リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Obesity and myosteatosis: the two characteristics of dynapenia in patients with cirrhosis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Obesity and myosteatosis: the two characteristics of dynapenia in patients with cirrhosis

杉山, 由晃 名古屋大学

2022.07.01

概要

【緒言】
サルコペニアは骨格筋量や筋力の低下を特徴とする疾患で、ADLの低下や死亡などの健康上の有害転帰と関連する。筋力の低下は一般的に骨格筋量の低下を伴うが、骨格筋量は低下せずに筋力のみ低下する人もいる。このような状態はダイナペニアと呼ばれ、サルコペニアと同様に死亡やQOLの低下と関連することが示されている。そのため、介護予防やリハビリテーションの分野では、サルコペニアに加えてダイナペニアも臨床的に重要な状態とされ、2019年にAsia Working Group for Sarcopenia(AWGS)において、ダイナペニアはサルコペニアの前段階であり、予後やQOLの改善にはダイナペニアの段階での早期発見と介入が必要であると提唱された。肝硬変患者では、栄養不良や吸収障害、炎症性サイトカインなどによるタンパク異化作用の亢進などの要因により、サルコペニアを合併しやすく、サルコペニアの存在は予後の悪化やQOLの低下と関連していることが報告されている。しかし、肝硬変患者において、ダイナペニアの頻度や特徴、QOLへの影響についてはまだ十分に解明されていない。本研究では、ダイナペニアを有する肝硬変患者の特徴およびQOLとの関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】
2017年5月から2020年10月の間に当院を受診し、握力測定、生体電気インピーダンス法(BIA)による体組成測定およびCT検査を受けた肝硬変患者116名を後方視的に検討した。年齢の中央値は71歳(四分位値:67~78歳)で、52名(44.8%)が男性であった。成因はC型肝炎が最も多く(48名、41.4%)、肝機能は患者の半数以上(83名、71.6%)がChild-Pugh分類Aと診断された。骨格筋量はBIA法を用いて測定し、筋力は握力を用いた。CTを用いて、臍レベルにおける内臓脂肪面積を測定した。またAWGS2019診断基準に従い、筋力低下は握力で男性<28kg、女性<18kgと定義し、骨格筋量低下はskeletal muscle index(SMI)で男性<7.0kg/m2、女性<5.7kg/m2と定義した。体組成の評価として、骨格筋量低下および筋力低下を伴う場合をサルコペニア、筋力低下のみを伴う場合をダイナペニア、骨格筋量低下のみを伴う場合をプレサルコペニア、いずれも伴わない場合を正常と定義した。BMI≧25kg/m2を肥満と定義し、BMI<24.9kg/m2の患者で第3腰椎レベルの骨格筋CT値<41HU、BMI≧25kg/m2の患者でCT値<33HUを満たした場合に、骨格筋に脂肪が沈着した状態であるミオステアトーシスと定義した。

【結果】
116名のうち、14名(12.1%)がダイナペニアと診断された。ダイナペニアの患者と他の体組成の患者において、性別、肝硬変の成因、肝予備能に有意差は認めなかった。一方で、身体的特徴として、ダイナペニアの患者のBMI(27.6kg/m2、四分位値:25.2~29.2)は、サルコペニアの患者(21.4kg/m2、四分位値:19.7~23.7)やプレサルコペニアの患者(20.1kg/m2、四分位値:18.9~22.0)と比較して、有意に高値を示した(Fig.1a)。また、内臓脂肪面積についても検討したところ、ダイナペニアの患者(113.4cm2、四分位値:94.3~146.0)は、サルコペニアの患者(78.0cm2、四分位値:19.7~23.7)やプレサルコペニアの患者(60.5cm2、四分位値:44.9~67.9)と比較して、有意に高値を示した(Fig.1b)。2型糖尿病や脂質異常症の頻度は体組成で有意な差は認めなかった。心血管疾患の頻度はダイナペニアの患者(28.6%)で正常の患者(6.6%)と比較して高かったが、有意差は認めなかった。

骨格筋への脂肪浸潤の程度は筋力と関連しており、骨格筋のCT値を測定することで評価が可能である。そこで、体組成別のCT値を比較したところ、ダイナペニアの患者ではCT値が最も低く(24.9HU、四分位値:23.5~27.7)、次いでサルコペニアの患者(25.8HU、四分位値:24.1~32.7)、プレサルコペニアの患者(27.3HU、四分位値:25.1~33.1)となり、いずれも正常な患者(33.4HU、四分位値:29.0~38.3)と比較して有意に低値であった(Fig.1c)。肥満とミオステアトーシスの両方を有する患者の割合を体組成別で比較すると、ダイナペニアの患者(64.3%)ではサルコペニアの患者(8.7%)およびプレサルコペニアの患者(0%)よりも有意に高く、正常な患者(26.2%)よりも高い傾向にあった。

QOLに関しては、ダイナペニアの患者は正常な患者と比較して有意に身体的QOL(PCS)の低下を認め、サルコペニアの患者と同程度であった(Fig.2a)。一方、精神的QOL(MCS)や役割/社会的QOL(RCS)に関しては体組成別で有意差は認めなかった(Fig.2b,2c)。

【考察】
一般的には筋力や骨格筋量は体重と相関し、肥満患者は非肥満患者と比較して筋力や骨格筋量は多い。しかし本研究において、ダイナペニアの患者は肥満や内臓脂肪面積が多く、骨格筋量が維持されているにもかかわらず、筋力が低下していた。その理由としてミオステアトーシスが考えられる。骨格筋に脂肪が沈着すると筋線維の収縮力が低下することが報告されている。この骨格筋への脂肪沈着のメカニズムとして、骨格筋の前駆細胞が脂肪細胞に退化すること、および骨格筋への過剰な脂肪蓄積が挙げられる。前者は骨格筋量の低下に伴って生じる。ダイナペニアの患者では骨格筋量は維持されており、また肥満の割合が多いことから、過剰な脂肪が骨格筋に沈着し、ミオステアトーシスを生じさせ、筋力低下につながっている可能性が考えられた。

AWGSにおいて、ダイナペニアはサルコペニアの前段階であり、適切に診断する必要があると提唱している。本研究においても、ダイナペニアはサルコペニアと同等に身体的QOLが低下している事が明らかとなり、適切に拾い上げる必要がある。骨格筋の状態を評価する際、握力は簡便で信頼性の高い方法であるため、最初に行うべき評価方法である。しかし、肝硬変患者では腹部CT検査が頻繁に行われているため、多くの臨床研究においては握力が評価されず、CT検査による骨格筋量のみで骨格筋の状態が評価されていることが多く、骨格筋量が維持されているダイナペニアは見逃されてしまう。本研究により、ダイナペニアの患者ではBMI≧25kg/m2かつミオステアトーシスを有しているという特徴が明らかとなった。つまり、肝硬変患者においてBMI≧25kg/m2かつミオステアトーシスが認められた場合は、ダイナペニアを合併している可能性があるため、筋力を評価することで適切なダイナペニアの患者の拾い上げにつなげることができると考える。

【結論】
本研究において、ダイナペニアは肝硬変患者の12.1%に認め、肥満とミオステアトーシスを有するという特徴が認められた。また、身体的QOLはサルコペニアの患者と同程度に低下していることが明らかとなった。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る