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大学・研究所にある論文を検索できる 「産業用酵素生産株Bacillus amyloliquefaciens LA株を用いた高生産因子の探索とその応用」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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産業用酵素生産株Bacillus amyloliquefaciens LA株を用いた高生産因子の探索とその応用

松原, 寛敬 東京大学 DOI:10.15083/0002006878

2023.03.24

概要





















松原

寛敬

酵素の応用は人類の歴史上、紀元前数千年前から行われていたが、産業として
の歴史は浅い。一方で、現代においては SDGs の観点からも注目される成長著
しい産業分野である。産業化初期には動物由来酵素や植物由来酵素の応用が主
であったが、現在では種々の理由から微生物酵素の応用が主流となっている。さ
まざまな利点をもつ微生物酵素の応用において、もっとも大きな課題の 1 つが
酵素生産菌株作製のための伝統的な変異育種に多大な時間と労力を要すること
である。本論文は、酵素産業界で用いられている現役工業株の解析・改変を通じ
てこの課題の解決を試みた研究結果をまとめたものであり、研究背景について
記述した序論、本論 5 章および総合討論によって構成されている。
序論では酵素応用の歴史をまとめ、その中でも現在、微生物酵素の応用が主流
となっている背景と理由が記されている。また、研究対象である Bacillus
amyloliquefaciens LA 株の特徴について記されている。
本論第 1 章では、形質転換困難な株として報告されていた B. amyloliquefaciens
の形質転換法の確立について記されている。特徴的な 2 層再生培地の設定と、
プロトプラスト作製・形質転換の諸条件を最適化することによって、バッチあた
り従来比 10,000 倍程度の形質転換体が得られる改良形質転換法が確立された。
第 2 章では、開発した改良形質転換法を用いて、のべ 97 種の酵素・タンパク質
遺伝子を保持するプラスミドを LA 株に導入し、異種タンパク質分泌生産につ
いて調べた結果が述べられている。分泌生産成功率は導入遺伝子の機能に依存
している可能性が示され、特に糖質関連酵素の分泌生産成功率は近縁・遠縁由来
にかかわらず、4 割以上であることが示された。
第 3 章では LA 株での酵素分泌生産量の増強検討結果が記されている。第2章
で述べた実験で分泌生産量が最大であった Bacillus circulans 由来β-アミラー

ゼ(BAF)に関しては、その遺伝子をゲノム上に組み込むことで分泌生産量のば
らつきが少なくなり、生産量も約 1.3 倍となることが示された。また、プロモー
ター、シグナルペプチド配列、ターミネーターをすべて LA 株α-アミラーゼ遺
伝子(amyA)由来のものを用いると、大腸菌や枯草菌で遺伝子クローニングが
できないという問題を、PCR を用いた手法により in vitro で構築したプラスミ
ドを直接 LA 株に導入することで解決した。これにより、従来型発現プラスミド
では不可能だった Chryseobacterium proteolyticum 由来 protein glutaminase
mature region ( mPG ) の 分 泌 生 産 に 成 功 し 、 分 泌 生 産 量 が 少 な か っ た
Cellulosimicrobium aquaile 由来α-アミラーゼ(AMT)の増産にも成功してい
る。
第 4 章では、歴代育種株菌のゲノム配列の決定と比較解析を行っている。8 代に
わたる LA 歴代育種株シリーズに総数で 2,816 箇所に及ぶ変異が入っているこ
とを明らかにし、そのうちナンセンス変異あるいはフレームシフト変異である
297 箇所を選抜し、さらに育種株系統を考慮した絞込みを行うことで、64 遺伝
子を酵素生産性増強にかかわる遺伝子候補として選抜している。
第 5 章では、第 4 章で見出された 64 遺伝子の破壊が試みられ、取得できた 24
遺伝子の単独遺伝子破壊株の培養評価の結果が記されている。もっとも酵素生
産性増強効果が高かったのは No. 30 と名付けた遺伝子の破壊株であり、その効
果は内因性のα-アミラーゼの分泌生産量を約 2.3 倍に向上させるのみならず、
外来性の酵素遺伝子を発現させた際の分泌生産量を、mPG で約 5 倍、AMT で
約 5.6 倍増強させる効果をもつことが示された。この効果は遺伝子相補株で消
失したため、酵素生産性増強効果は No. 30 遺伝子破壊によることが示された。
総合討論では、これまでの研究を総括するとともに、残る変異点の評価方法と
してゲノムシャッフリング系が機能する可能性を示し、今後の更なる高生産要
因の特定とその応用について論じられている。
以上、実用化されている工業用酵素生産株を用いてその高生産要因の1つを
同定するに至った本研究の成果は、学術上、応用上寄与するところが少なくない。
よって、審査委員一同は本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと
認めた。

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