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大学・研究所にある論文を検索できる 「環境細菌に見出されたプラスミド非感受性の分子基盤」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

環境細菌に見出されたプラスミド非感受性の分子基盤

河野, 響 東京大学 DOI:10.15083/0002006873

2023.03.24

概要





















河野



細菌が環境汚染物質分解能などの様々な新規形質を獲得する場合を考えると、遺伝子の
水平伝播(異なる個体間での移動)の寄与は非常に大きい。プラスミドの接合伝達は、特に
重要と位置付けられてきた。プラスミドの導入・その後の保持は宿主に生育負荷を及ぼすこ
とが知られており、細胞内でのプラスミドの保持されやすさ(stability)や細菌集団中での
プラスミド保持株の生き残りやすさ(fitness)が低下したという報告例は非常に多い。生育
負荷が及ぼす影響についての知見は蓄積されてきてはいるが、その発生原因・機構について
は未解明なまま残されているのが実情である。本論文は、環境細菌である Pseudomonas
resinovorans CA10dm4 株に「プラスミド非感受性」というこれまで報告のない新規性質を見
出し、この性質の分子機構の解明を行った結果をまとめたもので、序論、総括と展望を合わ
せて 6 章で構成されている。
自身の所属グループを含む世界の各グループで過去に解明されてきたプラスミド由来の
生育負荷に関する知見を概説した第 1 章に続き、第 2 章では CA10dm4 株に 10 種の異なる
プラスミドを各々保持させた際の fitness の評価を行っている。その結果、CA10dm4 株にい
ずれのプラスミドを保持させた場合にも fitness の低下は認められなかったため、この現象
を「プラスミド非感受性」と定義した。興味深いことに、P. resinovorans 種の基準株である
LMG 2274 株においても様々なプラスミド保持に伴う fitness の低下が認められず、この形質
が P. resinovorans 種で保存されている可能性も指摘している。なお、以前の研究で生育負荷
との関連が報告されていたプラスミドのコピー数やプラスミド獲得に伴うトランスクリプ
トームの変化という観点からプラスミド非感受性宿主の特性を評価しているが、非感受性
の原因解明の手掛かりとなるような知見は第 2 章では得られなかった。
第 3 章では、第 2 章の結果を受けて、プラスミド非感受性の原因因子の探索に取り組ん
でいる。CA10dm4(pCAR1)株ゲノム上のランダムな位置にトランスポゾン(Tn)が挿入され
た変異株ライブラリーを作製し、原因因子が失われたことでプラスミド非感受性を発揮で
きずに fitness が低下した「pCAR1 感受的な」変異株を二株(#2, #4 株)取得している。#2
株では染色体上のプロファージ領域上の機能未知遺伝子の内部に、#4 株では染色体上のセ
ンサータンパク質をコードする遺伝子の内部に Tn が挿入されていた。なお、両変異株が
pCAR1 以外のプラスミドを保持した場合にも fitness が低下することを実証した上で、これ
らを「プラスミド感受的」な変異株と結論付けている。さらに、それら変異株を対象に各種

遺伝学的解析を駆使することで、硫黄代謝系の主要転写制御因子である CysB がプラスミド
非感受性に関与することを同定している。
第 4 章では、CysB レギュロンに属し、かつ相同性が非常に高い三つの転写制御因子に着
目し、これらから構成される転写制御ネットワークの起動がプラスミド非感受性の発揮に
必須であることを明らかにしている。なお三つの転写制御因子を SpiR1, SpiR2, SpiR3 と命
名し、特に重要な役割を果たす SpiR3 が TCA サイクルや重金属の代謝・輸送に関与する遺
伝子群の転写制御を担うことも明らかにしている。
第 5 章では、flow cytometry(FCM)を用いてプラスミド保持株を溶液中から分離する系
を構築し、これをトランスクリプトーム解析に繋げることで、培養系(単独培養/競合培養)
の違いがトランスクリプトームに及ぼす影響の評価を試みている。その結果、培養系の違い
はトランスクリプトームに大きな影響を及ぼさない可能性が高いことが示され、第 3 章、第
4 章で実施したトランスクリプトーム解析が競合培養系での細胞状態を調べるのに適切だ
ったことが示唆された。
第 6 章では、第 2 章から第 5 章までの研究成果を総括し、その上で得られた知見の様々
な意義を考察し、さらには今後の展望を詳細に述べている。
以上のように、申請者は本論文において「プラスミド非感受性」という新規性質の発見か
ら、その機構解明までを一貫して取り組んでおり、fitness 研究の新たな道筋となるような多
くの新たな知見の取得に成功している。また CysB をはじめとした硫黄代謝系の fitness への
関与は硫黄代謝系の細胞生理に関わる新たな機能的側面の発見でもあり、十分な成果をあ
げていると判断できる。これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。
よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

参考文献

論文の内容の要旨

応用生命工学専攻

平成 30 年度博士課程進学

名 河野

指導教員 野尻 秀昭

論文題目 環境細菌に見出されたプラスミド非感受性の分子基盤

本博士論文の内容は、学術論文誌として出版する計画があるため、公表できない。

なお、本論文の内容は五年以内に出版予定である。

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