の発現が Prdm12の過剰発現によって誘導されたことから、Prdm12 が Dbx1 や Nkx6-1 遺伝子の発現を制御することによって抑制性ニューロンの分化を制御することが明らかとなった。また、Prdm12-KO 細胞において神経幹細胞やアストロサイト、オリゴデンドロサイトに特異的な遺伝子の発現が減少しており、Prdm12 がニューロン以外の神経細胞の分化過程にも機能することも明らかとなった。

続いて、Prdm13 を欠損させた細胞(Prdm13-KO 細胞)を用いて、P19 細胞の神経細胞分化過程における Prdm13 の機能解析を行った。その結果、Prdm13-KO 細胞において、Tubb3 の発現が減少すること、さらに、興奮性や抑制性のニューロンに特異的な遺伝子の発現も減少することが明らかになった。また、形態観察から、神経突起を形成した細胞がほとんど観察されず、Prdm13 が大部分のニューロン分化過程に関与することが示唆された。一方で、アストロサイトやオリゴデンドロサイトなどのグリア細胞に特異的な遺伝子の発現は増加することから、Prdm13 がグリア細胞の分化を抑制していることが判明した。神経発生過程の初期では、神経幹細胞からニューロンが分化し、グリア細胞の分化は抑制されているが、後期ではニューロンの分化は抑制され、グリア細胞の分化が誘導される。Prdm13 は、神経発生過程の初期においてはニューロンの分化過程、後期にはグリア細胞の分化過程に機能していることが示唆された。また、Prdm13-KO において、損傷したニューロンで発現する Csf1 やアポトーシスに関連する遺伝子の発現が増加することから、Prdm13 が神経細胞分化過程でニューロンの生存や保護に関与することも示唆された。

以上、本論文では P19 細胞の神経細胞分化過程において、Prdm12 および Prdm13 がニューロンやグリア細胞の分化重要な機能を持つことを明らかにした。本論文の成果は、エピジェネティック制御による細胞分化の機構解明に新たな知見を提供するものであり、さらに、生物の発生や再生医療の分野に貢献することが期待される。

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