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Involvement of SGLT1 activities in maintaining oscillatory Cl- currents from mouse submandibular acinar cells

竹安 美彩 広島大学

2021.03.23

概要













Involvement of SGLT1 activities in maintaining
oscillatory Cl- currents from mouse submandibular
acinar cells
(マウス顎下腺腺房細胞での振動性 Cl-電流の維持に
おける SGLT1 活性の関与)

竹安

美彩

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
博士課程 医歯薬学専攻
2020 年度

修了

主指導教員:香西

克之

教授

(医系科学研究科 小児歯科学)
1

Ⅰ.緒言
顎下腺腺房細胞では、副交感神経刺激により細胞内 Ca2+濃度が上昇し、水分泌が引き起
こされる。糖尿病患者には唾液分泌量の減少が観察され、口腔乾燥が認められる。一方、糖
尿病モデル動物において Na+-グルコース共輸送体(SGLT1)の発現がタンパク質レベルで
減少していることが報告されているが、SGLT1 の発現低下や機能不全が唾液分泌に与える
影響や、SGLT1 活性が唾液腺からの水分泌と、それを駆動する Cl-分泌にいかに関与するか
については、不明な点が多い。
本研究では、顎下腺腺房細胞のグラミシジン穿孔パッチクランプ解析およびホールセル
パッチクランプ解析を行い、
副交感神経作動薬である carbachol (CCh)により誘発される Cl電流に対する SGLT1 阻害薬 phlorizin の効果を調べ、顎下腺からの Cl-分泌に SGLT1 活性
がいかに関与するかを明らかにすることを目的とした。

Ⅱ.材料と方法
顎下腺腺房細胞で誘発される Cl-電流のグラミシジン穿孔パッチクランプ法による解析
マウスの顎下腺を摘出し、Hanks’ Balanced Salt Solution (HBSS)溶液中で細切した
後、コラゲナーゼ処理を行った。その後、ピペッティングにより腺房を分散させ、メッシ
ュに通して得た顎下腺腺房細胞(20-150 μm 分画)をカバーガラスに接着させた。本カバ
ーガラスを灌流チャンバー内に置き、HBSS で灌流した。
パッチクランプ記録電極(3~10 MΩ)に 1 価の陽イオンを透過するグラミシジン(200
μg/ml)を含むピペット溶液(150 mM KCl, 10 mM HEPES (pH7.4))を入れ、灌流チャ
ンバー内の腺房細胞に接触させた後、ギガ Ω シールを得た。容量性電流の安定化が観察さ
れた後、膜電位を K+の平衡電位である-80 mV に保持し、電圧固定モードで、イオン電流
を Axopatch200B を用い測定した。灌流液を HBSS から 0.3 μM の CCh 溶液に置換し、
CCh により誘発されるイオン電流を測定した後、さらに 500 μM bumetanide、100 μM
phlorizin を添加し、それら薬剤のイオン電流に与える影響を分析した。

顎下腺腺房細胞で誘発される Cl-電流のホールセルパッチクランプ法による解析
上述と同様に単離し灌流チャンバーに置いた顎下腺腺房細胞に、ピペット溶液(140 mM
KCl, 1 mM MgCl2, 10 mM HEPES, 0.5 mM EGTA, 10 mM glucose, 1 mM ATP (pH
7.4))を入れたパッチクランプ記録電極を接触させ、ギガ Ω シールを得た。その後、さら
にピペット内を陰圧にし、ピペットと接触する細胞膜部分を破壊し、ホールセル記録モー
ドとした。上述と同様の装置で、膜電位を-80 mV に保持し、CCh により誘発されるイオ
2

ン電流を測定し、添加薬剤の影響を分析した。

Ⅲ.結果
1.CCh 刺激により誘発される振動性 Cl-電流の測定
ホールセルパッチクランプおよびグラミシジン穿孔パッチクランプにおいて、CCh を投
与し、その両方で CCh 誘発性の Cl-電流を記録し、それぞれの振動性 Cl-電流の大きさを比
較した。CCh により誘発された振動性 Cl-電流は、ホールセルのほうがグラミシジン穿孔パ
ッチクランプよりも顕著に大きく、有意差を認めた。

2.グラミシジン穿孔パッチクランプにより記録される bumetanide の効果
グラミシジン穿孔パッチクランプを用いて、Na+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC)阻害薬であ
る bumetanide を添加した場合の、振動性 Cl-電流の変化を記録した。bumetanide の添加
により、CCh 誘発性の振動性 Cl-電流の振幅は小さくなり、消失した。
まず CCh 刺激前の非振動性内向き電流の値を control とし、CCh 刺激で振動性 Cl-電流
が誘発されている際のベースライン値とその後 bumetanide 添加後のベースライン値を
control と比較した。CCh 刺激時の非振動性内向き電流は control 値に比べ若干増加し、そ
の後 bumetanide 添加により減少傾向がみられたが、3 群間で有意差は認められなかった。
次に、CCh 誘発性 Cl-電流と、bumetanide 添加後の Cl-電流において、各ベースラインか
らの Cl-電流の積分値を求めた。積分値は bumetanide 添加により顕著に減少し、両者の間
に有意差を認めた。
また、
各ベースラインからの Cl-電流のピーク値を求めると、bumetanide
添加により顕著に減少し、両者の間に有意差を認めた。

3.ホールセルパッチクランプにより記録される phlorizin の効果
ホールセルパッチクランプを用いて、SGLT1 阻害薬である phlorizin を添加した場合の
振動性 Cl-電流の変化を記録した。phlorizin の添加により、CCh 誘発性の振動性 Cl-電流の
大きさは小さくなり、抑制傾向を認めた。
非振動性内向き電流は CCh 刺激時、
control と比較して大きな差異は認められなかった。
その後の phlorizin 添加時に非振動性内向き電流の増加傾向を認めたが、有意差は認められ
なかった。
次に、CCh 誘発性 Cl-電流と phlorizin 添加後の Cl-電流において、各ベースラインからの
Cl-電流の積分値を求めた。CCh 誘発性の振動性 Cl-電流の積分値は、その後の phlorizin 添
加により平均値として減少した。しかし両者に有意差は認められなかった。また、各ベース
3

ラインからの振動性 Cl-電流のピーク値を求めると、phlorizin 添加により顕著に減少し、両
者の間に有意差を認めた。

4. グラミシジン穿孔パッチクランプにより記録される phlorizin の効果
グラミシジン穿孔パッチクランプを用いて、phlorizin を添加した場合の、振動性 Cl-電流
の変化を記録した。phlorizin の添加により、振動性 Cl-電流の大きさは小さくなり、消失し
た。
まず CCh 刺激前の非振動性内向き電流の値を control とし、CCh 刺激時および CCh と
phlorizin 共存時の非振動性内向き電流成分と比較した。Control と CCh 刺激時との間に大
きな差異は認められなかった。Control と CCh 刺激時に比較し、CCh と phlorizin 共存時
に非振動性内向き電流の有意な増大が観察された。
次に、CCh 誘発性 Cl-電流と phlorizin 添加後の Cl-電流において、各ベースラインからの
Cl-電流の積分値を求めた。CCh 誘発性の振動性 Cl-電流における積分値は、phlorizin 添加
により顕著に減少し、両者の間に有意差を認めた。また、各ベースラインからの振動性 Cl電流のピーク値を求めると、phlorizin 添加により著しく減少した。

5.ホールセルとグラミシジン穿孔パッチクランプ間での phlorizin の効果の比較
CCh 刺激により誘発された振動性 Cl-電流に対する phlorizin の影響を、グラミシジン穿
孔パッチクランプとホールセルパッチクランプで比較した。
積分値において、ホールセルパッチクランプ、グラミシジン穿孔パッチクランプの両方で
抑制されたが、グラミシジン穿孔パッチクランプのほうがホールセルパッチクランプより
も平均値として抑制率が高かった。
ピーク値において、ホールセルパッチクランプ、グラミシジン穿孔パッチクランプの両方
で抑制されたが、ホールセルパッチクランプよりもグラミシジン穿孔パッチクランプにお
いて平均値として抑制率が高かった。

Ⅳ.考察
1.ホールセルとグラミシジン穿孔パッチクランプで測定される Cl-電流の特徴
ホールセルパッチクランプにおいて CCh 刺激により生じる振動性 Cl-電流は、パッチピ
ペットより供給された Cl-が TMEM16A を通して流出したもので、TMEM16A のチャネル
活性のみを表出している。一方、グラミシジン穿孔パッチクランプにおいて CCh 刺激によ
り生じる振動性 Cl-電流は、腺房細胞に発現する Cl-トランスポーターを介して細胞内へ流
4

入した Cl-が TMEM16A を通して分泌された過程を表出する。
グラミシジン穿孔パッチクランプで計測される Cl-電流はホールセルパッチクランプで計
測される Cl-電流の一部となるため、ホールセルパッチクランプに比較し、グラミシジン穿
孔パッチクランプで計測される Cl-電流は著しく小さい値を示す。

2.CCh 刺激により腺房細胞から分泌される Cl-は NKCC を介し供給されたものである
NKCC 阻害作用のある bumetanide を用いてグラミシジン穿孔パッチクランプを行った
とき、振動性 Cl-電流が bumetanide 添加により消失したことから、細胞から分泌される Clのほとんどは NKCC を介して流入した Cl-であることが示された。

3.Phlorizin は CCh 刺激により活性化される TMEM16A 活性を部分的に阻害する
ホールセルパッチクランプで記録される CCh 誘発性の振動性 Cl-電流のピーク値は、一
度に開口する TMEM16A チャネルの最大開口数を示している。ホールセルパッチクランプ
において、CCh 単独刺激時とその後の phlorizin 添加時で、ピーク値に有意差が認められ
た。Phlorizin の添加により、ピーク値すなわち一度に開口する TMEM16A チャネルの最
大開口数が減少することより、phlorizin は CCh 刺激により活性化される TMEM16A 活性
を部分的に阻害することが示唆された。

4.Phlorizin は NKCC による Cl-流入に影響を与え CCh 誘発性 Cl-分泌を抑制する
CCh 誘発性の振動性 Cl-電流の積分値とピーク値の解析において、ホールセルパッチク
ランプよりもグラミシジン穿孔パッチクランプで振動性 Cl-電流が phlorizin により顕著
に抑制される傾向があることから、phlorizin は TMEM16A の部分的抑制作用に加えて、
主に NKCC による Cl-取り込みを抑制することによって、もしくは Ca2+シグナルの下流
で、NKCC を介し細胞内に取り込まれた Cl-が TMEM16A から流出されるまでの過程に
作用し、振動性 Cl-電流を抑制していることが示唆された。

5.SGLT1 は Cl-分泌の維持に重要な働きを持つ
今回の実験では、phlorizin による Cl-電流の抑制をホールセルパッチクランプとグラミシ
ジン穿孔パッチクランプで比較することで、SGLT1 には NKCC を介した Cl-の流入を維持
し TMEM16A のチャネル活性を保つことで、唾液分泌を維持する働きがあることが示唆さ
れた。また、細胞外グルコース濃度が唾液分泌に影響を及ぼすことから、SGLT1 のグルコ

5

ース取り込みが、唾液分泌の維持に関与しているとも考えられる。同時に、SGLT1 はグル
コースとともに水も細胞内に取り込んでいるので、水の取り込みも Cl-分泌に関与している
可能性がある。

Ⅴ.結論
本研究では、ホールセルパッチクランプおよびグラミシジン穿孔パッチクランプを用い
て、CCh により誘発される Cl-電流に対する SGLT1 阻害薬 phlorizin の効果を調べ、顎下
腺からの Cl-分泌に SGLT1 活性がいかに関与するかを調べた。
SGLT1 は NKCC、TMEM16A、Ca2+シグナルの下流にある因子の活性を保つことで、唾
液分泌を維持、調節しており、またその働きはグルコース取り込みによって維持されている
と考えられる。
SGLT1 が唾液分泌を維持する機構を明らかにすることで、人為的に SGLT1 活性をコン
トロールできるようになれば、糖尿病患者の唾液分泌機能の維持や、口腔乾燥症の治療法の
発見につながる可能性がある。

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