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大学・研究所にある論文を検索できる 「Novel methods to detect signals using information of similar drugs in spontaneous reporting systems」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Novel methods to detect signals using information of similar drugs in spontaneous reporting systems

多田, 圭佑 筑波大学

2023.01.17

概要

目 的:
新薬開発の段階では薬剤の安全性は十分に評価できないことがある。治験では通常、薬剤を投与される集団や被験者数に限りがあるため、製造販売後も安全性評価を継続する必要がある。販売後には自発報告制度によって医療従事者より疑わしい副作用に関する情報を収集している。報告された疑わしい副作用と薬剤との因果関係の可能性を示唆する情報をシグナルと呼び、それを検出することをシグナル検出と呼ぶ。かつては集積された疑わしい副作用や薬剤の情報を医学専門家が目視で評価していたが、その情報量が膨大になってきたため、近年では統計的手法を用いてシグナルを定量的に評価している。患者を予期せぬ副作用から守るため、早期にシグナルを検出して警告することが重要であるが、疑わしい副作用の報告数が少ないとき、既存法ではシグナル検出の感度が低いことが知られている。本研究の目的は、疑わしい副作用の報告数が少ないときでも検出感度の高い定量的なシグナル検出法を開発することである。具体的には、評価対象となる薬剤と類する薬剤情報を活用することで、感度の上昇を図る。

対象と方法:
本研究は 2 つの課題で構成する。
第 1 課題:自発報告制度によって収集された疑わしい副作用に関する情報が蓄積されたデータベースに対して、Bayesian confidence propagation neural network (BCPNN)は定量的にシグナルを検出するための統計的手法の1つであり、World Health Organization Uppsala Monitoring Centre で使用されている。 BCPNNではシグナルかどうか判断するための指標として information component (IC)を定義している(IC が大きいとシグナルと判定)。本研究では、評価対象の薬剤と同様の適応症及び作用機序を有する薬剤を類薬と定義し、その類薬の情報を利用することで、 IC の値を調整できるようにBCPNN を拡張する。ベイズ統計学の枠組みで適用できる power prior を用いて、評価対象薬剤と類薬の類似度合いによって類薬から利用できる情報を制御する。類似度が高ければ情報を多く利用し、類似度が低ければ低いほど利用する情報を減らすように設計する。乱数を用いたモンテカルロ・シミュレーションによって、既存法である BCPNN と提案法の性能を比較する。事例研究として、日本の規制当局が公開しているデータベースを用いて、既に知られている副作用に対して提案法が早期にシグナルとして検出できるか確認する。
第 2 課題:2 つの薬剤の相互作用による副作用の検出法として、Norén の方法がある。
2 つの薬剤の相互作用による副作用とは、副作用の発現率がそれぞれの薬剤を服用した際の上昇分の和よりさらに上昇する副作用を指す。先に記述した方法論に基づき、Norén の方法を拡張し、シミュレーション実験を通して Norén の方法と提案法の性能を比較する。また、米国の規制当局が公開しているデータベースに対して、Norénの方法と提案法を適用し、2 つの薬剤の相互作用として知られる副作用を対象に、提案法が早期にシグナルを検出できるか確認する。

結 果:
第 1 課題:シミュレーション実験より、評価対象薬剤と類薬が類似しているという設定では、提案法の偽陽性率は既存法より低く、提案法の感度は既存法よりも最大で30 ポイント高かった。日本の規制当局が公開しているデータベースに適用した結果、提案法のほうが既存法より早期に検出できる可能性を示唆した。
第 2 課題:シミュレーション実験より、評価対象薬剤と類薬が類似しているという設定では、提案法の偽陽性率は既存法より高くなったが、提案法の感度は既存法よりも最大で20 ポイント高かった。米国の規制当局が公開しているデータベースに適用した結果、提案法のほうが既存法より早期に検出できる可能性を示唆した。

考 察:
Power prior を用いたアプローチはBCPNN やNorén の方法に限らず、ベイズ統計学に基づいた手法であれば基本的にどの手法にも適用可能である。また、外部から利用する情報は類薬に限らず、例えば臨床試験の結果なども技術的には可能である。
提案法の有用性を評価する上で、感度と偽陽性率のトレードオフの関係を考慮しなければならない。一般に、感度が上がれば偽陽性率も上がる。提案法では power priorに含まれるパラメータでそのバランスを制御しているが、シミュレーション実験の結果より、良いバランスを保っていると考えている。
定量的なシグナル検出を実施する際に評価対象の疑わしい副作用が評価対象の薬剤とその類薬として定義した薬剤に共通した副作用であれば、提案法で得られる効果は大きいが、評価対象の薬剤固有の副作用に対して得られる効果は小さいことが予想される。
定量的なシグナル検出は膨大な量の情報から網羅的にシグナルを検出することを目的にしており、医学的な観点で評価される前の段階であるため、解析結果の解釈には注意が必要である。疑わしい副作用の報告と同時に服用された複数の薬剤も併せて報告されるが、評価対象以外の薬剤の影響は考慮されていない。

結 論:
本研究では、新しい2 つの定量的なシグナル検出法を開発した。シミュレーション実験の結果から、2 つの提案法は高い感度を有することが確認できた。事例を通して 2 つの提案法は既存法より早期にシグナルを検出できる可能性を示唆した。提案法は薬剤の副作用を明らかにするためのさらなる調査に貢献できると期待する。

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