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大学・研究所にある論文を検索できる 「小児におけるリズム性咀嚼筋活動の睡眠周期に関連した発生機序の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小児におけるリズム性咀嚼筋活動の睡眠周期に関連した発生機序の解明

白石, 優季 大阪大学

2021.03.24

概要

[緒言]
小児の睡眠時ブラキシズム(sleepbruxism : SB)は,発生率が約17-27%であり,成人の約2-5倍高い.不安症状 •ストレス等の心理的要因,注意欠如・多動障害(attention deficit/hyperactivity disorder : ADHD)等の発達障害,睡眠時無呼吸等の睡眠関連疾患が,小児のSBのリスク因子とされている.しかし,小児のSBの病態生理は不明である.本研究は,一次性SBを有する小児の睡眠や,睡眠中に頻発するリズム性咀嚼筋活動(rhythmic masticatory muscle activity : RMMA)の生理学的特性,その発生様態と睡眠周期に伴う変動との関連を明らかにすることを目的とした.

【方法】
6歳から15歳の基礎疾患のない小児を対象に,1夜の終夜ポリソムノグラフィ(polysomnography : PSG)検査を施行した.PSG検査では,脳波,眼電図,舌骨上筋群筋電図,咬筋筋電図,前腔骨筋筋電図,呼吸,動脈血酸素飽和度,心電図,体位,いびき音を測定し,ビデオを記録した.SBのPSG診断基準に基づき,RMMAの一時間あたりの発生頻度(RMMA index)が4回/時以上の小児15名を小児SB群(男児9名,女児6名,10.3 ±0.7歳),2回/時未満の小児18名を小児対照群(男児5名,女児13名,10.7±0.7歳)として,以下の項目を解析した.また,成人のPSG検査データバンクからSB群19名(男性12名,女性7名,23.3 ±0.4歳)を抽出して同様の解析を実施した.

A) 睡眠構築
American Academy of Sleep Medicine の基準に基づいて,各睡眠段階(ノンレム(non-rapid eye movement : NREM)睡眠とレム(rapid eye movement : REM)睡眠),脳波上の覚醒反応(micro-arousal:持続時間15秒未満,awakening : 15秒以上),運動に関する覚醒反応(leg movement, body movement)を視覚判定し,各睡眠変数(総睡眠時間,入眠潜時,REM睡眠潜時,各睡眠段階占有率,睡眠周期数,睡眠周期平均持続時間)や覚醒反応の発生頻度を算出した.

B) 咬筋活動
ビデオ動画および咬筋筋電図波形から,RMMAを判定した.RMMAは,3つ以上のphasicバースト(持続時間0.25秒以上,2.0秒未満)からなるphasicエピソード,tonicバースト(2.0秒以上)からなるtonicエピソード,両種類のバーストからなるmixedエピソードに分類した.RMMAについて,RMMA indexや各エピソードタイプの割合,一時 間あたりのburst発生頻度,エピソードあたりのバースト数,エピソード平均持続時間,歯ぎしり音回数,各睡眠段階に発生するRMMAの割合を算出した.また,エピソードの前後3秒以内に覚醒反応が発生するRMMAの割合を算出した.RMMAと定義できない咬筋活動をnon-specific masseter activity (NSMA)として,一時間あたりの発生頻度 (NSMA index)を算出した.

C) 脳波
脳波活動には,高速フーリエ変換(サンプリング点数:2048,サンプリング周波数:200 Hz,ハニング窓:10.24秒)による周波数解析を実施した.30秒エポックについて,各周波数帯域(δ : 0.5 -4.0 Hz, Θ : 4.0 - 8.0 Hz, α : 8.0- 12.0Ηz, σ :12.0 -15.0Hz, low-β :15.0-23.0 Hz, high- β: 23.0-32.0 Hz)の振幅を算出した.

D) 自律神経活動
心電図波形からR波を検出し,R-R間隔を算出した.また,Complex demodulation法を用いて,各エポックの低周波数成分(low-frequency : LF, 0.04 - 0.15 Hz)および高周波数成分(high-frequency : HF, 0.15 - 0.4 Hz)の振幅を算出した.

E) 睡眠周期の伴う変動の解析
入眠後の4つの睡眠周期について,各睡眠周期のNREM睡眠を4セグメントに等分割し,第1から第4NREMセグメントとした.また,各睡眠周期のREM睡眠は分割せず1つのREMセグメントとした.各セグメントにおいて, RMMAや覚醒反応の発生頻度,脳波の各周波数帯域の振幅,自律神経活動の平均値を算出した.また,睡眠周期内変動を解析するために,4つの睡眠周期の各セグメントの値を加算平均した.

F) 統計
適宜,Pearsonのカイニ乗検定,ί検定,Mann-Whitneyのひ検定,二元配置反復測定分散分析(post-hoc : Z検定,対応のある/検定)を用いた.有意水準はα=0.05とした.

【結果】
1) 小児対照群と小児SB群の比較
i) 睡眠構築:小児SB群の入眠潜時が対照群より有意に長い(p=0.020)以外に,二群で差を認めなかった.

ii) 咬筋活動:小児SB群では,RMMA indexが対照群の約5倍高かった(ρ<0.001).また,バースb indexは高く (p<0.001),エピソードあたりの平均バースト数は有意に多く (p=0.013),エピソード持続時間は長かった (p=0.004). NSMA indexは,2群間で差を認めなかった.

iii) 睡眠周期に伴う変動:RMMAの発生頻度は,睡眠周期内の全セグメントで,小児SB群が対照群より高かった(p<0.05).小児SB群では,REM睡眠直前のNREMセグメント(第4 NREMセグメント)で第1から第3NREMセグメントでRMMAが有意に多く発生したが(^=0.007),REMセグメントではNREMセグメントより少なかった(^<0.001).また,覚醒反応は,小児SB群では,第4 NREMセグメントで第1から第3 NREMセグメントより多く発生し(p<0.05),さらに対照群と比較すると第4 NREMセグメントの発生頻度が有意に高かった (p<0.05).両群の脳波の各周波数帯域の振幅およびRR間隔,HF, LFの振幅は,睡眠周期内で典型的な変動を 示した.このうち,Θ帯域の振幅のみ,第4 NREMセグメントで,小児SB群が対照群より有意に高かった (p<0.05).

iv) RMMAと覚醒反応:小児SB群,対照群ともに,RMMAの80%以上がmicro-arousalやawakeningを(対照群:84.6 ± 19.5% ; SB群:90.2 土 8.6%),約70%がbody movementやleg movementを伴って発生し(対照群:72.9 ± 22.1% ; SB群:75.4 ±13.3%),その割合は2群間で差を認めなかった.

2) 小児SB群と若年成人SB群の比較
i) 睡眠構築:小児SB群では,若年成人SB群より,徐波睡眠stage N3の割合が高くか=0.031),脳波上の覚醒反応は少なかったが(micro-arousal:p=0.008, awakening : p=0.002),運動に関する覚醒反応は多く発生した (body movement : p<0.001, leg movement : p=0.036).

ii) 咬筋活動:小児SB群のRMMAindexは,若年成人SB群と差を認めなかった.RMMAの持続時間が若年成人 SB群より短い(p<0.001)以外に,2群に差を認めなかった.NSMAindexは,小児SB群の方が若年成人SB群より高かった(p=0.006).

iii) 睡眠周期に伴う変動:小児・若年成人SB群では,睡眠周期内における脳波各周波数帯の振幅,RR間隔, HF, LFの振幅が異なっていたが,RMMAが第4 NREMセグメントに多発し,REMセグメントで少ないという睡眠周期内変動は同様であった.また,若年成人SB群の覚醒反応は,小児SB群で認められたような,第4 NREMセグメントに多発するという睡眠周期内変動を認めなかった.

iv) RMMAと覚醒反応:若年成人SB群では,RMMAの95.7 ±3.1%が脳波上の覚醒反応を,約69.0 ±19.1%が運動に関する覚醒反応を伴って発生した.小児SB群では,若年成人SB群よりbody movementを伴うRMMAの割合が有意に高く(小児:47.7 ±1.0% ;成人:20.5 ± 0.8%,夕く0.001),leg movementを伴うRMMAの割合が有意 に低かった(小児:27.7 ± 1.1% :成人:48.5 ± 0.9%, ρ=0.001).

[結論】
一次性SBを有する小児では,睡眠構築や脳波活動,自律神経活動の周期的変動は正常であり,RMMAは睡眠周期の中でNREM睡眠からREM睡眠に向けて睡眠が浅くなる期間に,運動強度の高い覚醒応答の発生頻度の増加と関連して発生する可能性が初めて示された.また,小児から成人へ,睡眠構築や睡眠周期に伴う脳波,自律神経活動,覚醒反応など,睡眠の生理学的な特性が変化すると,RMMAの発生に関連する覚醒反応の特性が変化するが,睡眠周期に関連したRMMAの発生様態は変化しない可能性が示唆された.

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