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大学・研究所にある論文を検索できる 「霊長類iPS細胞を用いた初期神経発生動態の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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霊長類iPS細胞を用いた初期神経発生動態の解析

仲井, 理沙子 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23748

2022.03.23

概要

ヒトを特徴づける高度な認知機能の多くは大脳皮質が担っており、そのサイズは最も近縁なチンパンジーと比較しても3倍以上大きい。脳サイズの増大は細胞数の増加と相関することから、増殖と分化によって脳を構成する細胞を生み出す胎生期の神経幹細胞動態の種差が脳サイズの種差をもたらす要因の一つだと考えられる。これまでに、霊長類などの発達した脳をもつ種の胎生期脳発生では、ニューロン産生開始期以降の発生段階においても高い増殖能を維持する神経幹細胞の数が増加しており、ヒトではそれらの高い増殖活性に寄与する固有の遺伝子が報告されている。さらに、iPS細胞技術によって霊長類の神経発生を分子細胞レベルで解析することが可能となり、種間比較によるヒト特異性の探索が活発化している。しかし、段階的に進行する発生過程において、種固有の脳神経発生プログラムがいつ開始されるのかについてはこれまでほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、初期神経発生過程において霊長類種間でどのような違いが、いつ生じるのかを明らかにするために、iPS細胞の神経幹細胞分化誘導系を用いた初期神経発生動態の再現と種間比較を試みている。まず、チンパンジーとニホンザルのiPS細胞に着目し、ヒトのiPS細胞を加えた3種間比較を実施することを目的として、いずれの種においても適用可能な神経幹細胞の分化誘導系を決定した。チンパンジーiPS細胞を用いた神経幹細胞の分化誘導法(dNS形成法)は既に確立されていたため、この方法をヒトとニホンザルのiPS細胞にも適用したところ、1週間の分化誘導培養によって_己複製能と多分化能をもつ神経幹細胞が誘導できることが明らかになった。次に、dNS形成による神経幹細胞分化誘導過程において、個体発生と同様な、段階的な発生運命の進行が再現されるかどうかを検討した。方法としてはチンパンジーiPS細胞のdNS形成過程における遺伝子発現とニューロン分化能の獲得時期を継時的に解析した。結果、dNS形成開始後1週間の間に、多能性をもつエピブラストから神経上皮細胞、そしてニューロン分化能を獲得した放射状グリアへと段階的な細胞運命の変遷が再現されることが明らかになった。ヒトとニホンザルのiPS細胞のdNS形成開始後1週間についても神経発生関連遺伝子の発現を調べた結果、同様の過程を示した。ただし、一部の遺伝子の発現時期はヒトやチンパンジーよりもニホンザルの方が早かった。次に、ニホンザルのdNS形成過程におけるニューロン分化能を調べた結果、チンパンジーよりも早い時期からニューロン産生が観察された。すなわち、ニューロン分化能の獲得を伴う細胞運命転換のタイミングが種間で異なる可能性が示唆された。チンパンジーiPS細胞のdNS形成過程におけるトランスクリプトームを再解析した結果、運命転換のタイミングに発現が変化する遺伝子の中には、特定のシグナル伝達経路に関わる遺伝子が多く含まれていることが明らかになった。以上の結果から、ヒト/チンパンジー/ニホンザルのiPS細胞を用いたdNS形成過程を追跡することで、初期神経発生過程における遺伝子発現や細胞特性の変遷を種間で比較することが可能となった。dNS形成法のように短期間で細胞分化を誘導する培養系においても、種固有の発生特性や細胞分化の傾向が観察されることが示唆された。

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